Peace of Mind を求めて…

悲しいことがあっても、必ず新しい朝は来るのですよね

『青い鳥』 重松 清 著(新潮社)

2009-06-10 23:30:34 | 

重松清さんの『青い鳥』を読みました。

重松さんの「きよしこ」という作品を、以前読もうとしたけれど、そのときはなぜか心惹かれず、結局読み終えないまま古本屋へ売り飛ばしてしまった(!)…という申し訳ない過去があり…

重松さんの作品にはそれっきり手をつけていませんでした…

そんなとき…

重松清さんの作品が相次いで映画化されました…☆

「きみの友だち」(監督:廣木隆一)「青い鳥」(監督:中西健二)です…☆

2作品とも娘Tと一緒に観たのですが、どちらも胸を打つ真摯な作品で、親子共々感動し、観終わった後、深い余韻が残ったのでした…☆

原作も読んでみたいな~と思っていたら、娘Tも同じ思いだったのか、先日中学校の図書館で『青い鳥』を借りてきてくれました…☆
わ~!うれしい~!読みたかったのよ~!…とさっさと横取りし!(笑)、母が先に読ませてもらいました!

『青い鳥』には映画の原作になった作品も含めて8つの短編が収録されていて、どの作品にも村内先生が登場します。

村内先生は、吃音でうまくしゃべることができず、聞いているほうが息苦しくなるくらい激しくつっかえる、中学校の国語の先生です。生徒たちからも相手にされず心無い言葉をあびせられたりもします…

でも、集団生活の中で自分の居場所を見つけられず、心の中で助けを求めている子どもたちにとって村内先生は、静かに隣に座り、寄り添っていてくれる、「特別な」救いの存在なのです…「うまくしゃべれないから、たいせつなことしか言わない」先生なのです…

ハンカチ」…場面緘黙症で、いつもスカートのポケットに入れたハンカチを握りしめることで心を落ち着かせている女子生徒…
ひむりーる独唱」…担任教師をアーミーナイフで刺してしまい、少年鑑別所に入った後、元のクラスに戻ってきた男子生徒…(田舎の祖母の家で、カエルを殺し続けます…)
おまもり」…父親が、運悪く交通事故で相手女性を死なせてしまい、その罪を家族で背負って生きている女子生徒…
青い鳥」…いじめによる自殺未遂でクラスの男子生徒が転校し、いじめた側にいて、人を苦しめていることに気づかなかった自分の責任と向き合おうと苦しむ男子生徒…
静かな楽隊」…クラスを扇動して教師を休職にまで追い詰める女子生徒…その傍で、その息苦しさと痛みを感受し、苦しむ女子生徒…
拝啓ねずみ大王さま」…父親が電車に飛び込んで自殺して以来、「みんな」が大嫌いになってしまった男子生徒…
進路は北へ」…閉鎖的で陰湿ないじめがはびこる、名門女子大付属中学からそのまま付属高校へ進むことを拒否し、周囲の圧力に屈せず公立高校を受験しようとする女子生徒…
カッコウの卵」…カッコウの卵のように親から捨てられ、愛されることなく養護施設で育った少年と少女…

 8つの短編の中には、声には出せない助けを求めている子どもたちが出てきます…

そして、村内先生に出会い、「そばにいるよ」「ひとりぼっちじゃないんだよ」「間に合ってよかったなあ。会えてよかったなあ」…と言ってもらうことで救われていくのです…

中学校の生々しい現場で実際に子どもたちと毎日向き合っている先生方からみれば、きれいごとすぎる!と言われるのかもしれません…

でも、村内先生のような先生がいれば、思春期の…嫌悪したり憎んだり、ねたんだり追い詰められたり…そんな集団生活に息苦しさを感じている子どもたちの心がほっと安らぎ、本当に大切なことに気づき、自分を取り戻していけるのだろうな…

重松さんも少年時代に吃音に苦労されたとか…思春期の子どもたちの心情を描く、その手腕に感服した1冊でした。