そして第三に、スワップ法という手法で残る選択肢を個別に比較していきます。
残る選択肢は下の3つです。
・仕事A:時給980円、週4回以上、シフト時間は自由、近くて通いやすい
・仕事B:時給1,300円、週3回、シフト時間は自由、遠くて通いにくい
・仕事E:時給1,200円、週3回、シフト時間は夜勤、遠さは中ぐらい
スワップ法とは、「ある要素を同じ条件に変更するとしたら、それと引き換えに他の要素でどの位補正値をつけるか」を考える方法です。
例えば、仕事BとEでは「時給」と「遠さ」の優劣が食い違っています。
仕事Bは時給が高いが、仕事Eはより家に近い、というねじれ状態です。
このとき、仮に仕事Eの「遠さ」が仕事Bと同じくらいだとしたら、どの位時給をもらえば見合うか、を判断するのです。
例えば、仕事Eが仕事Bと同じ位、通勤時間がかかったとしたら。
往復一日30分余計にかかるとしたら、拘束時間が30分長いのと同じです。
とすると、一日に時給1,200円×(30分/60分)=600円くらい損がありそうです。
でも、その間電車で本でも読んでいれば良いので、バイトそのものほど拘束はされません。
なので、例えば600円×80%(仮)=480円、くらいの価値になるかも知れません。
一日のバイト時間が仮に4時間とすると、480円÷4時間=120円が時給換算です。
この場合は、以下を比較するのが一つの合理的な計算です。
・仕事B:時給1,300円、通勤は遠い
・仕事E(補正):時給1,200+120=1,320円、通勤はBと同じく遠いよう補正
こうなると、「遠さ」の差は無視できるので、換算した時給を比べ良い方を選べます。
そうすれば、仕事Bが除外できるので、あとは残る仕事Aとこの仕事Eを同じように比較します。
・仕事A:時給980円、週4回以上、シフト時間は自由、近くて通いやすい
・仕事E:時給1,200円、週3回、シフト時間は夜勤、遠さは中ぐらい
ここでは、仕事Aの良さ(週4回でき、時間が自由で、近い)が時給の低さをカバーできるかどうかを判断すればよいのです。
仮に「近さ」を仕事Eと同じになるよう補正すると、通勤時間が短い仕事Aの時給が1,050円相当だとします。
(方法は先ほどと同じです)
すると、「近さ」は同じなのであとは以下を比較します。
・仕事A(補正):時給1,050円(補正)、週4回、シフト時間は自由
・仕事E:時給1,200円、週3回、シフト時間は夜勤
仕事Aで週3回しかできない選択肢があるとしたら、時給いくらなら自分にとって等価か。
仕事Eでシフト時間が自由な選択肢があるとしたら、時給いくらなら等価か。
こうして、判断要素を一つずつ同じに補正して消していきます。
このような方法が、イーブンスワップ法です。
「質的に違うものは、それぞれ良さがあって比べられない」。
日常ではそう考えがちですし、あながちそれも間違いではありません。
しかし交渉の場で、最前の選択肢を決めなければならない時には、こうした強制的に決める方法も役に立ちます。
何が自分にとって最善の選択肢か分かっていないと、たくさん合意案を出しても、どれを目指すべきか交渉戦略が立たないからです。
最後に、このような手法にはいくつかコツがあります。
1.簡単なスワップから先に考える
判断材料を減らして単純化することを優先します。
要素が減れば減るほど問題はシンプルになります。
2.スワップに集中する
「そもそも時給とシフトの自由さのどちらが自分にとってどの位重要なのか」といった、抽象的な難しい問いには入らない方が安全です。
交渉の場では、具体的な数字や比較材料を用いて順位をつけることを優先すべきです。
3.情報収集を続ける
案を比較する段階においても、情報は交渉の最重要資源です。
案の価値が自分にとって本当はどうなのか、調べて精査し続ける姿勢は重要です。
こうした手法は無理やり合理的な判断を作っているところがあるので、不自然に感じられるところもあります。
しかし、交渉はお互いを高め合う哲学論争ではないので、無理にでも合理的な最適解を作るとしたらこうだ、という前提理解を持つことが大切になるのです。
(この回終わり)
残る選択肢は下の3つです。
・仕事A:時給980円、週4回以上、シフト時間は自由、近くて通いやすい
・仕事B:時給1,300円、週3回、シフト時間は自由、遠くて通いにくい
・仕事E:時給1,200円、週3回、シフト時間は夜勤、遠さは中ぐらい
スワップ法とは、「ある要素を同じ条件に変更するとしたら、それと引き換えに他の要素でどの位補正値をつけるか」を考える方法です。
例えば、仕事BとEでは「時給」と「遠さ」の優劣が食い違っています。
仕事Bは時給が高いが、仕事Eはより家に近い、というねじれ状態です。
このとき、仮に仕事Eの「遠さ」が仕事Bと同じくらいだとしたら、どの位時給をもらえば見合うか、を判断するのです。
例えば、仕事Eが仕事Bと同じ位、通勤時間がかかったとしたら。
往復一日30分余計にかかるとしたら、拘束時間が30分長いのと同じです。
とすると、一日に時給1,200円×(30分/60分)=600円くらい損がありそうです。
でも、その間電車で本でも読んでいれば良いので、バイトそのものほど拘束はされません。
なので、例えば600円×80%(仮)=480円、くらいの価値になるかも知れません。
一日のバイト時間が仮に4時間とすると、480円÷4時間=120円が時給換算です。
この場合は、以下を比較するのが一つの合理的な計算です。
・仕事B:時給1,300円、通勤は遠い
・仕事E(補正):時給1,200+120=1,320円、通勤はBと同じく遠いよう補正
こうなると、「遠さ」の差は無視できるので、換算した時給を比べ良い方を選べます。
そうすれば、仕事Bが除外できるので、あとは残る仕事Aとこの仕事Eを同じように比較します。
・仕事A:時給980円、週4回以上、シフト時間は自由、近くて通いやすい
・仕事E:時給1,200円、週3回、シフト時間は夜勤、遠さは中ぐらい
ここでは、仕事Aの良さ(週4回でき、時間が自由で、近い)が時給の低さをカバーできるかどうかを判断すればよいのです。
仮に「近さ」を仕事Eと同じになるよう補正すると、通勤時間が短い仕事Aの時給が1,050円相当だとします。
(方法は先ほどと同じです)
すると、「近さ」は同じなのであとは以下を比較します。
・仕事A(補正):時給1,050円(補正)、週4回、シフト時間は自由
・仕事E:時給1,200円、週3回、シフト時間は夜勤
仕事Aで週3回しかできない選択肢があるとしたら、時給いくらなら自分にとって等価か。
仕事Eでシフト時間が自由な選択肢があるとしたら、時給いくらなら等価か。
こうして、判断要素を一つずつ同じに補正して消していきます。
このような方法が、イーブンスワップ法です。
「質的に違うものは、それぞれ良さがあって比べられない」。
日常ではそう考えがちですし、あながちそれも間違いではありません。
しかし交渉の場で、最前の選択肢を決めなければならない時には、こうした強制的に決める方法も役に立ちます。
何が自分にとって最善の選択肢か分かっていないと、たくさん合意案を出しても、どれを目指すべきか交渉戦略が立たないからです。
最後に、このような手法にはいくつかコツがあります。
1.簡単なスワップから先に考える
判断材料を減らして単純化することを優先します。
要素が減れば減るほど問題はシンプルになります。
2.スワップに集中する
「そもそも時給とシフトの自由さのどちらが自分にとってどの位重要なのか」といった、抽象的な難しい問いには入らない方が安全です。
交渉の場では、具体的な数字や比較材料を用いて順位をつけることを優先すべきです。
3.情報収集を続ける
案を比較する段階においても、情報は交渉の最重要資源です。
案の価値が自分にとって本当はどうなのか、調べて精査し続ける姿勢は重要です。
こうした手法は無理やり合理的な判断を作っているところがあるので、不自然に感じられるところもあります。
しかし、交渉はお互いを高め合う哲学論争ではないので、無理にでも合理的な最適解を作るとしたらこうだ、という前提理解を持つことが大切になるのです。
(この回終わり)
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