まんが大国ニッポン。週刊誌や単行本はもちろん、ビジネス書から歴史まで、なんでもマンガで読むことができる。
こどもの頃、マンガによる伝記なんかも手にしたっけ。エジソン、ナイチンゲール、野口英世・・・。いまでは、身近なちょっとした有名人の半生記までマンガになっている。
そんなまんが文化は、アフリカにも押し寄せている。
アフリカでも偉人の生涯を描いた伝記がまんがとして出版されたことが話題となった。4月30日、コンゴ民主共和国の首都キンシャサで出版記念の催しが開かれた。
その伝記の主人公とは・・・パトリス・ルムンバ。 言わずと知れたコンゴ独立の父、そしてアフリカの英雄。アフリカ人の、アフリカ人によるアフリカ、コンゴ人による、真のコンゴ独立を訴えた彼のメッセージは、いまもアフリカ人の胸に深く刻まれる。
わずか3ヶ月で首相の地位を追われ、囚われの身となったルムンバ。最後の惨殺にまつわる真実は未だ明らかになっていない。
(詳しくはこちらの過去記事を!)
パトリス・ルムンバ~国家英雄を讃える日(2)、コンゴ民主共和国
そんなルムンバの生涯を描いたまんが伝記、タイトルは'Lumumba le Congolais'(コンゴ人のルムンバ)と名付けられた。

著者はコンゴ人のミッシェル・ンスンビ氏。もともとはコンゴ南東部のルブンバシ大学の教授である。「若者から熟年層まで、ルムンバの生き様と著作を知り、生涯に想いを馳せて欲しい。」
コンゴの英雄の生涯が、読みやすい形で人々に広がって行くことは歓迎すべきことといえる。
ところが、今回の出版には少し気になるところも。
この本の記念セレモニーで、コンゴ政府報道官のランベール・メンデ大臣は、こう述べた。「著者は作品を通じ、成熟した人物、政治での戦い、そしてコンゴ政治の闇を描いている。」
そしてこの作品のタイトルを命名したのはオバン・ミナク国民議会議長だ。「ルムンバに次ぐ国家主義者、ジョセフ・カビラ大統領の許しを得て、この本のタイトルを'Lumumba le Congolais'(コンゴ人のルムンバ)と名付けることにする。」
カビラ大統領の任期問題をめぐり混迷するコンゴ情勢。その中で現与党勢力が、国民の目をそらし、あるいはルムンバを利用して、必死に求心力を得ようとしているようにも見える。
そもそもルムンバはコンゴ国家に奉職しつつも、国家に地位を追われ、国家に惨殺された。その後国家により復権し、国家として英雄の地位に置かれてきた。惨殺を断行した人物、モブツ大統領自らが、彼の英雄化を図ったのだった。歴史の残酷である。
今回のまんが伝記の出版。国家が英雄を三たび都合よく援用しようとしているようにも見える。ルムンバの真の叫びは、現在の権力者たちに聞こえているのだろうか。
(おわり)
こどもの頃、マンガによる伝記なんかも手にしたっけ。エジソン、ナイチンゲール、野口英世・・・。いまでは、身近なちょっとした有名人の半生記までマンガになっている。
そんなまんが文化は、アフリカにも押し寄せている。
アフリカでも偉人の生涯を描いた伝記がまんがとして出版されたことが話題となった。4月30日、コンゴ民主共和国の首都キンシャサで出版記念の催しが開かれた。
その伝記の主人公とは・・・パトリス・ルムンバ。 言わずと知れたコンゴ独立の父、そしてアフリカの英雄。アフリカ人の、アフリカ人によるアフリカ、コンゴ人による、真のコンゴ独立を訴えた彼のメッセージは、いまもアフリカ人の胸に深く刻まれる。
わずか3ヶ月で首相の地位を追われ、囚われの身となったルムンバ。最後の惨殺にまつわる真実は未だ明らかになっていない。
(詳しくはこちらの過去記事を!)
パトリス・ルムンバ~国家英雄を讃える日(2)、コンゴ民主共和国
そんなルムンバの生涯を描いたまんが伝記、タイトルは'Lumumba le Congolais'(コンゴ人のルムンバ)と名付けられた。

著者はコンゴ人のミッシェル・ンスンビ氏。もともとはコンゴ南東部のルブンバシ大学の教授である。「若者から熟年層まで、ルムンバの生き様と著作を知り、生涯に想いを馳せて欲しい。」
コンゴの英雄の生涯が、読みやすい形で人々に広がって行くことは歓迎すべきことといえる。
ところが、今回の出版には少し気になるところも。
この本の記念セレモニーで、コンゴ政府報道官のランベール・メンデ大臣は、こう述べた。「著者は作品を通じ、成熟した人物、政治での戦い、そしてコンゴ政治の闇を描いている。」
そしてこの作品のタイトルを命名したのはオバン・ミナク国民議会議長だ。「ルムンバに次ぐ国家主義者、ジョセフ・カビラ大統領の許しを得て、この本のタイトルを'Lumumba le Congolais'(コンゴ人のルムンバ)と名付けることにする。」
カビラ大統領の任期問題をめぐり混迷するコンゴ情勢。その中で現与党勢力が、国民の目をそらし、あるいはルムンバを利用して、必死に求心力を得ようとしているようにも見える。
そもそもルムンバはコンゴ国家に奉職しつつも、国家に地位を追われ、国家に惨殺された。その後国家により復権し、国家として英雄の地位に置かれてきた。惨殺を断行した人物、モブツ大統領自らが、彼の英雄化を図ったのだった。歴史の残酷である。
今回のまんが伝記の出版。国家が英雄を三たび都合よく援用しようとしているようにも見える。ルムンバの真の叫びは、現在の権力者たちに聞こえているのだろうか。
(おわり)