MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

<9-2>キーワード(1):PositionとInterst(続)

2005-04-12 | 第二部:交渉ってどう考えたらいいの?
何が問題なのでしょうか?


問題は、CさんもDさんも「一個X円」という話に固執していることです。

このケースでは、Cさんは「できるだけ安い値段で買う」というInterest(願望)を実現するために、「一個47円50銭」というPosition(具体的提案)をとっています。
一方でDさんも、「できるだけ高い値段で売る」というInterest(願望)を実現するために「一個50円」というPosition(具体的提案)を取っているわけです。
言い換えれば、お互いが「一個X円」という両立しないPositionに固執しているため、どちらかが屈服しない限り終わらない手詰まり状態になっているのです。

では、どうすれば道が開けるのでしょうか?

カギは、Positionではなく、CさんDさんお互いのInterestに注目することです。
このケースで言えば、本来(Cさんだけでなく)Dさんも価格以外のInterestを持っているはずです。
例えば、「出来るだけ多くの数量を受注したい」とか、「納期にできるだけ余裕をみて欲しい」とか、「部品在庫は発注側で負担して欲しい」など、考えていけばいくつもの要素が関連しているはずです。
これらのInterestのうち、ある部分をCさん側に有利に、そして他の部分をDさん側に有利にする案を考えることで、話し合いの余地はあるはずなのです(Interestの交換)。
納期の条件を例にとれば、Dさんにとっては工場のキャパシティ上納期に余裕を持つことが重要でも、Cさんにとってはドリルの在庫が十分あるので多少遅くてもかまわないかもしれません。
他にも来年発売される新商品などは、Dさんにとっても大型受注につながる魅力的なネタなので、そうした共通利害を見つけることで協力する余地も十分あるでしょう(Interestの共有)。

このようにPositionでなくInterestに着目することで、お互いにとってよりうまみがあり合意しやすいアイデアが生まれてきます。
また自分のInterestが何なのかきちんと把握しておけば、例えば話し合いの中で急に納期の条件が出てきても、そこでの譲歩が自分のInterestにどう影響するかすぐに判断できます。
さらに、相手のInterestが分かれば、その中から自分のInterestに差し障りない部分を譲歩した提案をすることで、話をまとめるのがぐっと簡単になるのです。

最後に、Interestをうまく使うポイントを3つ挙げておきましょう。
概念を理解することが第一歩ですが、以下のコツをつかむことでさらに交渉を上手に進めることができます。


1. 事前に、自分と相手のInterestを出来る限り把握しておく

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」です。
自分のものはとにかく書き出し、相手のものは情報収集と想像から考えておきます。
用意できた項目が多ければ多いほど交渉で有利になるので、なるべく数多く網羅的に準備すべきです。

2. 交渉中、相手のInterestを引き出す

相手側の本当の本音は交渉で探ってみないと分からないので、交渉中はこの部分の情報収集に神経を集中すべきです。
具体的な手としては、こちらの仮説をぶつけて反応をみたり、相手の提案に理由を尋ねることが有効です。
今回のケースで言えば、Cさんは「もし代わりに納期を少し遅くしてもいいと言ったら、そちらにとってもいい話だと思うんですが」とか、「どうして50円で決まりなんですか?どこの工場も数量や納期によって値段に幅がありますよね」と話をふればいいわけです。
他にも、相手に率直にInterestを聞いてしまう方法も可能です。

3. 交渉中、自分の側からInterestの一部を見せる

こちらが多少譲歩してもいい項目がある場合、それをエサに相手の内情を探るのも有効です。
今回のケースなら、Cさんは「自分は新任なので一番見えやすい、価格の部分でとにかく手柄が欲しい。価格さえ取れれば納期など他の条件は少しフレキシブルにできますよ」と言えるでしょう。
こちらがある程度情報を出せば、相手も反応せざるを得ず、結局同レベルの情報を出さざるを得ないプレッシャーがかかるものです。


次回は、引き続きキーワード編の第二回として「BATNA」について説明します。

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