1月10日(金)から14日(火)までの5日間、安倍総理大臣がアフリカ3カ国、コートジボワール、モザンビーク、エチオピアを歴訪する。小泉元首相が2006年にガーナ、エチオピアを訪問して以来、実に7年ぶりのことだ。そして日本時間の昨夜、首相はアビジャンに到着した。
西アフリカにとって非常に大きな意味を持つのは、日本の首相がアフリカの仏語圏を訪問するのはこれでたったの2カ国目、昨年に安倍首相がジブチを訪問していて以来のことだからだ。
しかしジブチはちょっと特殊だ。日本の国際貢献と広義のシーレーン防衛を目的に、自衛隊部隊が展開している。仏語圏アフリカメディアはこぞって、「仏軍に続き、日本も軍事基地(Base Militaire)開設」とセンセーショナルに報じたのを記憶している。仏語圏アフリカの多くは、ただの一時駐留というよりは、フランスのアフリカ軍駐留に見立てている。日本での自衛隊派遣論とはえらいギャップがある。
そう考えると、コートジボワールは、「平場」で選ばれた、首相が訪問する初めてのフランス語圏アフリカの国となる。この首相のアフリカ訪問、メディアはどんなふうに報道しているのだろうか?
■ 日本のメディア~ビジネス、時々中国
国内メディアの論調はすでに多くの方がご覧になっていると思う。総じて「ビジネス、時々TICAD、ところにより中国」といった感じ。
日本経済新聞:首相、自ら市場開拓旗振り 中東・アフリカ4カ国歴訪開始
NHK:首相 コートジボワールへ出発
毎日新聞:人材育成施設:エチオピアに第1号…首相歴訪、合意へ
産経新聞:日本のアフリカ外交牽制 「陰謀実現せず」と中国外務省
■西アフリカ、フランス語媒体は?
さて、待ち受けるアフリカ。初の首相訪問を控えた西アフリカの仏語圏メディアはどんなふうに報じているのだろうか?いくつかご紹介しよう。
■まずは仏語圏の通信社といえばAFP。
AFP通信、1月6日配信
日本の首相、アフリカ歴訪始動。コートジボワール、モザンビーク、エチオピアへ(※リンクなし)。
AFPの報道は早かった。すでに東京発、1月6日に配信されている。この記事が広く仏語圏ソースの元ネタになっているものと想像される。
記事では、今回の首相訪問はTICAD公約、歴訪中に対アフリカ支援総額600億円のコミットが行なわれると報道。またアフリカにおける中国との違いについて、日本側の認識に言及。「日本は単に資源を求めている訳ではない。」
■定番、フランス国際ラジオ放送(RFI)
東京特派員でおなじみのフレデリック・シャルル記者のレポート。アフリカの溢れる「機会」にインフラ投資、というトーン。一行、中国とのコンペティションのコンテクストの中で、といった表現も見られる。
■次にコートジボワール、ンボテも懇意にしている有力紙、フラテルニテ・マタン。一面で大々的に取り上げた。
‘Fratérnté Matin’(フラテルニテ・マタン)、1月8日朝刊第一面
安倍晋三、日本国内閣総理大臣「コートジボワール国家に心からの敬意」
アビジャン到着の前に、日本政府国家元首がFratérnté Matinに語る。
■コートジボワールのいわばNHK、RTI。
ラジオ・テレビ・コートジボワール(RTI)
安倍晋三 日本国内閣総理大臣「今日、最も成長が見られるのはアフリカだ」
国営メディアも日本がアフリカを成長の大陸として評価していることを強調、関係強化を模索する姿勢を報じた。記事の最後に、中国の王毅外相が四カ国に訪問することに触れているが、そこに価値判断を含むコメントは添えられていない。
■インターネットニュース、ネット媒体を意識した報道ぶりが特徴のこちら。
アビジャン・ネット(abidjan net)
安倍晋三、木曜日にアフリカ歴訪開始
安倍首相に日本という修飾語をつけずに報道。相応の知名度があると考えていいのだろうか。就任後発のアフリカ訪問とあるが、正確にはジプチをすでに訪問している。論調はほとんどRTIと変わらない。
■ついでに周辺国の報道も見ておこう。
■ブルキナファソ ル・ファソネット(Le faso.net)
安倍晋三、アビジャン、マプト、アジスが待つアフリカへ
コートジボワールの北に位置するブルキナファソ。コンパオレ大統領は1993年以降、TICAD皆勤賞だ(=長期政権を意味するので褒められることではないが・・・)。ここでも安倍首相の名前に「日本の」にあたる修飾語はない。
記事ではコートジボワールでは安倍首相はワタラ大統領との会談に加え、コンパオレ大統領を含むECOWAS加盟国とも会談、と報じている。またサヘル支援にも大きな貢献を果たしていると好意的な報道。
◆次に、直前に中国王毅外相が訪問したセネガル。
セネガル ル・ソレイユ(Le Soleil) 日本の首相がアフリカ外遊、アフリカとの協力に新風を
TICAD Vが民間投資の狼煙を上げたことをきっかけに記事は始まり、TICAD Vの公約、日本のアフリカの平和構築問題に深く支援を行なっていることを明記。アビジャンではマッキー・サル大統領を含むECOWAS首脳との会談が予定されていることに触れたほか、エチオピアでは政策スピーチが行なわれることが示唆されている。
◆アフリカ横断的トピックを扱う媒体、All Africaは?
All Africa
アフリカ:日本、アフリカとの関係再構築~安倍晋三歴訪で
今回の訪問目的を経済関係の強化に据え、多数の民間企業を引き連れてアフリカ入り。中国の王毅外相訪問と重なることを示唆。インフラ支援の強化、各国別の取り組みなどに触れ、記事を締めくくっている。
◆フランスの反応
AFP通信によれば、仏オランド大統領は日本のアフリカに対する支援を非常に高く評価、首相の訪問を歓迎した。これはマリ北部や中央アフリカで半ば孤独な戦いを強いられる仏。また財政難を理由に、EUの協力も滞りがちな昨今。フランスにとって、日本も大きなモラルサポートになっているということか。
◆中国の警戒、固唾をのむアフリカ
(セネガル、ル・クォティディアン(Le Quotidien)紙)
今回の報道で非常に特徴的なのは、アフリカメディアが日中関係に触れている点だ。おそらくこのような傾向は(私自身断片的には見てきたが)、今回初めて「鮮明」になったものと思う。
時折しも王毅外相が四カ国(エチオピア、ジブチ、ガーナ、セネガル)を訪問。この外相の年頭アフリカ外遊は、1990年代から一貫した定例行事。訪問時期は偶然の一致だが、メディアでは日本、中国の外交合戦の構図で捉えているものもある。
また、安倍首相の靖国神社参拝はフランスメディアでも興味を持って報じられたため、アフリカメディアでも一部取り上げられた。中国はこの突っ込みネタを外交カードとして使うのだろうか?
かくして首相のアフリカ歴訪。日本とアフリカの新たな関係を築くきっかけになるであろうか。注目されている。
西アフリカにとって非常に大きな意味を持つのは、日本の首相がアフリカの仏語圏を訪問するのはこれでたったの2カ国目、昨年に安倍首相がジブチを訪問していて以来のことだからだ。
しかしジブチはちょっと特殊だ。日本の国際貢献と広義のシーレーン防衛を目的に、自衛隊部隊が展開している。仏語圏アフリカメディアはこぞって、「仏軍に続き、日本も軍事基地(Base Militaire)開設」とセンセーショナルに報じたのを記憶している。仏語圏アフリカの多くは、ただの一時駐留というよりは、フランスのアフリカ軍駐留に見立てている。日本での自衛隊派遣論とはえらいギャップがある。
そう考えると、コートジボワールは、「平場」で選ばれた、首相が訪問する初めてのフランス語圏アフリカの国となる。この首相のアフリカ訪問、メディアはどんなふうに報道しているのだろうか?
■ 日本のメディア~ビジネス、時々中国
国内メディアの論調はすでに多くの方がご覧になっていると思う。総じて「ビジネス、時々TICAD、ところにより中国」といった感じ。
日本経済新聞:首相、自ら市場開拓旗振り 中東・アフリカ4カ国歴訪開始
NHK:首相 コートジボワールへ出発
毎日新聞:人材育成施設:エチオピアに第1号…首相歴訪、合意へ
産経新聞:日本のアフリカ外交牽制 「陰謀実現せず」と中国外務省
■西アフリカ、フランス語媒体は?
さて、待ち受けるアフリカ。初の首相訪問を控えた西アフリカの仏語圏メディアはどんなふうに報じているのだろうか?いくつかご紹介しよう。
■まずは仏語圏の通信社といえばAFP。
AFP通信、1月6日配信
日本の首相、アフリカ歴訪始動。コートジボワール、モザンビーク、エチオピアへ(※リンクなし)。
AFPの報道は早かった。すでに東京発、1月6日に配信されている。この記事が広く仏語圏ソースの元ネタになっているものと想像される。
記事では、今回の首相訪問はTICAD公約、歴訪中に対アフリカ支援総額600億円のコミットが行なわれると報道。またアフリカにおける中国との違いについて、日本側の認識に言及。「日本は単に資源を求めている訳ではない。」
■定番、フランス国際ラジオ放送(RFI)
東京特派員でおなじみのフレデリック・シャルル記者のレポート。アフリカの溢れる「機会」にインフラ投資、というトーン。一行、中国とのコンペティションのコンテクストの中で、といった表現も見られる。
■次にコートジボワール、ンボテも懇意にしている有力紙、フラテルニテ・マタン。一面で大々的に取り上げた。
‘Fratérnté Matin’(フラテルニテ・マタン)、1月8日朝刊第一面
安倍晋三、日本国内閣総理大臣「コートジボワール国家に心からの敬意」
アビジャン到着の前に、日本政府国家元首がFratérnté Matinに語る。
■コートジボワールのいわばNHK、RTI。
ラジオ・テレビ・コートジボワール(RTI)
安倍晋三 日本国内閣総理大臣「今日、最も成長が見られるのはアフリカだ」
国営メディアも日本がアフリカを成長の大陸として評価していることを強調、関係強化を模索する姿勢を報じた。記事の最後に、中国の王毅外相が四カ国に訪問することに触れているが、そこに価値判断を含むコメントは添えられていない。
■インターネットニュース、ネット媒体を意識した報道ぶりが特徴のこちら。
アビジャン・ネット(abidjan net)
安倍晋三、木曜日にアフリカ歴訪開始
安倍首相に日本という修飾語をつけずに報道。相応の知名度があると考えていいのだろうか。就任後発のアフリカ訪問とあるが、正確にはジプチをすでに訪問している。論調はほとんどRTIと変わらない。
■ついでに周辺国の報道も見ておこう。
■ブルキナファソ ル・ファソネット(Le faso.net)
安倍晋三、アビジャン、マプト、アジスが待つアフリカへ
コートジボワールの北に位置するブルキナファソ。コンパオレ大統領は1993年以降、TICAD皆勤賞だ(=長期政権を意味するので褒められることではないが・・・)。ここでも安倍首相の名前に「日本の」にあたる修飾語はない。
記事ではコートジボワールでは安倍首相はワタラ大統領との会談に加え、コンパオレ大統領を含むECOWAS加盟国とも会談、と報じている。またサヘル支援にも大きな貢献を果たしていると好意的な報道。
◆次に、直前に中国王毅外相が訪問したセネガル。
セネガル ル・ソレイユ(Le Soleil) 日本の首相がアフリカ外遊、アフリカとの協力に新風を
TICAD Vが民間投資の狼煙を上げたことをきっかけに記事は始まり、TICAD Vの公約、日本のアフリカの平和構築問題に深く支援を行なっていることを明記。アビジャンではマッキー・サル大統領を含むECOWAS首脳との会談が予定されていることに触れたほか、エチオピアでは政策スピーチが行なわれることが示唆されている。
◆アフリカ横断的トピックを扱う媒体、All Africaは?
All Africa
アフリカ:日本、アフリカとの関係再構築~安倍晋三歴訪で
今回の訪問目的を経済関係の強化に据え、多数の民間企業を引き連れてアフリカ入り。中国の王毅外相訪問と重なることを示唆。インフラ支援の強化、各国別の取り組みなどに触れ、記事を締めくくっている。
◆フランスの反応
AFP通信によれば、仏オランド大統領は日本のアフリカに対する支援を非常に高く評価、首相の訪問を歓迎した。これはマリ北部や中央アフリカで半ば孤独な戦いを強いられる仏。また財政難を理由に、EUの協力も滞りがちな昨今。フランスにとって、日本も大きなモラルサポートになっているということか。
◆中国の警戒、固唾をのむアフリカ
(セネガル、ル・クォティディアン(Le Quotidien)紙)
今回の報道で非常に特徴的なのは、アフリカメディアが日中関係に触れている点だ。おそらくこのような傾向は(私自身断片的には見てきたが)、今回初めて「鮮明」になったものと思う。
時折しも王毅外相が四カ国(エチオピア、ジブチ、ガーナ、セネガル)を訪問。この外相の年頭アフリカ外遊は、1990年代から一貫した定例行事。訪問時期は偶然の一致だが、メディアでは日本、中国の外交合戦の構図で捉えているものもある。
また、安倍首相の靖国神社参拝はフランスメディアでも興味を持って報じられたため、アフリカメディアでも一部取り上げられた。中国はこの突っ込みネタを外交カードとして使うのだろうか?
かくして首相のアフリカ歴訪。日本とアフリカの新たな関係を築くきっかけになるであろうか。注目されている。