掲題の本を読みました。
(橋爪大三郎、洋泉社)
地球温暖化問題の政治的構造と、日本が世界で果たすべき役割を論じた提言的な書。
「炭素会計」は著者の提案の骨子のひとつになっています。
かなり分かりやすく、非常に興味深く読みました。
「炭素会計」というのは、企業もそうですが市民一人ひとりの活動レベルまで排出CO2を明確化し、個々がトータルで排出した総量を計測し、排出量が多い者に金銭負担(負のインセンティブ)を課すことで排出総量を抑制する仕組み。
統制経済の一手法です。
それだけ聞くと日本の世論からするとラディカルで非現実的に聞こえます。
そこまでやるの本末転倒じゃないの、といった感覚。
が、欧州を中心とした国際的な議論では、既に現在と大きく変わらない地球環境を保全するのであれば(例えば2100年に温度があと+2℃、等)
-数量としてCO2排出量を何トンにしなければならないか
-そのために税・規制等どのような仕組みが実効性があるか
を相当真剣に議論しています。
炭素会計もそのうちの一手法。
たしかにグローバルのコンサルティングテーマのトレンドを見ても、こうした
-サステイナビリティ(持続可能な成長)
はこの3年前くらいから極めてホットなトピックになっています。
要は、主要国の政府や大企業がこういうテーマに対してどう対応しようか、お金を払って外部の知恵も借りようとし始めているということです。
しかしこの本で一番面白かったのは最後の部分。
「温暖化問題」の細かい知識や動向を離れて、著者が
-日本人がこうした問題に取り組むのが下手なのはなぜか
を論じている部分です。
あ、なるほどなと共感しました。
つづめて書くとニュアンスをうまく伝えきれないと思うので是非実際に読んでいただければと思いますが、
-日本人の総組織人化:
日本には、本当の意味であるビジョンを目的とし、そのビジョンを共有する独立した個人で成立する「コミュニティ」はほとんどない。
組織に所属していること自体が自己目的化した、組織人ばかりになっている。
-組織人のマイオピア(近視眼):
会社でも何でも、「組織人」となってしまえば、組織にとっての短期的な(少なくとも自分が所属し続ける期間に)損につながる意思決定は極めて難しい。
まして長期の未来に対するビジョンが基盤にあって成立する集団がないので、長期にかかる難しい意思決定を行おうとする動機も無い。
忖度すると主張の中心はこんな感じでしょうか。
「組織人化」などは自分にとっても耳の痛い話だと思いますし、確かに今の日本には、ビジョンや構想力が社会のどの部分にも欠けているように感じます。
ビジネスに関する事象で言えば、アントレプレナー人材の裾野の狭さ、質のバラツキかもしれませんし、またそれ以上に、構想を掲げる人間や集団に対する社会的な嫌悪が根底にあるのかもしれません。
「起業家」に対する社会のイメージも、ホリエモン事件やITバブル後を経た今も、「必要悪」もしくは「玉石混交」のように、まだ決してポジティブなものではないと思いますし。
ちょっと論がはずれましたが、面白い本でした。
(橋爪大三郎、洋泉社)
地球温暖化問題の政治的構造と、日本が世界で果たすべき役割を論じた提言的な書。
「炭素会計」は著者の提案の骨子のひとつになっています。
かなり分かりやすく、非常に興味深く読みました。
「炭素会計」というのは、企業もそうですが市民一人ひとりの活動レベルまで排出CO2を明確化し、個々がトータルで排出した総量を計測し、排出量が多い者に金銭負担(負のインセンティブ)を課すことで排出総量を抑制する仕組み。
統制経済の一手法です。
それだけ聞くと日本の世論からするとラディカルで非現実的に聞こえます。
そこまでやるの本末転倒じゃないの、といった感覚。
が、欧州を中心とした国際的な議論では、既に現在と大きく変わらない地球環境を保全するのであれば(例えば2100年に温度があと+2℃、等)
-数量としてCO2排出量を何トンにしなければならないか
-そのために税・規制等どのような仕組みが実効性があるか
を相当真剣に議論しています。
炭素会計もそのうちの一手法。
たしかにグローバルのコンサルティングテーマのトレンドを見ても、こうした
-サステイナビリティ(持続可能な成長)
はこの3年前くらいから極めてホットなトピックになっています。
要は、主要国の政府や大企業がこういうテーマに対してどう対応しようか、お金を払って外部の知恵も借りようとし始めているということです。
しかしこの本で一番面白かったのは最後の部分。
「温暖化問題」の細かい知識や動向を離れて、著者が
-日本人がこうした問題に取り組むのが下手なのはなぜか
を論じている部分です。
あ、なるほどなと共感しました。
つづめて書くとニュアンスをうまく伝えきれないと思うので是非実際に読んでいただければと思いますが、
-日本人の総組織人化:
日本には、本当の意味であるビジョンを目的とし、そのビジョンを共有する独立した個人で成立する「コミュニティ」はほとんどない。
組織に所属していること自体が自己目的化した、組織人ばかりになっている。
-組織人のマイオピア(近視眼):
会社でも何でも、「組織人」となってしまえば、組織にとっての短期的な(少なくとも自分が所属し続ける期間に)損につながる意思決定は極めて難しい。
まして長期の未来に対するビジョンが基盤にあって成立する集団がないので、長期にかかる難しい意思決定を行おうとする動機も無い。
忖度すると主張の中心はこんな感じでしょうか。
「組織人化」などは自分にとっても耳の痛い話だと思いますし、確かに今の日本には、ビジョンや構想力が社会のどの部分にも欠けているように感じます。
ビジネスに関する事象で言えば、アントレプレナー人材の裾野の狭さ、質のバラツキかもしれませんし、またそれ以上に、構想を掲げる人間や集団に対する社会的な嫌悪が根底にあるのかもしれません。
「起業家」に対する社会のイメージも、ホリエモン事件やITバブル後を経た今も、「必要悪」もしくは「玉石混交」のように、まだ決してポジティブなものではないと思いますし。
ちょっと論がはずれましたが、面白い本でした。