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ニルヴァーナへの道

究極の悟りを求めて

ダライラマCNN-IBNインタビュー(2)

2007-12-22 22:24:38 | ダライラマ

Dalai Lama - Exclusive Interview 2 (TWO) on april 8th





ダライラマCNN-IBNインタビュー(1)

ダライラマCNN-IBNインタビュー(2)
ダライラマCNN-IBNインタビュー(3)


Karan Thapar: The Chinese say one other thing, Your Holiness. They say you keep calling for demilitarisation of Tibet, you keep calling for removal of all settlers from Tibet. They say again, this is an attempt to achieve independence by the subterfuge, by the backdoor.

ゲイカ、中国側はもう一つ言っています。彼らは、あたながチベットの非武装地帯化を主張し続けていること、チベットからのすべての移住者の立ち退きを主張し続けること、これは、巧妙な口実による、裏口からの独立を達成する試みではないのかと、彼らは言っています。

Dalai Lama: No. I think they did not carefully read my statement in the eighties. The meaning eventually was–and it was an agreement that India or neighboring states agreed to–that Tibet should hopefully be a zone of peace and must be demilitarised. I just said it as a dream, it’s my dream.

ダライラマ:それは違います。彼らは私の80年代の声明を注意深く読んでいません。その意味するところは結局のところ、ーーそれはインドや近隣の国々も賛成してくれた合意なのですーーチベットは願わくは平和の地帯であるべきであり、非武装でなければならない、ということです。私は、それを一つの夢として語ったのです。それは私の夢なのです。

Karan Thapar: It’s not a condition?

 それは条件ではないのですね。

Dalai Lama: No, not now.

ダライラマ:そうです。現在では、もう条件ではありません。

Karan Thapar: It’s a dream for the future, not a condition?

 それは将来の夢であり、条件ではないのですね?

Dalai Lama: Yes, it’s a dream.

ダライラマ。そうです。それは夢なのです。

Karan Thapar: One other thing: you have called for what you say a “high-level autonomy” for “real autonomy” in Tibet. The Chinese say Tibet already enjoys autonomy under China. What is it that you want and Chinese haven’t given? Where does Chinese autonomy fall short?

もう一つお聞きします。あなたは、あなたのいうところのチベットにおける「真の自治」のための「高度の自治」を主張しておられます。中国側は、チベットはもうすでに中国下において自治をエンジョイしているではないかと言っています。あなたが望んでいること、中国側がまだ与えていないものは何ですか?中国の自治にはどこが欠けているのでしょうか?

Dalai Lama: I think many visit Tibet including many Chinese. When they reach Lhasa, they realise that Tibet is actually ruled by terror. The autonomy is not that. The Tibetan should have their final authority except foreign affairs and defence. The rest of the business Tibetans can handle, may be even batter, because they know Tibetan mentality and geographical situations.

ダライラマ:多くの人がチベットを訪れています。その中には多くの中国人もいます。ラサに到着したとき、訪問者はチベットは事実上恐怖によって統治されていることが分かります。自治とはそういうものではありません。チベット人が、外交と防衛を除く、最終の権威を持つべきなのです。チベット人が扱うことができるその他のビジネスはもっとよくなります。なぜなら、チベット人は自分たちのメンタリティーや地理上の状況を知っているからです。

That's what I am seeking. On paper, yes, there is autonomy. But in reality, every key position is occupied by the Chinese who have no idea of Tibetan culture or Tibetan habits or mentality. Of course, there's no question (of understanding) the value of Tibetan spirituality.

今お話したことが私が望んでいることです。書類の上ではたしかに自治は存在します。しかし、現実は、あらゆる核となる地位は、チベットの文化や習慣やメンタリティーについて何も知らない中国人が占めているのです。勿論、チベットの精神性の価値についても知りません。

Karan Thapar: And here this is a condition. This is not a dream for future. This has to happen now.

今、おっしゃられたことが条件なんですね。これは将来の夢ではなく、今すぐに実現されなければならないことですね。

Dalai Lama: That's right.

そうです。

Karan Thapar: This is very important.

これは非常に重要なことですね。

Dalai Lama: That's right.

そうです。

Karan Thapar: And when the Chinese say they have given autonomy to Tibet, you say that's not autonomy, the Chinese have given terror.

中国側がチベットには既に自治は与えていると主張するとき、あなたは、それは自治ではなく、恐怖であると主張するのですね。

Dalai Lama: That's right. At the moment the rule of terror is the reality of Tibet.

そうです。現在、恐怖による支配はチベットの現実なんです。

Karan Thapar: One other thing Your Holiness. The Chinese say you keep calling all Tibetan-speaking people outside the boundaries of Tibet to be incorporated in a large Tibet. They say that is impractical, it's never happened in history, it can't happen today.

さらにお聞きしたいことがあります、ゲイカ。中国側は、あなたはチベットの国境の外でチベット語を話すすべての人を大チベットに組み入れるべきだと求めていると言っています。そして、その要望は実行不可能であり、歴史上においてもそういうことは起こっていないし、今日においても起こりえないと主張しています。

Dalai Lama: As I mentioned earlier, we are not looking at history. Today's reality is that the danger of diminution of our culture is being felt in all parts of Tibet. So all the six million Tibetans are very much eager to preserve their own culture, language and spirituality. Therefore, we here in free countries–morally speaking and also in reality–are acting on behalf of these people.

先にもお話ししましたように、われわれは歴史論争をしているのではないのです。今日の現実はチベットの文化の消滅の危険がチベットのあらゆる場所で感じられるということなんです。ですから、チベットの六百万人すべてが自分たちの文化や言葉や精神性の保存に非常な危機感を持っているのです。
それで、チベットの外の自由な国にいるわれわれチベット人がチベット国内の人たちのために道徳的な観点から、そして実際的な観点から行動しているのです。

So therefore, since we are not seeking independence or separation, we are very much satisfied if they provide us certain rights within the ambit of autonomy. We are very much working with the Chinese. Our main concern is preservation of our culture, spirituality and environment.

それで、わたしたちは独立や分離を求めていないのですから、もし中国がわれわれに自治の範囲内でしかるべき権利を与えてくれるならばわたしたちは大いに納得するのです。わたしたちは中国の人たちと共に大いに前進していくことができるのです。わたしたちの最も懸念していることは自分たちの文化であり、精神性であり環境なのです。

Karan Thapar: Which is why all Tibetans must be together?

いまおっしゃられたチベットの現在の危機的状況が、すべてのチベット人が団結しなければならない理由なのですね。

Dalai Lama: Yes.

そうです。







ダライラマCNN-IBNインタビュー(1)

2007-12-21 18:51:10 | ダライラマ

インドのニュースチャンネルCNN-IBNで、今年の四月にダライラマ法王へのインタビューが、放送され、それが、ユーチューブにアップされています。チベット問題に対するダライラマの考え方がよく示されていると思いますので、日本語訳とともに、このブログにも掲載させてもらいます。どこかのブログに日本語訳がアップされていないかと探していますが、まだ見つかっていませんので。まず、今回は、第一回目ということです。


ダライラマCNN-IBNインタビュー(1)

ダライラマCNN-IBNインタビュー(2)
ダライラマCNN-IBNインタビュー(3)

After almost 50 years of Tibetan uprising, where does the Tibet issue stand today? That’s the key issue Karan Thapar asked His Holiness Dalai Lama in an exclusive interview on Devil’s Advocate.

チベット人の蜂起からおよそ50年経過して、今現在、チベット問題は、どこにあるのでしょうか?それが、悪魔の弁護人という番組の独占的インタビューで、インタビューアーであるカラン・サパーがダライラマ法王にお聞きする中心の論争議題です。

Karan Thapar: Your Holiness, it’s almost been 30 years since you adopted the middle way, giving up Tibet’s claims of independence and instead accepting meaningful autonomy within China. The problem is that Chinese have shown no flexibility, no willingness to accommodate you and on the other hand, the Tibetan Youth Congress is calling for a more strident, assertive policy. Are you falling between two stools?

カラン・サパー:ゲイカ、あなたがチベットの独立の要求をあきらめて、その代わりに、中国内において、意味のある自治を受け入れるという、中道路線を採用して以来、およそ三十年経過しています。問題は、中国は、何の柔軟性も示さず、あなたと話し合おうという意志も示さず、一方、チベット青年議会は、もっと執拗な、攻撃的な路線を主張しています。あなたは、この二つの間で迷っているのではありませんか?

Dalai Lama: Firstly, we are fully committed about democracy. So, among our community, there are different views, even very serious criticisms of certain policies. However, our position is not seeking independence, but trying to achieve genuine autonomy that Chinese Constitution also provided. I think that though concrete research has not yet come, the Chinese intellectuals and educationists are showing genuine support and appreciation for our approach.

ダライラマ:まず、最初に言っておかなければならないのは、わたしたちは、全面的にデモクラシーにコミットしているということです。ですから、わたしたちのコミュニティーの間で、異なった意見があり、また、ある政策に対する非常に真剣な批判があります。しかしながら、われわれの立場は、独立は求めない、ということです。しかし、中国の憲法が与えている純粋な自治を達成するように求めています。私は、具体的な結果はまだ実現していませんが、中国の知識人や教育者は、わたしたちのアプローチに対して、真の支持や理解を示してくれていると思っています。

Karan Thapar: Let’s explore that Your Holiness. The Chinese Prime Minister Wen Jiabao, on March 16, laid down conditions that he says you have to accept before the Chinese prepare to talk to you. He says first of all you must abandon all support for Tibetan independence and must accept that Tibet has always been, since antiquity, an inseparable part of China. Are you prepared to accept that?

カラン・サパー:それでは、それについてもっと議論していきましょう、ゲイカ。中国の首相である温家法は、3月16日、中国側があなたと話し合う前に、まずあなたが受け入れなければならない条件を示しました。彼は、まず何よりも最初に、あたたはチベットの独立のためのすべての支持を断たなければならない、そしてチベットは大昔から、中国とは不可分の一部であったのだ、と認めなければならないと言っています。あなたは、これを受け入れる用意がありますか?

Dalai Lama: Now, I think the whole world knows that I am not seeking independence. As far as history is concerned, I always make clear – past is past. It’s not a political decision. It’s up to the historian or the legal expert…

ダライラマ:現在、私は、世界中の人たちは、私が独立を求めていないことを知っていると思っています。歴史に関するかぎり、わたしはいつも過去は過去だ、ということを明確にしています。政治的決断ではありません。それは歴史家が決めることであり、あるいは、法律の専門家・・・・

Karan Thapar: Can I interrupt, Your Holiness? The Chinese say that in fact you may claim that you have accepted Chinese sovereignty over Tibet, but many of your statements suggest otherwise.

カラン・サパー:ゲイカ、お話の途中ですが、割り込ませてもらっていいですか? 中国側は、次のように言っています。なるほど、あなたはチベットに対する中国の主権を受け入れていることを主張しているが、多くのあなたの声明の中にはそれとは矛盾するものがあると。

For instance, in statement on Tibetan Uprising Day on March 10, 1995, you said, ‘The reality of today is that Tibet is an occupied country under colonial rule.’ In you famous five points you said ‘Tibet was a completely independent state in 1949 when the PLA entered’. Now the Chinese say these statements prove that you don’t accept that Tibet has always been a part of China. They, in fact, prove you still want independence.

たとえば、1995年3月10日のチベット蜂起の日にちなんでの声明の中で、あたなは、次のようの述べています。「今日の実態は、チベットは植民地下の占領された国家である。」 あなたの有名な5項目提案の中で、あなたは次のように述べています。「チベットは、人民解放軍が入ってくる1949年まで、完全な独立国家であった。」 現在、中国は、これらの声明は、あなたは、チベットはずっと中国の一部であったことを認めていないことを証明するのではないかと言っています。それらは、事実上、あなたはいまだに独立を望んでいることを証明するのではないか。

Dalai Lama: I think, even among Chinese the opinion about history differs. Some time ago, the Chinese government said Tibet was a part of China since seventh century because of marriage. Then eventually, they dropped it and insisted it was since 13th century. Now even on that there are differing views among the Chinese scholars. Anyway, past is past. When PLA came to Tibet, at that time according to legal experts, Tibet was a de facto independent nation. So, according to that view, we consider Tibet an occupied land. But that does not mean that we are seeking independence because the world is changing. The reality is changing. Tibet is a backward country, economically and materially. Spiritually we are very advanced that everyone knows. Therefore, for our own independence and for material growth, we want to remain within People’s Republic of China

ダライラマ:中国人の間でも、歴史に関する考えは異なるのです。いつだったか、かつて、中国政府は、合併によって七世紀以来チベットは中国の一部であったと言っていました。それから、結局その主張を取り下げて、13世紀以来と言い出しました。現在、それについても、中国の学者の間の中では、異なった見解があります。ともかく、過去は過去なのです。PLA(人民解放軍)がチベットに入ってきたとき、法律の専門家によると、チベットは事実上の独立国家であったのです。それで、その見解によって、わたしたちは、チベットは占領された土地であると考えているのです。しかし、これは、わたしたちは独立を求めていることを意味しません。なぜなら、世界は変わっているからです。現実は変化しているのです。チベットは、経済的にも物質的にも遅れた国家です。精神的には非常に進んでいることはみなさんが知っています。ゆえに、わたしたちの自立、そして物質的成長のために、わたしたちは中国内に留まることに異存はありません。

Karan Thapar: So, therefore, you are saying that you have accepted Chinese sovereignty over Tibet?

カラン・サパー:そうすると、あなたは、チベットに対する中国の主権を認めるということですか?

Dalai Lama: Yes.

ダライラマ:そうです。

Karan Thapar: You no longer want independence?

カラン・サパー:もはや独立は求めないということですか?

Dalai Lama: Yes.

ダライラマ:そういうことです。







ダライラマ法王の日本講演

2007-12-20 19:17:55 | ダライラマ
この前、ダライラマ法王が来日しておりました。
あんまりマスコミでは大きく取り上げられずにいたので、ご存知でない方が、このブログにアクセスしておられる方の中にもおられるかもしれません。

久しぶりに長田幸康さんのブログを読んでいたら、ダライラマ法王の日本講演をブログにアップしておられる方のブログを紹介していました。

早速読ませてもらいました。
さすがにダライラマ法王らしくご自身の持論を非常に魅力的にアピールされています。

この長田さんのブログには、チベット問題に関するニュース解説をユーチューブにアップしていることも紹介してくれています。
チベット問題に関心のある人には必見だと思います。

米議会ダライラマ法王への名誉黄金勲章受賞式ライヴ中継

2007-10-17 20:33:02 | ダライラマ
Welcome to the Dalai Lama Congressional Gold Medal Celebration Webcast!

You will be able to watch the events live online here on October 17th!

It is not necessary to register to view the live webcast but it is advised. You may do so here.



ICT will never share your email address!



Please Note:

There is no video or audio file to download. The feed will broadcast directly in your media player beginning at 10:30 a.m. EDT.

Live Program Schedule:

All times are U.S. East Coast time (EDT). The online media player links below will become active at 10:30 a.m.
(日本時間の深夜あたりぐらいからですか。ちょっと、眠たい時間帯ですが、ダライラマやチベット問題に関心を持っている人にとっては、見逃せないですね。私も、これはライヴで視聴するつもりです。)

11:00 a.m.: Tibetan cultural performances will begin on West Lawn stage following opening remarks by Special Envoy Lodi Gyari
1:00 p.m.: Congressional Gold Medal ceremony from the Rotunda of the U.S. Capitol
2:00 p.m.: Tibetan cultural program resumes
2:40 p.m.: Public address by the His Holiness the Dalai Lama with opening remarks by House Speaker Nancy Pelosi and ICT Board Chair Richard Gere
3:30 p.m.: The program will conclude with an excerpt performance of a Tibetan opera and closing comments by Richard Gere


View the webcast in
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エベレストで米国人ら拘束、チベット独立など要求

2007-04-27 13:00:05 | ダライラマ
エベレストで米国人ら拘束、チベット独立など要求
2007.04.25
Web posted at: 21:45 JST
- CNN/AP

北京――中国西部、チベット自治区の分離独立を求める組織は25日、世界最高峰のエベレスト(中国名・チョモランマ、同国発表で標高8850メートル)で米国人3人、チベット系米国人1人が自治区独立を要求、来年の北京夏季五輪に反対する垂れ幕を掲げたため拘束されたと発表した。AP通信が報じた。


自治区内の登山拠点での事件で、チベット独立を求める学生団体が行った。ネパール・カトマンズを拠点にする同団体代表は「中国は五輪をチベット占領の過酷な現実から目をそむけさせる材料にするつもりだ」などと語っている。

北京の米大使館は事件について、個人情報の問題が絡み論評出来ないと述べたが、事件を認める発言ともなっている。AP通信は、拘束された女性の1人と電話連絡し、中国当局に旅券をはく奪されたが、処遇に問題はないと語ったと伝えた。抗議行動は約30分間だったという。

しかし、拘束期間についての情報はないと述べた。

反中の学生団体よると、4人が拘束された基地には聖火リレーの目玉行事として中国当局が検討するエベレスト経由の可能性を探るための同国の登山家、関係者70人以上が滞在していたという。今回の抗議行動はこれを逆手に取った対抗措置としている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


チベットの独立は絶対に許さないという中国の固い決意がうかがえ、チベット問題に対する中国当局の懸念がよく現れている対応です。チベットの中でも、若い、祖国愛に燃える人たちや、その支援者の中には、ダライラマの非暴力に徹した、中道路線に反発する人たちが存在することは、最近のローリングストーンの記事の中でも知ることができます。

この中国側の対応に対する感想は、軍事評論家=佐藤守のブログ日記にも、書かれています。

この中国のチベットへの今現在も続いている侵略行為は、なぜか、アメリカのメディアや日本のメディアで、ほとんど黙認という形で、声高に非難されない。もちろん、アメリカのメディアでは、時々取り上げられるが、なぜか、長続きしない。それに対して、日本の過去の慰安婦問題はネチネチと責め続けられる。これは、勿論、日本側の日本の過去の戦争中の悪と考える行為は徹底的に糾弾しなければ自分の心が休まらないという人たちの病理の存在もその理由のひとつだが、この日本の自虐的病理は、中国には徹底的に利用されている。この中国の外交のしたたかさは恐るべきである。よく考えると慰安婦問題よりも、もっともっと何億倍もの重大な人権侵害であるチベット問題は、徹底的に糾弾されなければならないのだが、中国は偉そうな顔をして、日本に道徳的お説教を垂れるという構図になってしまうのだ。おかしいではないか。このおかしさに気が付かない人は、まったく、おめでたい人たちという他はないです。

ダライラマ法王タイム誌インタビュー

2007-04-21 22:41:17 | ダライラマ

ASIA
JANUARY 18, 1999 VOL. 153 NO. 2

The Dalai Lama on his frustrations with Beijing:
"I'm Ready to Talk Any Time"

(ダライラマが北京の態度に苛立ちを示す:
「私はいつでも話し合う用意は出来ています。」)

The Dalai Lama's brief chat with U.S. President Bill Clinton at the White House in November raised hopes that Beijing's leaders might at last agree to meet with the exiled Tibetan spiritual leader. But expectations that Washington could broker a dialogue between the 63-year-old Nobel Peace Prize winner and the Chinese swiftly foundered. In an uncharacteristically somber mood, the Dalai Lama met recently with TIME's New Delhi Bureau Chief Tim McGirk in Bodh Gaya, northern India, and explained his frustrations in trying to discuss with Beijing the issue of Tibetan autonomy. Asked how the relationship was progressing, he glumly replied: "There's no news. Nothing's working."

TIME: During President Clinton's trip to China, a glimmer of hope emerged that Beijing might start talking to you. What's happened? Has the door shut?

タイム:クリントン大統領が中国を訪問した時に、中国政府はあなたと話し合いを始めるのではないかという微かな希望の光が見えたようなのですが・・・・・。一体何が起こったのでしょうか。ドアは閉じられたのですか?

Dalai Lama: I cannot say it's shut. "Shut" is maybe the wrong word. But there are some confusing signals coming from Beijing. One of the informal channels which we used to make contact with them is now more or less closed. It's not working.

ダライ・ラマ:ドアは閉じられたとは言えません。「閉じられた」という言葉はたぶん不適切な言葉だと思います。そうは言うものの、北京から来るサインの中には混乱を来すものがあります。われわれが中国側といつも接触している非公式のルートの一つは、今現在、事実上、閉ざされています。それは活動していません。

TIME: Why did the Chinese leaders change their minds about speaking to you?

タイム:何故中国側の政府要人は、あなたと話し合うという気持ちを変えたのでしょう?

Dalai Lama: It seems that lately, the overall government policy regarding dissidents--and the democracy movement--has hardened. Their attitude toward me and Tibetans has gone the same way. It seems that the influence of the hard-liners is increasing.

ダライ:ラマ:最近、全面的に政府の反体制活動家に対する姿勢は、勿論民主化運動についてもですが、きびしくなってきています。私やチベットに対する姿勢も同様にきびしいものになっています。これは中国政府内部の強硬派の力が台頭してきていることの表れのように思います。

TIME: Is President Jiang Zemin himself responsible for this?

タイム:江沢民国家主席は、このことについて責任があるのでしょうか?

Dalai Lama: We know there are two groups [in the Politburo], one moderate and one more hard-line, on Tibet.

ダライ・ラマ:われわれは政治局の内部に二つの勢力があることをつかんでいます。チベットに対して、穏健派と強硬姿勢を主張するグループが存在しています。

TIME: What's next? How can you convince the Chinese leaders that there's no harm in talking with you?

タイム:将来の展望はありますか? あなたは中国政府のリーダー達を説得して、あなたと話し合うことは何ら彼らのマイナスにはならないのだと確信させることができますか?

Dalai Lama: My position hasn't changed in spite of the tougher Chinese attitude. I'm fully committed to the middle-way approach [of seeking autonomy for Tibet], one which can actually help to achieve genuine stability and unity for China. It's actually an antidote to separation. The Chinese government should appreciate this, but unfortunately there's too much suspicion. As soon as some positive indication comes from the Chinese government, I'm ready to talk anywhere, any time, without preconditions.

ダライ・ラマ:私の立場は中国側の強硬な姿勢にもかかわらず、変わっていません。私はまったくの中道路線の立場、つまりチベットの自治を求めるというものですが、この立場を貫いています。そして、中道路線こそ、事実上、真の中国の安定と統一に貢献することができます。これは事実上、分離要求に対する防御になります。中国政府はこの私の案を考慮しなければなりません。しかし残念ながら、彼らの間には、あまりにもわれわれに対する疑惑が渦巻いています。がもし、中国政府から肯定的な徴候が来れば、私は直ちに前提条件なしで、いつでもどこででも話し合う用意があります。

TIME: Are you optimistic?

タイム:あなたは将来について楽観的ですか?

Dalai Lama: One encouraging thing is that some Chinese writers and intellectuals are now becoming more aware about Tibet. Certainly America and Western Europe are also increasing their support for us. I'm very pessimistic for the immediate future. In the long run, though, I'm always optimistic.

ダライ・ラマ:最近の勇気づけられることの一つに、幾人かの中国人の作家や知識人がチベットについて次第に関心をよせてきてくれているということがあります。たしかに、アメリカや西ヨーロッパの国々もまた、われわれに対する援助を増やしてきてくれています。私は、ごく近い将来については悲観的ですが、遠い将来については、いつも楽観視しています。

TIME: At times, it seems as though the Chinese strategy is simply to ignore you and hope that they will outlast you.

タイム:時々、中国側の戦略は、単純にあなたを無視して、あなたより長く生存する、つまりあなたがこの地上から姿を消すのを期待しているようにも見えます。

Dalai Lama: Yes. One opinion [among the Chinese leadership] is that if the Dalai Lama dies things will become easier. There will no longer be any resistance in Tibet. But there's another opinion: that as long as the Dalai Lama is there, only then can a real solution be found through the middle way. Without the Dalai Lama, things could become difficult and more dangerous.

ダライ・ラマ:たしかにそうですね。中国政府内部の意見の一つに、ダライ・ラマが死ねば、物事はうまくいくのだが、というのがあります。つまり、チベットでは、私がいなくなれば、いかなる抵抗運動もなくだろうというのです。しかし、異なった意見もあります。ダライ・ラマがチベットにいる限り、その時にこそ中道路線に立脚した真の解決が見出せるというものです。ダライ・ラマがいなくなれば、解決はむずかしくなり、より危険になるという考えている幹部もいます。

TIME: But in the meantime, it seems that Beijing is trying to destroy Tibet's separate identity.

タイム:ところで中国政府は、チベットの独自の文化を破壊しようとしているように見えます。

Dalai Lama: That's my concern. Tibet's living Buddhist culture and tradition are not only of benefit to 6 million Tibetans but also to the Chinese. In the past, Tibetan Buddhist traditions have helped the Chinese a lot. In the future, these traditions can also help to give the Chinese deeper values.

ダライ・ラマ:そのことは私が心配していることです。チベットの生きた仏教文化や伝統は単に600万人のチベット人の利益になるばかりでなく、中国人の利益にもなるのです。過去において、チベットの仏教の伝統は中国人をたくさん救いました。さらに将来、これらの伝統はまた、中国人により深い価値を提供することができます。

TIME: In what way? Do you believe the Chinese people have lost their values?

タイム:どういう方法によってでしょうか? あなたは中国人は彼らの価値観を喪失したと思っていますか?

Dalai Lama: Today, there's nothing--only money. Marxism doesn't have any effect. There's corruption and scandals everywhere. Nowadays, the Chinese are saying that if corruption is eliminated then the Communist Party will die, and if corruption is not eliminated then the country will die. Self-discipline based on spiritual values--that's the real answer to corruption.

ダライ・ラマ:今日、彼ら中国人にはなにもありません---ただお金があるのみです。マルクス主義は何の影響力も持つことができません。中国ではいたるところで汚職やスキャンダルが満ちあふれています。いま中国人は次のようにささやきあっています。もし汚職が根絶されたら中国共産党は崩壊するであろう。あるいは、汚職が根絶されないならば、国家は崩壊するだろう、と。精神的価値に基づいた自己を律する精神は、汚職に対する真の解決策なのです。

TIME: There are reports that a new crackdown is under way in Tibet. What advice would you give to those Tibetans--in particular the Buddhist monks and nuns--who are being forced to denounce you as their spiritual leader?

タイム:今チベットでは新たな弾圧が行われているという報告があります。あなたは、あなたを自分たちの精神的指導者として批判させられているチベット人たち、特に仏教僧侶に対してどのようなアドバイスをされるでしょう?

Dalai Lama: I'd say O.K., denounce me. Especially if they're being subjected to physical torture. I don't want them to undergo that pain.

ダライ・ラマ:私はOKを言うでしょう、どうぞ私を非難して下さいと。特に物理的な拷問を受けているならば。私はそのような苦痛を経験してもらいたくないのです。

TIME: Why are the leaders in Beijing so afraid of you?

タイム:何故北京のリーダー達はあなたをそんなにも恐れているのでしょう?

Dalai Lama: [He laughs and shakes his head.] I don't know. I don't know. They have big military power but no truth.

ダライ・ラマ:[笑いながら頭を横に振る]分かりませんし、知りません。ただ彼らは巨大な軍事力は持っているのですが、真理は持っていないのです。


ダライラマ法王、シャンバラサンインタビュー (2)

2007-04-21 19:38:51 | ダライラマ

Professor Robert A. F. Thurman:I see what you mean, Your Holiness. Those who harp on political independence as the only goal never think about this dimension.

ロバート・サーマン教授:猊下のおっしゃられることは分かります。チベットの政治的独立 を唯一の目的だと主張 している人たちは、この文化の保護、維持という次元を考えてい ません。

His Holiness the Dalai Lama:
Since my main aim, my main concern, is spirituality, the special Tibetan cultural heritage, I have to speak out on behalf of these people of Kham and Amdo. And since I accept staying within the People's Republic of China, there is no implication of expansionism. Clear?

ダライ・ラマ法王:私の根本の目的、そして最も懸念していることは、霊性であり、特別なチベット文化遺産ですので、私はカムやアムド地方の人たちの代弁者の役割を果たさな ければなりません。そして私はチベットが中国国内に留まることを受け入れていますので、 私の主張には拡大主義の要素は何もないのです。私の主張は納得していただけたでしょうか?

Professor Robert A. F. Thurman:
Very clear. So what does Your Holiness ask us to do, in the West, to effectively support the Tibetan cause?

ロバート・サーマン教授:非常に明快ですね。それでは猊下はわれわれ西欧の人間に対 して、チベットの大義を効果的に支援するために、どのような行動を望まれますか?

His Holiness the Dalai Lama:
According to our past experience, I consider public opinion the ultimate source of our hope. If public opinion increases in a favorable way, then it is automatically reflected in the media. And that gives inspiration for more support, more concern, in Parliament or Congress. It certainly gives the government a new enthusiasm.

ダライ・ラマ法王:わたしたちの過去の経験によりますと、世論というものが、わたしたちの 希望の究極の源泉だと考えています。公の意見、世論ですね、がわれわれに有利な方向 に展開していけば、自動的に、その意見はメディアに反映されます。そしてこれは議会や 国会の中に、もっと支援が与えられたり、関心が払われなければならないという刺激を与え ます。これは確実に政府に新たな情熱を呼び起こします。

I have found this in many countries, very much in Europe. Because public opinion is so favorable, so strong, the media is very favorable, very supportive. So ultimately, it gives the government enthusiasm to want to help in a practical way. At this moment we are appealing to various governments to pursue the Chinese government to start meaningful
negotiations without preconditions. That's my main thrust at this point.

私はこのことを多くの国々で--特にヨーロッパで最も多くですが--発見しています。ヨーロ ッパの世論がチベットに大変好意的であり、強力ですので、メディアも大変好意的であり、 支援の姿勢を示してくれています。ですから究極的には、世論が政府にたいして、実現可能 な方法で支援を行いたいという情熱を与えることになるのです。この瞬間にも、わたしたち は、中国政府が前提条件なしで、実りのある交渉をわれわれと開始するようにと、様々な 政府に働きかけています。これが現時点における、私の中心の目標です。

After 1959, the early sixties, the U.S. government supported the Tibetan cause. But without public grassroots support, governments can easily change their policies. Now the public support we are receiving is very considerable. And it actually comes from the public. This cannot change overnight. Government policy always has the possibility of change, but public sympathy remains there.

1959年の後の、1960年代の初期には、アメリカ政府はチベットの大義(解放)を支援して くれていました。しかし、一般の人々の草の根の支援がなければ、政府は簡単に政策を 変えてしまいます。現在わたしたちが得ている大衆の支援はかなりなものがあります。そして この支援は実際に一般の人々から来ています。これは一夜で変わることは出来ません。 政府の政策はいつも変化の可能性があるのですが、大衆の支援はそこに残ります。

So in the long run, I feel public opinion is very important. People can help if they increase the activities of Tibetan support groups in various parts of the world and in the United States. Just now, there is a very important movement beginning among the university students.

ですから長い目で見るならば、私は世論というものが非常に重要だと感じています。
世界の様々な地域やアメリカのチベット支援グループの活動が活発になるならば、その 行動はひいてはチベットを救うことにつながります。ただいま現在、大学生の間で非常に 重要な運動が始まっていますね。

Professor Robert A. F. Thurman: Yes, Students for a Free Tibet.

ロバート・サーマン教授:自由チベットのための学生ですね。

His Holiness the Dalai Lama: This, I think, is very important, very good.

ダライ・ラマ法王:これは非常に重要で、大変喜ばしいことだと私は思います。

Professor Robert A. F. Thurman:
Yes, we were working with Adam Yauch at his concert for Tibetan freedom. Adam asked me to speak to that huge crowd of young people-and all they wanted was more singing! So I had to talk quickly. I asked the kids if they wanted peace in the next century. They made a huge shout, "Yes!" Then I told them that they should speak out right now against policies of our government or the Chinese government or anyone that they can see will bring violence and war in the future. Because their next century could be ruined by war.
Words now could stop war then!

ロバート・サーマン教授:そうですね。わたしたちはアダム・ヤウク主催のチベタン・フリーダム・ コンサートでアダム・ヤウクと一緒に活動していました。アダムは私に、その会場に集まって いる大勢の若い聴衆に何か話してほしいと頼んできました。彼らはみんな、もっと歌いたが っていましたので、私は素早く何かを話し終えなければなりませんでした。私は彼らに次の 世紀に平和を望むのかとたずねました。それに対して、彼らは大声で、「イエス!」と叫びま した。それに続いて、私は彼らに、将来、暴力や戦争をもたらしそうだと自分たちが予見で きる、われわれの政府や中国の政府や人物の政策に対して、ただいま現在反対の声を上 げるべきだと語りました。次の世紀が戦争により荒廃させられる可能性があるからです。
しかし言葉は戦争を抑止することができるのです!

His Holiness the Dalai Lama: Okay! (laughter)

ダライ・ラマ法王:オーケイ!(笑)

Professor Robert A. F. Thurman:
So popular support is the key, and the education about Tibet of the young people all over the country is very crucial for long term support.

ロバート・サーマン教授:ですから、一般の人々の広範な支援が鍵となります。
そして国じゅうの若い人たちへのチベットについての教育が、長期に渡る支援のためには きわめて重要になります。

シャンバラサン誌1996年11月号:An interview with His Holiness theFourteenth Dalai Lama, by Robert Thurman より)

ロバート・サーマン教授のダライラマ法王論(タイム誌)

ダライラマ法王、シャンバラサンインタビュー 

2007-04-21 19:15:47 | ダライラマ

チベット問題に関する最新の記事を紹介させてもらったので、参考資料として、十年程前に、シャンバラサン誌で、ダライラマ法王がチベット問題についての取り組み方を語っていますので、そのインタビューの一部(前半部分)を紹介させてもらいます。

~~ ダライラマ法王、シャンバラサンインタビュー ~~

◆チベット問題解決に向けて、ロバートサーマン教授と話る

<チベットの独立や、チベット文化の将来について>


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The Realpolitik of Spirituality:

An interview with His Holiness the Fourteenth Dalai Lama, by Robert Thurman

Professor Robert A. F. Thurman: Your Holiness, this is a two-part question. Is independence a realistic goal for Tibet? And if so, could the leaders of the other world religions do more than they already have to help Tibet realize that goal?

ロバート・サーマン教授:猊下に二つの質問をさせていただきます。 まず第一に、チベットの独立は、チベット及びチベット人にとって実現可能な目標で すか? 第二の質問は、独立ということが実現可能な目標ならば、世界の宗教指導者 は、チベット独立という目標実現のために、今までチベット及びチベット人を支援して きた以上に、もっと何かできることがあるのでしょうか?

His Holiness the Dalai Lama: Today Tibet, with its unique cultural heritage which incorporates Buddhist spirituality, is truly facing the threat of extinction. Whether intentionally or unintentionally, some kind of cultural genocide is taking place. Time is running out.

ダライ・ラマ法王:今日のチベットは、仏教の霊性をその中に取り入れた、ユニーク な文化的遺産が本当に消滅の危機に直面しています。意図的か意図的でないか 分かりませんが、ある種の文化的ジェノサイドが行われています。もうあまり時間が ないのです。

I believe my responsibility is to save Tibet's unique cultural heritage. The best way to save this nation with its heritage is through dialogue, dialogue with the Chinese government. That's the only way. We need some kind of political solution, which can only come through dialogue in the spirit of compromise, in the spirit of reconciliation.

私はチベットのユニークな文化的遺産を保存することが私の責任であると信じてい ます。この文化的遺産を消滅の危機から救う最善の方法は、中国政府との対話です。 それが唯一の方法です。わたしたちはある種の政治的解決をはからなければなり ません。それは、歩み寄りの精神、和解の精神に基づく対話によってのみ実現でき るのです。

Therefore, I'm speaking for genuine self-rule, not for independence. It is certain that historically Tibet was an independent nation. However, the world is always changing. Politically speaking, Tibet is a landlocked country, materially backward. So in order to develop Tibet materially, it is possible that if we join with another big nation we may get greater benefit.

ですから、私は常に、純粋な自治について語っています。決して独立を主張している わけではありません。確かに歴史的にはチベットは独立国家でした。しかしながら、 世界は常に変化しています。政治的に言えば、チベットは岩だらけの国ですし、物質 的には遅れています。それで、チベットを物質的に発展させるために、われわれが 他の巨大な国と一緒になるならば大きな利益を得ることも可能でしょう。

Concerning the second part of the question, the various religious leaders have privately expressed a feeling of concern. That's quite clear. Recently the Jewish and Christian brothers and sisters made a resolution, which I think was very encouraging. One of the problems in Tibet now is that there is too much repression of religious life, so naturally, these religious leaders have serious concerns. I think it is very useful for them to expressthese concerns and we feel very grateful.

第二のご質問に関しては、様々な宗教の指導者が個人的に懸念を表明して下さって います。それは非常に明白です。最近、ユダヤ教やキリスト教の兄弟姉妹たちが断固 たる決意を表明してくれました。これは非常に勇気づけられることです。現在のチベット における問題の一つは、宗教に対する大変な弾圧が行われていることです。ですから、 当然、ユダヤ教やキリスト教の指導者は心配してくれているわけです。彼らが懸念を 表明することは非常に有益なことですし、わたしたちは大変感謝しています。

Professor Robert A. F. Thurman:
If independence is not practical, what is the best the Tibetan people can hope for? What is the best arrangement for the Tibetan people?

ロバート・サーマン教授:独立が現実的でないとすれば、チベットの人たちにとって、 最も望むものは何ですか? チベットの人たちにとって最善の解決法とは何でしょうか?

His Holiness the Dalai Lama:
I believe it is genuine self-rule. In the education field, we must be able to work for the preservation of Tibetan culture. In the economic field we must develop industry, using the vast Tibetan mineral wealth. It is essential for the Tibetans to have the full responsibility, taking care of the environment, conserving the resources, and looking out for the interests of Tibetan workers, nomads and farmers.

ダライ・ラマ法王:私は最善の解決法とは、純粋な、真の自治だと考えています。 教育の分野においては、わたしたちはチベットの文化の維持のために尽力しなければ なりません。経済の分野では、チベットの豊富な鉱物資源を利用しながら、産業を発展 させなければなりません。チベット人にとっては、環境の保護に気をつけ、資源を保護し、 チベットの労働者、遊牧民、農民の利益にために、すべての責任を負うことは、最も重要 な、不可欠のことです。

The Chinese have shown a consistent concern to get profits as quickly as possible, regardless of the effect on the environment. Unfortunately, they simply have the intention to make money quickly, with no consideration of whether that industry benefits the local Tibetans or not.

中国人はチベットの環境への影響を考えずに、できるだけ早く利益を得ようとします。 そして不幸なことに、彼らは単に、その産業がその土地のチベット人に利益をもたらす かどうかを考えずに、できるだけ早く利益を得ようとします。

Therefore it is important that responsibility for the development of Tibet must be carried by Tibetans themselves. There must be genuine self-rule, for the protection of Tibetan culture, economy and environment.

そういう状況ですから、チベットの開発は、チベット人自身によって行われなければ なりません。チベットの文化や経済活動や環境の保護のためには、チベット人自身に よる、真の自治が絶対に必要だと思います。

In other fields, such as foreign affairs and defense, perhaps we cannot carry all the responsibility. Buddhism became so central for Tibetans that, for the last two centuries, we have had some kind of general demilitarization. We have paid no attention to war and have kept no effective defenses on our borders. So practically, it is easier for us to let the Chinese government assume these responsibilities.

外交や防衛に関しては、たぶん私たちは、すべての責任を果たすことはできないで しょう。仏教がチベット国民のために中心的な役割を果たしてきたので、過去2世紀の 間、チベットはある種の非武装の状態で国家を運営してきました。私たちは、戦争に は、何の注意も払いませんでした。ですから現実的な見地から言えば、私たちにとっ て、中国政府に、これらの責任を果たしてもらうことは、助かることになります。

So that's my main proposal. I think it's very practical and realistic and achieves the basic things that we consider important.

以上が私の主な提案です。私の提案は非常に現実的であり、実現の可能性があり、 わたしたちが重要だと考えている基本的なことを実現できると思います。

Professor Robert A. F. Thurman:
If Tibet remains part of China can the Tibetan religion and culture survive into the foreseeable future?

ロバート・サーマン教授:もしチベットが中国の一部のままであるならば、チベットの 宗教や文化は予見しうる将来に生き残ることができるのですか?

His Holiness the Dalai Lama:
The Indian government has always expressed the idea that Tibet is an autonomous region of the People's Republic of China, not a part of China itself. That, I think, has some historical basis. On that basis, China must respect our genuine autonomy.

ダライ・ラマ法王:インド政府は常にチベットは中国の一部ではなく、中国の自治区だ という考えを表明しています。その考えには、歴史的な裏付けがあると私は考えてい ます。その裏付けに従って、中国は私たちの真の自治を尊重しなければなりません。

Professor Robert A. F. Thurman:
And that includes a complete Tibet, so that the eastern parts of Tibet, Amdo and Kham, which have been incorporated into China proper, are once again recognized as Tibet, the truly autonomous region?

ロバート・サーマン教授:猊下のご提案は、すべてのチベットの地域に適用されなけれ ばならないということですか? つまり、チベットの東方の地域であるアムドやカムは、 それぞれ中国の省に組み入れられていますが、再びそれらの地域もチベットとして、 真の自治区として認められなければならないということですか?

His Holiness the Dalai Lama:
In my Strasbourg proposal, I made it clear that the entirety of Tibet should be considered as one entity. That is because my main concern, my main interest, is the Tibetan Buddhist culture, not just political independence.

ダライ・ラマ法王:私がストラスブールの欧州議会で提案したことは、チベット全体が 一個の独立の存在として認められなければならないと明確に主張したことです。なぜ このような主張をしたかと申しますと、私の中心となる懸念、主な関心は、チベットの 仏教の文化であり、政治的独立ではないからです。

If my main concern were the political independence of Tibet, then it would be enough for just the present Tibet Autonomous Region to be independent, leaving out Amdo and most of Kham. But my main concern is the protection of Tibetan culture, and I cannot exclude the four million Tibetans in these areas. Historically and even today, most of the top scholars are from Kham and Amdo. Lama Tsong Khapa came from Amdo.

もし私の主な関心がチベットの政治的独立であるならば、現在のチベット自治区の 独立だけで充分であり、アムドやカムを外してしまうでしょう。しかし、私が最も心配してい ることは、チベット文化の保護、維持であり、アムドやカム地方に住む400万人のチベット 人を除外することはできません。歴史的に言っても、そして今日でも、ほとんどの一流 の学者はカムやアムドの出身です。ゲルク派の開祖ツォンカパ大師もアムドの出身です。

Professor Robert A. F. Thurman:Your Holiness comes from Amdo!

ロバート・サーマン教授:猊下もアムド出身ですね!

His Holiness the Dalai Lama:
Yes...(laughter). So, my main aim being the preservation of Tibetan culture, if Tibet is divided into separate parts and the other regions of Tibet have their cultural heritage assimilated with Chinese culture, then there is no hope.

ダライ・ラマ法王:そうですね(笑)。それでですね、私の主要な目的はチベットの文化 の保護、維持ですから、もしチベットが分割されてしまって、分割された 地方の文化 遺産が中国文化に同化吸収されてしまったら、それはもう絶望的です。

So my proposal treats Tibet as something like one human body. The whole Tibet is one body. If it were just a question of political independence, then even one part could be a separate nation. Furthermore, if my main goal were independence, then talking about other parts of Tibet could be considered as a kind of expansionism.

ですから私の提案はチベットを一個の人間の身体のように取り扱うというものです。 チベット全体は人体のようなものです。もし私の提案がチベットの政治的独立ならば、 一つの地域だけでも中国とは別の国家になり得ます。さらに、私の本当の目的が独立 ならば、 チベットの他の地域について語ることは、拡大主義の一種とみなされてしまい ます。

But my position is that we are willing to remain within the People's Republic of China. Concerning the danger of the extinction of Buddhist culture, I think the situation is even more delicate in these areas that have been absorbed into Chinese provinces -Amdo into Qinghai province, and Kham into Yunnan, Gansu and Sichuan provinces. There it is very difficult for Tibetans to maintain their cultural heritage.

しかし私の立場は、わたしたちチベット人は中国の国内に留まることは受け入れま しょうというものです。仏教文化の消滅に関しては、中国の省に組み入れられてしま った地域--アムドが青海省に、カムがYunnan, Gansu and Sichuanなどの省に-- の状況が非常に危ういのです。これらの地域では、チベット人にとって、自分たちの文化 遺産を維持していくことがとてもむずかしいのです。


ローリングストーン誌特集『失われた国・チベットの悲劇』

2007-04-21 14:30:38 | ダライラマ

ダライ・ラマ法王日本代表部事務所メディア掲載情報という新しいページが出来ています。
新しい情報として、「ローリングストーン日本版第二号に、特集『失われた国・チベットの悲劇』チベットとダライ・ラマ法王に関する記事が掲載されました。」、というお知らせがあります。

このローリングストーン誌の記事は、現在のチベットの危機的な状況がよく描かれていますので、チベット問題に興味のある方は、是非、読んでみてください。

この記事を書いている人は、カーネギー中国プログラム基金の客員研究者である、
Josh Kurlantzick さんです。英文の記事は↓で読めます。
The End of Tibet by Josh Kurlantzick


"Tibetans are unique on the planet in that their national life is wholly dedicated to Buddhism," says Robert Thurman, the most famous Tibet scholar in America. By developing a worship of living things, he says, Tibetans also preserved the Earth's highest ecosystem, one that comprises biodiversity on the scale of the Amazon and serves as the source of rivers that sustain nearly half the world's population. "This is some of the most important environment in the world," Thurman says, "so fragile that, once it's gone, it can never come back."

「チベットは、国民の生活がすべて仏教に捧げられている地球上でユニークな国である」と、アメリカにおける最も有名なチベットの学者であるロバート・サーマンは言う。チベットはまた、生きている事物の崇拝を発達させることによって、地球上で最も高い生態系を保存している。それは、アマゾンの広さに及ぶ生物の多様性を形成しており、地球の半分近い人間を支える水の供給源の役割を果たしている、とサーマンは言う。「これは、世界で最も重要な環境であり、非常にこわれやすいので、いったん失われたら、もう元にもどすことはできない。」

というような、チベットが果たす、地球の環境面での重要さを指摘している、サーマンの言葉も紹介されています。

この記事の中で、興味深かったのは、ダラムサラに住むチベット人の若い人の間に広がる、ダライラマ法王の非暴力主義に対する批判です。非暴力で、果たして、チベット人の言い分が実現できるのか、このままでは、いずれ、チベットの中のチベット文化は滅びてしまうのではないか、という焦燥感が、よく伝わってきます。そこには、中国の巧妙な、戦略もある、と記者は書いています。

ロバート・サーマン教授のダライラマ法王論

2006-11-09 19:58:55 | ダライラマ
前回に引き続いて、ダライラマ法王来日中ということもあり、チベット仏教研究者ロバート・サーマン教授が、タイムアジア版に寄稿した記事を、以前、訳したことがありましたので、それをここに載せます。 原文は↓のURLにあります。

 http://www.time.com/time/asia/asia/magazine/1999/990823/lama1.html

 ◆ダライ・ラマ法王略年譜
 1935年7月6日、アムド地方で生まれる。
 2歳の時、ダライ・ラマ14世と認定される。
 1950年、宗教上政治上の全権を賦与され、中国とチベットの主権をめぐり、交渉開始する。
 1959年、8万人のチベット人と共に、インドへ亡命し、ダラムサーラにチベット亡命政権を樹立する。
 1987年、「五項目チベット和平案」を提案。
 1989年、ノーベル平和賞を受賞する。

中国共産党の軍隊による侵略により、祖国チベットから余儀なく脱出せざるを得なかったが、微笑を絶やさないチベット仏教の僧侶は、平和の主唱者として、何百万人もの人々の魂を鼓舞し、全世界にチベットの窮状を訴えている。

 最近、CNNを見ていたら、突然、現地時間早朝4時のダラムサーラにあるダライラマの書斎や瞑想ルームに連れていかれた。私はダライラマを30年以上にわたって知っているが、そのような早朝に、そういうプライベートな場所で、彼と一緒になったことはない。

 だから、ダライラマが瞑想をしたり、朝の祈りの言葉を唱えたり、時折あくびをしたりして、カメラから何も隠さずに行動している場面を見て興味 をそそられた。ある場面では、撮影の合間に、撮影者に何をしているのですかと尋ねられたとき、ダライラマは、「モチベーション(動機)を作っています。」 と答えた。何ですって?、と質問者。ダライラマ答えて曰わく、「一日の活動のための、私自身のモチベーションを形作っているのです。」

ダライラマは現在64歳(1999年当時)であるが、60年に及ぶ研究、修行、そして知的、霊的達成の後、自己の日々の考えや言葉や行動が、自分のまわりのすべての生き物の利益になるように、利他的なモチベーションを高めている。

 一体何がダライラマをこんなに興味深い人間にしているのだろうか? 何故世界中の人々が、いまだに国際社会から認められていない亡命政府と600万人のチベット人の頂点に立つ、一介の仏教僧侶のことを心配するのだろうか? たぶん、ダライラマが外交官であり、ノーベル平和賞受賞者であり、非暴力の主導者であり、地球的な責任感という考えの唱道者であり、彼が、「われわれの共通の思いやリのある、人間の宗教」と呼んでいるものの偶像であるからであろう。

 わたしたちは現在、極端なパラドックスの時代に住んでいると言える。技術は大衆によりたくさんの情報を与えるが、彼らが目にする事態のまえ で、自分たちの弱さを痛感する。病人や傷ついた人々への介護はより洗練されてきているが、狂信者の残虐な行為はより暴力的に荒れ狂っている。われわれの環 境を改善させるための知識や機械装置のパワーは限界を知らないにもかかわらず、わたしたちの地球の破壊は容赦なく続いている。このような種々の絶望的な状 況の中で、ダライラマは、異次元の文明から、はるかな高地から、そして、非常時における静寂の、苦悩時における辛抱強い忍耐の、混乱時におけるユーモアの ある知性の、切迫した破滅に直面した状況のなかでの不屈の楽観主義の、生ける手本として、わたしたちの前に現れた。

ダライラマは1935年7月6日、チベット東北部にあるアムド地方(現在中国の領土の一部)の農家に9番目の子供として生まれた。2歳の時、偉大なる精神 的指導者、ボーディサットヴァの14番目の生まれ変わりとして認定された。16世紀に、この偉大な精神的指導者の三回目の転生のとき、モンゴル王によって ダライラマという称号を与えられ、1642年には、ダライラマ五世は、チベットの政治と宗教の統合者の座に就いた。

 生まれ変わりの思想はチベットの社会では、非常に重要な役割を果たしている。仏教の僧侶が統治するチベットでは、正統的な支配者の地位は、特 定の氏族による世襲制度ではなく、輪廻転生思想による活仏制度によって決定されるからである。歴代のダライ・ラマは、チベットを、賢明に平和に300年以 上の間統治してきて、チベット人から深く敬われている。ダライラマは西洋のジャーナリストからgod-kingと呼ばれるときがあるが、これは間違ってい る。チベット人は、ダライラマの人間性、僧院における戒律の厳守、知的、霊的達成に絶対の信頼を寄せており、ダライ・ラマを僧侶の王と考えている。ダライ ラマの制度の誇るべき点の一つは、ダライ・ラマに選ばれた人間は、みんな貧しい家柄からの出身であり、あたかもプラトンが理想と考えた哲人王を養成するた めに考案されたかのような、厳格な規律の下で教育されたことである。チベット人は、悟りを開いて統治するために、その統治者に対して、高い基準を設定し た。

 私が、1960年代の初めのころ、ダライラマと初めて接触し出した時、 彼はインドの北西部のダラムサーラで5年目の亡命生活を送っており、 ちょうど29歳だった。ダライラマは現代世界の中へと歩み出し始めて いたが、その間も出家修行者として、仏教哲学や霊的修行の研鑽に いそしんでいた。彼は勇敢に亡命チベット人社会のための責任を引き 受けていた。そしてチベットを追い出された人たちが再び自分たちの 国へ戻ることができるよう世界中に働きかけていた。チベットは中国の 軍事占領下にあり抑圧されており、毛沢東の暴力的な政治的、文化的 革命によってもたらされた混乱の中で苦しんでおり、その間に、100万 人以上のチベット人が生命を失ったにもかかわらず、世界から無視さ れていた。

その当時、私はこのような出来事に全く注意を払っていなかった。 というのも、私は若すぎたし、僧侶になろうと一生懸命だったからで ある。私はその当時、毎週法王のもとへと訪れて仏教について質問 した。そのとき、法王は私に西欧に関する事柄についてたずねてきた。 私は、カント、フロイド、ユング、ライヒ、アインシュタイン、ジェファソン、 トックビル、ウェーバーなどの西欧の思想家の思想を伝えるために、 新しいチベット語を作らなければならなかった。ダライラマは何事に関 しても、好奇心旺盛で、思慮深く、理解が早く、創造的であった。 私はかつて法王に、ダライラマとしての政治的役割についてたずねた。 法王は同胞の緊急の要望がなかったならば、自分は喜んでダライラマ としての政治的地位を降りて、研究と瞑想の生活を送るだろう、と語っ た。

 正式に僧侶として認められた後、私はアメリカの僧院に戻らなければ ならなかった。後に私が僧侶を辞めて在家の身分へともどるとき、法王 は残念がった。しかし、私が博士号の研究のためにダラムサーラに一 年間滞在するためにもどってきたとき、わたしたちは再び対話を開始し、 法王は私の博士論文のために協力してくれた。私は法王の哲学的思索 力が非常に鋭くなっていることを発見した。私がアメリカに帰っていた間、 猛烈に勉強したのだ。

 70年代は、わたしたちは8年間会うことはなかった。政治的理由に より、法王はアメリカを訪問できなかったからである。法王は4,5年 の間、断続的に隠遁生活に入り、タントラの瞑想の技法をマスターし、 定期的に政治の任務をこなしていた。法王は、中国がソ連に対抗す るためにニクソン・毛同盟を結び国際社会で台頭してきたことにも めげず、機会あるごとに、チベットの窮状について訴えた。が、一般的 に言えば、世界の人たちにとって、チベット人の自由を求める闘いは、 挫折した運動の範疇に入るものであった。

1979年、法王に対するアメリカ訪問禁止措置はついに解除された。 私がその年、法王に会ったとき、法王の霊的オーラの新たな強烈さ、 仏教修行によりもたらされた瞑想技術の進歩に驚かされた。私は法王 のチベットの自由を求める闘いにかける情熱に力強く反応している自分 自身を発見した。法王の楽観主義は、私に、不正義を正したり、無慈悲 極まりない心を和らげたり、絶望のどん底の状況を変えたりすることに は、遅すぎるということはないのだ、ということを教えてくれた。私はこの 状況に対して、どのような支援の方法があるのかをたずねた時、法王は、 私に、チベット仏教の文化の知識を広めたり、その保存のためのエネル ギーを喚起するために、アメリカにチベットハウスを設立するように熱心 に勧めてくれた。私はその年の秋、法王と一緒にインドへ戻り、一年間 のサバティカルを過ごし始め、その間、法王と三回目の対話を行った。 この対話において、私は法王の仏教やチベットの将来のみならず、地球 の将来の行方に対しての、新しい、深い洞察力と献身に感銘を受けた。 法王は地に足のついたユーモアや謙遜、好奇心や友情を保ち続けた。

80年代の初め、中国の胡耀邦首相はチベットを訪れ、毛沢東の破壊的政策 の影響を見て、明らかに動揺していることがうかがえた。胡は、抑圧的な政策 の一部をゆるめ、部分的に宗教や文化、そして外部の世界との交流を復活 させた。そしてチベット亡命政府と交渉を始めた。 このような中国側の政策の変化によて、チベットの地位やチベット人の生活の 本当に改善がなされるのではないかという希望が芽生えてきた。しかし、 これらの希望は、Deng Xiaoping が胡耀邦首相を解任し、ダライラマとの交渉 を打ち切り、過去の破壊的政策を再び始めたとき、潰えてしまった。

 ダライラマはこのような中国側の変化にもめげず、世界中の大陸の国々を 訪れ続けた。80年代の中ごろ、わたしたちは、ダライラマの周囲に広がって いた影響力のある友人たちの援助により、ニューヨークにチベットハウスを 設立することができた。1990-91年には、A Year of Tibetが宣言され、35ヶ国 でイベントが開催された。ニューヨークの続いて、チベットハウスは、メキシコ シティー、ロンドン、パリ、ミラノ、東京、その他の都市にも設立された。 ノルウェーのノーベル委員会は、1989年の平和賞をダライラマに決定した。 ベルリンの壁は崩れ、多くのソビエト陣営の衛星国は自主決定権を獲得した。 チベット問題解決のための希望は再び芽生えはじめた。

 しかし、それ以後の年は、チベット人にとって、失望の連続であった。 90年代の初め、チベットの新しい夜明けが、喪失と恐怖の長い夜に代わって、 始まるのではないかと思われた。賢明な、少なくとも、プラグマティックな政策が、 共産主義帝国の廃墟から、実施されるのではないかという期待を抱かせた。 しかし、Dengは頑固に、ダライラマへの攻撃や、チベット文化の弾圧を再開し、 チベット高原の集中的な植民地化や工業化を押し進めた。Dengの後継者も 同じように、チベット特有のアイデンティティーを圧迫し続けた。そして、再び、 共産主義者による思想改造を、僧院や尼僧院に対して実施し、抵抗する僧院 や尼僧院は閉鎖した。中国の権力者たちは、自分たちが勝手にパンチェンラマ の転生者を選定したが、ダライラマの同意がなければ、チベット人はそんなものは 認めることはあり得ないということを知らなかった。また、中国政府は、ダライラマ の写真を押収したり、あらゆる機会に法王を非難し、すべての対話を断ちきった。

 ダライラマはいつも明るく振る舞い、希望を絶やさず、以前と同様に、いつでも 対話を行う用意が出来ていた。重要な進展は、法王が初めて台湾を訪問し、世界 中の人々がダライラマは中国人の間で、いかに人気があるかを知ったとき、やって きた。

ダライラマ法王は世界で最も偉大な、非暴力と思いやりの生きた手本であり、 どんな信仰をもっている人間でも、法王から学ぶことが出来る。法王は誰であれ 強制的に仏教へ改宗させようとはされないし、異宗教間の寛容を説いている。 法王はガンディーやキング牧師の系譜に連なる霊的な活動家である。 法王の第一の責任はチベット人を守ることであるが、中国人(その指導者も含む) の霊的向上のために貢献する用意もできている。 法王は、説法や著書を通して、世界中の仏教徒や他の宗教を信じる人々の精神的 向上のために貢献し、魂を鼓舞している。

 ダライラマ法王は、来るべき世紀を、次の現在予想通りに起こっている四つの 変化のために、希望に満ち溢れた世紀になるだろうと予想している。 まず第一に、全世界的な戦争に対する嫌悪と、平和の力に対する確信へと人類 の意識が変わっていること。第二に、巨大なシステムに対する信仰の消滅と、自由 な創造的な個人を尊重する考えの復活。第三に、物質的科学に対する盲目的な 信仰から精神科学も認めていこうという意識の変化。そして、第四番目として、 技術にたいする絶対の信頼の崩壊と、地球上のすべての生き物が健康で幸せな 生活を送ることができ、環境のバランスを維持するために、自然の力を見直そう という人類の意識の変化。 20世紀の最も偉大な人間の一人として、ダライラマ法王は、人類は21世紀に、その 最も高い可能性に気付くだろうという力強いヴィジョンを発信している。 この意味において、ダライラマ法王の役割は、チベット人やモンゴル人のための Dalai Lama から、Dalai Lama の本来の意味である、全世界のための、大海の 師へと、拡大しているのだ。

 ◆Robert A.F. Thurman heads the Center for Buddhist Studies at Columbia University