
(公演の様子)
ワークショップとはいえ、冒頭で作品紹介をするわけでもなく、いきなり11人の男女が着席し朗読が始まった。2008年初演の作品だと後で分る。広島の原爆が生々しく入ってくる。痛ましい。そしてやはり痛ましい少年たちの結末。
若い男女の中には沖縄芝居や琉球舞踊で頑張っている嘉陽田朝裕さんもいた。哲学者の老人役で彼が中央に座する。なかなか演技も伴い、現代劇の朗読をこなしていた。他、現代劇に出演している若者が2、3人、しかし、残念なことに、朗読劇が終わってからワークショップに参加した若者達の名前も分らず、終わった。始まりと終わりに空虚感が漂った。栗山さんに「作品は何ですか」とお聴きした。井上ひさしです。と返ってきた。「彼らの名前を紹介したら良かったですのに」と話すと、「ワークショップですから」とのことだった。
ワークショップにしても、30~40人(?)ほどの方が観劇のため少し広めの練習室に来たのだ。最後に出演した方々の紹介があっても良かったし、演出家の栗山民也さんや企画した下島さんが挨拶しても良かった。出演者の名前が記載されたフライヤーの一枚もなかったのは残念である。出演した彼らの次のステップに興味があるし、つながりは無名性で終わりではないと思うのだがー。3~4日の演劇講座(リハ)の成果だから完璧ではない。スクリプトを見ながらの朗読である。演出が入っている。個々の声の演技、集団の見上げる素振り、グチャグチャになった新聞紙に砂がまかれる。倒れたり、立ち上がったり、集中レッスン・稽古に取り組んだ成果である。おそらく著名な演出家、栗山さんの生の声を拝聴したい観客席の方々もおられたに違いない。
大学の授業でインタビューのプロジェクトやスキット、スピーチなどをやるが、必ず発表者に名前を言ってもらう。発表する側と受容する者(観客席)とのつながりを大事にしているからである。
現代劇をほとんど見ない連れも物足りなさそうだった。学芸会でも出演者の名前は記載されているか発表するね。
「少年口伝隊一九四五」は、井上ひさし氏が広島の被爆者の姿を描いた、2008年初演の朗読劇です。
この台本に、ヒラノトシユキ氏による描きおろしイラストを添えて、小学生から読める戦争の物語として刊行します。
「少年口伝隊」は、原爆投下後、印刷機能を失った中国新聞社がニュースを口伝えで知らせる「口伝隊」を組織したという事実をもとに書かれた朗読劇です。広島の惨状と、その中で懸命に生き、死んでいく少年たちの姿が胸を打ちます。
井上氏が2010年に他界してからも、「少年口伝隊」は繰り返し公演されています。井上ひさしさんのメッセージを、子ども読者にも伝わりやすい形にした本書は、未来に残したい一冊です。
●あらすじ
1945年8月6日朝、米軍機が投下した原爆によって広島は壊滅した。広島の日治山のふもとに住む国民学校6年生の英彦、正夫、勝利の少年3人はかろうじて生き残ったものの、そろって家族を失った。3人は、新聞を発行できなくなった中国新聞社が急きょ組織した口伝隊に雇われ、ニュースを口頭で市民たちに伝える。
しかしニュースの内容を知って、少年たちは大人たちの変節ぶりに激しい怒りをおぼえる。また、アメリカが原爆の「効果」の調査団を送りこんでいると聞いて、英彦の頭の中はくやしさで煮えたぎる。
9月になると、巨大台風、やらに山津波と高潮が広島を襲い、勝利は水害で命を落とす。正夫も原爆症で死去。15年後、英彦も原爆症のため、20代の若さで世を去る。