二銭銅貨

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09歌舞伎座11月/仮名手本忠臣蔵/歌舞伎

2009-11-09 | 歌舞伎・文楽
09歌舞伎座11月/仮名手本忠臣蔵/歌舞伎

仮名手本忠臣蔵
昼の部
大序・三段目
出演:富十郎、勘三郎、七之助、魁春、梅玉

大序では、七之助の足利直義は真っ直ぐで、堂々としていて、発声もはっきりと分かりやすかった。登場人物は皆クリアでクリーンな印象だった。三段目では富十郎の高師直がいやらしい。けれども、それが富十郎なので、そのいやみっぷりがかわいらしかったりする。大序で魁春の顔世御前にくっ付いたり、勘三郎の塩冶判官に寄りかかって「斬れ、斬れ」とか言ったりするところが人なつこい。勘三郎の富十郎の眉間への一太刀は本当に当たっているように感じて痛そうだった。

四段目
出演:勘三郎、仁左衛門、魁春、孝太郎、段四郎、幸四郎

幸四郎の由良之助が屋敷から去る場面が見せ場かな。夕闇の重苦しさと幸四郎の重厚さが良く似合う。勘三郎はきれいに自決していた。いさぎ良い。

道行
出演:菊五郎、時蔵、團蔵

青い空、富士、頂の白い雪、満開の桜、満開の菜の花。明るい風景に2人の旅行者。菊五郎の勘平の深い憂い。元気付ける時蔵のお軽の明るさ。團蔵の鷺坂伴内は面白くて軽い。くりくりした感じだ。 

夜の部
五・六段目
菊五郎、時蔵、東蔵、芝翫、左團次、梅玉

重くて暗い話だ。明るい道行の後に一変してこの話になる。じっと耐える菊五郎がかわいそうだ。遠くから俯瞰的に見ていたので、菊五郎の表情は良く分からなかったが、後から思い出して見ると本当に可哀相に思える。最後には不当だとわかる厳しい非難にじっと耐える姿の着物の無地の空色が、無防備な彼の気持ちを良く表していた。

七段目
出演:仁左衛門、幸四郎、福助、錦吾

よっぱらいのふりをしている由良之助。本当に酔っ払っているのか、振りなのか良く分からない。仁左衛門のふらふらした芝居に、きりっと若く剛毅な幸四郎による寺岡平右衛門。福助のお軽は甘いけれども、強い。

十一段目
出演:仁左衛門、梅玉

最後はすっきり討ち入り。長々とぐだぐだ色々なことがあったので、ここで爽快にすっきりする。雪が総てを優しく包み込むように沢山降る。歌昇の小林平八郎と錦之助の竹森喜多八の立会いは溌剌と若さに溢れてよどみが無く濁りが無い。きりきりと良く闘う。雪景色が美しい。特に最後の両国橋がすっきりと透明で、観客からも歓声が洩れていた。

3箇所に鷺坂伴内が出て来るけれども、どれもコミカルで軽くおもしろかった。三段目は橘太郎、道行は團蔵で、全部同じ人では無いけれども、どれも良かった。

09.11.07 歌舞伎座(3F幕見前)