MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

<31-1>よい合意案を考え付くにはどうしたらいいの?

2006-06-12 | 第三部:実戦で交渉に勝つコツは?
前回から協調的な交渉についてのシリーズに入りました。
まず前回は、そもそも協調的とはどういう意味かを考えて見ました。
今回はそうした協調的な交渉の流れの中で重要なポイントの一つとなる、良い合意案を考える方法を考えてみたいと思います。

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交渉のクライマックスは、なんと言っても最後の落とし所をどこにするかの駆け引きです。
いくつか浮かび上がってきた合意案の候補のうち、結局のところどれで落ち着くのか。
この部分で交渉の結果が決まるといっても過言ではありません。
ということは、そもそもどんな合意案を考え出し、交渉の場で提案できるかもまた、その前提として非常に重要なスキルの一つです。

合意案を考えるプロセスは非常にクリエイティブで、柔軟な発想があればあるほど、幅広く効果的に利害を調整できる案が生まれます。
どうすればクリエイティブになれるか、といっても簡単な道はありませんが、少なくとも交渉で求められる創造性の範囲を理解しておくことで、素早い頭の使い方が可能になるでしょう。

そうした意味で、良い合意案(options)のパターンにはどんなものがあり得るのかを理解しておくことが重要です。
交渉論の世界では、典型的な合意案作りのパターンが5つあります。
どれも問題自体を何らかの形で新たに定義しなおすことで、双方にとって効果的な合意案を生み出しています。
順に一つずつ見ていきましょう。


(1) パイを拡大する

『ハーバード流Yesといわせる交渉術』などでおなじみのアプローチです。
このアプローチでは、前提として、多くの交渉が限られた資源の奪い合いに陥るせいでうまくいかないと考えます。
そこでお互いが分け合うパイ自体を広げる方策を協力して考え出せば、どちらの取り分も増えてお互いトクをする、というわけです。

ここで重要なことは、パイを広げる際に互いのホンネ(interest)をさらけ出しあう必要はない、ということです。
単純に、どうしたら元のパイが広がるかだけを話し合い、過度な情報開示のリスクをなくさないと、パイを広げること自体の議論が十分にできません。
しかし翻って言えば、パイが単純に広がるだけでは利害(interest)が満たされない交渉の場合、この方法だけで問題を解決することは困難でしょう。

(第31回続く)

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