クロスネット局(クロスネットきょく)とは、地上系による放送を行う放送局であって、複数のネットワークに加盟しているものである。
概要
クロスネット局は複数の系列のネットワークセールス枠を放送する編成をとるため、必然的にローカルセールス枠(自社制作番組および、系列内外の他放送局からの番組購入)はフルネット局に比べて減少する。なお、フルネット局でも民放の立地が少ない地域では、自系列のローカルセールス枠を利用して他系列のネットワークセールス枠の番組を放送することが比較的多い。
テレビに関しては、1960年代後半から関東・近畿広域圏などを除く各地でUHFによる民放の第2局が開局されるようになり、クロスネットでの編成を行う放送局が増加した。また、1980年代に入って、それまでフルネット局が少なかったANN系列局が続々開局したため、クロスネットを解消する局が増加した。なお、新局の開局にあたって、多くの地域では視聴者保護の観点から一部人気番組を新たに開局した系列局ではなく、かつて放送していた系列外の放送局で放送する事例が多くあった。
TXNでは、かつては中京テレビ・KBS京都・毎日放送・サンテレビなどがクロスネットを行っていたが、現在はいずれも行っていない(ただし、ネットワークでの協定などで禁止されているわけではない)。
なお、クロスネットは排他協定を設けているJNNを除き認められている。このほか、NHKは全国単一組織のためクロスネット局が存在しない。
平成新局においてはクロスネット局が存在しないが、かつてはTXN以外の系列外ネット局の番組を編成する局もあった。また、多くの地域ではTXN系列がないため、各局では番組販売扱いでネット受けを行い放送している。
クロスネット局・トリプルネット局・オープンネット局を全部合わせて“プルラル(複数)ネット局”と言う(“プルラル”は“シングル(単数)”の逆。
具体例
福島テレビおよびテレビ山口の事例
JNNは排他協定によりクロスネットが禁止されている。以前はJNNの報道番組以外に関してはクロスネットが認められていたため、報道についてはJNNに加盟しつつ、それ以外の番組(ドラマやバラエティなど)についてはFNSを中心とした編成をとっていたことがあった。
青森テレビの事例
開局からしばらくの間はニュース系列のみANNに加盟し、報道番組以外はTBS系列(JNN)を中心に編成することを計画していた。しかし、排他協定との整合性や、ANNに加盟する際のネット保証金などの事情により、正式なJNNへの加盟はなされなかった。また、実質的には報道およびその他の番組ともANNとJNNのクロスネットでの編成がとられていた。しかしながら、一般番組は当時人気番組が多かったJNN(TBS)の番組が占めていた。
南海放送の事例
JNNは番組供給系列とニュース系列が別組織となっていないため正式なクロスネットとは言えないが、報道番組については番組単位でのネット受けを行うことが認められていた。ゴールデンタイム・プライムタイムなどにもTBS系列同時ネット枠が設けられていた時期があるなど、番組供給に限っては事実上のクロスネット状態であり、1992年10月のあいテレビ開局までJNNを準系列局扱いとしていた。
日本海テレビの事例
日本海テレビはゴールデンタイム・プライムタイムなどでテレビ朝日系列枠が設けられ、昼の『ANNニュース(→ANNニュースライナー)』も放送された。また、山陰地方での『モーニングショー』と平日正午枠(『アフタヌーンショー』~『欽どこTV!!』)は日本海テレビと山陰放送(TBS系列)の2局同時放送であった。それで1989年9月、テレビ朝日系列の番組の大半を全て打ち切り、同年10月からは現在のNNNマストバイ局として、日本海テレビからあふれたテレ朝番組を山陰放送・山陰中央テレビに移行させた。
現在クロスネットの福井放送よりもテレビ朝日系同時ネット率が高かった反面、当時ほぼ同じ人口規模の地方部では2局体制が主流であった時代(1970,80年代)において3局体制であったことから、一部の非マストバイフルネット局より、日本テレビ系列内からの番組購入率も高かった。
メリットとデメリット
複数のネットワークに加盟する事によって、編成のさいの選択肢(放映番組の選定)が広がる可能性が高まる。また、複数のネットワークセールス枠を活用することができるため、結果的にローカルセールス枠(自社制作番組や番販購入枠)が減少し、経営が安定しやすい。
なお、ある地域にネットワーク系列局がない場合、本来であればそのネットワークの番組は放送されないはずだが、クロスネット局の編成によって番組を差し替えることで視聴が可能となる番組もある(当然ながら、同時間帯に放送する別のネットワークの番組は、放送されないか時差放送のいずれかとなる)。
長時間にわたる特別番組の事例
『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』(日本テレビ系列)や『FNSの日』(フジテレビ系列)など長時間にわたる特別番組については、放送開始から終了までの全て同時に放送しないことが多いほか、録画による時差放送を行うこともある。ここでは前者の番組について、参加するクロスネット局および他のネットワーク系列のフルネット(マストバイ)局の事例を解説する(いずれも「参加局」として名を連ねており、実際に募金の受付などのチャリティー活動を行っている)。
日本テレビ系列を含むクロスネット局であるテレビ大分およびテレビ宮崎では、一部のパートが時差放送または放送されないことがある。また、福井放送でも、日曜日昼前のANNの報道番組などを放送する編成をとるため中断(飛び降り)する。なお、かつては他の非マストバイ局でも同じような事例も散見されたが、近年は中断をしない編成をとるようになっている。
日本テレビ系列局がない沖縄県では、フジテレビ系列(フルネット局)の沖縄テレビが参加しており、ローカルセールス枠を同番組に充てる編成を行っている。一例として、エンディングは翌日(月曜日)未明にフジテレビ系列のネットワークセールス番組が終了した後に時差放送している。
クロスネット局の一覧
中波放送
全てJRN/NRN加盟
北海道・東北地区
北海道放送(HBCラジオ)
青森放送
IBC岩手放送
東北放送
秋田放送
山形放送
ラジオ福島
中部地区
新潟放送
北日本放送
北陸放送
福井放送
山梨放送
信越放送
静岡放送
近畿地区
毎日放送(MBSラジオ)
朝日放送(ABCラジオ)
和歌山放送
中国・四国地区
山陰放送
山陽放送
中国放送
山口放送
四国放送
西日本放送
南海放送
高知放送
九州地区
長崎放送
(NBCラジオ佐賀)
熊本放送
大分放送
宮崎放送
南日本放送
テレビジョン放送
括弧内の系列名は、放送局と系列の関係性が強い順に表記している。
福井放送(NNN-NNS/ANN)※右の1系列で放送される番組は福井テレビでも放送される。
テレビ大分(FNN-FNS/NNN-NNS)※両系列で放送される1週間の全ての時間は両系列によって異なる場合がある。またこの両系列で放送される一部の番組は大分放送でも放送される。
テレビ宮崎(FNN-FNS/NNN/ANN)※右の2系列で放送される番組は宮崎放送でも放送される。
クロスネット局は、「台風のニュースの中継」は、別々の映像を中継するのだろうか?素朴な疑問。



