流れる/幸田文
新潮文庫
梨花という女中の目から見た芸者の世界のこまごました珍しい習慣を克明のつづった小説。梨花という一本筋の通った中年の女性は、豊かな暮らしをしつつも夫や息子を亡くしたつらい過去を持ち、今は働いて自分自身の生活を維持しなければならない。女中としてこの花街の世界に身を置いてみれば、花柳界で一芸に身を託して生き抜く女性たちを意気に感じ、その社会に共感し、また不合理でネガティブな側面にも興味を惹かれる。落ちぶれていく人たちをまのあたりにして、哀れにも、また尊敬の念も同時に感じている。
考えてみれば女性の職業とは古来限られており、花柳界はその中でも古い歴史を持つものである。職業意識を持った女性たちが長い歴史の中で作り出して来た様々な習慣や芸、あるいは気質というものに対する、同じ職業を持つ女性としての共感がこの小説の基底なのではないかと思う。
様々な職業へ女性が進出している現代にこの本を読むと、性別を超えて、職業とはどうあるべきなのか、プロフェッショナルとはどのように生きるべきなのか、ということが梨花を含めた作中人物の中から感じられて来る。
15.12.19
新潮文庫
梨花という女中の目から見た芸者の世界のこまごました珍しい習慣を克明のつづった小説。梨花という一本筋の通った中年の女性は、豊かな暮らしをしつつも夫や息子を亡くしたつらい過去を持ち、今は働いて自分自身の生活を維持しなければならない。女中としてこの花街の世界に身を置いてみれば、花柳界で一芸に身を託して生き抜く女性たちを意気に感じ、その社会に共感し、また不合理でネガティブな側面にも興味を惹かれる。落ちぶれていく人たちをまのあたりにして、哀れにも、また尊敬の念も同時に感じている。
考えてみれば女性の職業とは古来限られており、花柳界はその中でも古い歴史を持つものである。職業意識を持った女性たちが長い歴史の中で作り出して来た様々な習慣や芸、あるいは気質というものに対する、同じ職業を持つ女性としての共感がこの小説の基底なのではないかと思う。
様々な職業へ女性が進出している現代にこの本を読むと、性別を超えて、職業とはどうあるべきなのか、プロフェッショナルとはどのように生きるべきなのか、ということが梨花を含めた作中人物の中から感じられて来る。
15.12.19
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