MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

<1-1>「交渉」ってがめつい感じで嫌なんだけど…

2005-02-25 | 第一部:そもそも「交渉」ってなに?
皆さんは「交渉」とか「交渉術」と聞くと、どんなイメージがあるでしょうか?

筆者が「交渉術」なるものを初めて意識したのは、MBAもコースなかばを向かえて、選択科目を選ぶ締め切り間際のことでした。
欧米のMBAではどこでもそうですが、コースの前半は必修科目として経営の基本となる科目(マーケティング、ファイナンスなど)が用意され、その後各自の関心に従って自由に好きなものを選べる選択科目が始まります。「やっと自分の好きな授業が選べるぞ」、と開放的な気分に浸りながら選択科目のリストをめくっていくと、リストの中で『交渉分析』なる講座が目に付きました。

-「交渉」ってがめつい感じで嫌なんだけど…

当時の筆者は講座名に何となく惹かれつつも、そう感じました。たしかに交渉術がうまくなれば何となく便利そうだし、何よりいろんな仕事で役立ちそうです。

しかしどうも「交渉」という言葉には、「少しでも自分の取り分を多くしようと巧言を弄し、相手を脅し、なだめすかす」ようなイメージがあってどうもしっくり来ません。
「交渉がものすごくうまいヒト」とか、「プロの交渉人」と言われると、何となくそんなヒトは信用できないし友達になりたくない気がしていました。それにプロの交渉人でもないのに「交渉」なんて実際にいつやるんでしょうか。自分にとって身近な「交渉」というと、例えば映画の『交渉人』あたりでしょうか。一昔前に公開されたサミュエル・ジャクソン主演のハリウッド映画ですが、そこでは「交渉人」は人質を取って立てこもるヤバい犯罪者相手に生きるか死ぬかのネゴシエーションをして生計を立てています。いくらなんでもそんな厳しい状況にはなかなか遭遇しないし、そんなのを闘うのはつらいなあ、と思うと腰が引けてきます。

ところが選択科目の締め切りまでもう時間が無い。他にもそれほど面白そうな科目が無い。それに何より、少し内容に違和感を感じる位な方があれこれ考えさせられるのでかえって勉強した後の成果が大きいのではないか。そんな風に考えて交渉の選択科目を選んだのが、交渉を勉強し始めたきっかけでした。

さて、授業が始まってみると周りとのギャップに驚きます。同じ授業を取っていた欧米やインドから来ているMBA学生の多くは、既に自分なりの交渉スタイルや、暗黙のうちにある交渉の″常識″を最初から持っているのでした。要は、実際に交渉の実習をやってみると自分だけ周りから″浮いて″しまうのです。

これはまずい、何かがおかしいと悪戦苦闘するうちに、周りと差があるのは小手先のテクニックだけでなく、交渉に対する理解(交渉ってそもそも何なのか、交渉が″うまい″ってどんな意味なのか)そのものであると思い至りました。
勿論ビジネススクールでのその講義はテクニックを扱うものでもありましたが、講師の提唱する主旨もHow(交渉をどうやるのか)よりはむしろWhat(交渉とは何なのか)から出発したものだった気がします。頭を冷やし、自分の中にある固まった″常識″を新しいものに入れ替えることで、少しずつ周りのやっていることが理解できるようになって行きました。試行錯誤の結果、講義の終盤にはどうにか周囲についていけるようになり、これをきっかけに筆者の中で交渉に対する興味がふくらんでいったのです。
(第一回続く)

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