Peace of Mind を求めて…

悲しいことがあっても、必ず新しい朝は来るのですよね

『ミリキタニの猫』(監督:リンダ・ハッテンドーフ)

2008-03-08 23:59:04 | 映画・テレビ

…というわけで(?)、金曜日の夜、再度『奈緒子』を観にシネマクレールへ出かけた私です!
やっぱり三浦春馬くんは最高ですね~☆ 無邪気な笑顔、シリアスな眼差し…そしてストイックな走り!! これからも応援するよ~!!

そしてそして土曜日は、楽しみにしていた『ミリキタニの猫』がやっと上映されるので、再びシネマクレールへ出かけました!
岡山での上映初日だったからか、開場間近にチケットを買った私の入場番号は22番!(これはかなりの入場者数かも! 通常、4、5人で観る事もよくあるので…)

ニューヨークの路上で、白い画用紙に向かって一心にペンを動かす老人…ジミー・ツトム・ミリキタニさん☆

カラフルなコートにベレー帽!路上生活をされているのに、おしゃれでかくしゃくとされていてたくましく、「おじいさん」なんて呼び方は全く似つかわしくないのです!

自分のことを「Grand Master」で「Pure Artist」だと自負しており、商業主義の芸術家じゃないぞ!といきまき、雪が舞う真冬もビニールで囲われただけのベンチで眠るミリキタニさん…そんな肉体的にも過酷な生活をしていながら、決してお金を恵んでもらったりせず(絵の代金として受け取るのみ)、崇高な生き方を貫いているのです…。

80歳を超えているのに、ペンを動かすその手つきは素早く、自信に満ちていて、休むことなく手を動かしては次々に色鮮やかで豊かなイメージの作品を生み出していきます…毎日毎日雨の日も風の日も、絵を描き続けてきたのでしょう…

自分は偉大な芸術家!と信じ、今日まで生き抜いてきたであろうその強靭な精神力はまた、若き日に4年間も、ツールレークの日系人強制収容所で過ごさねばならなかった理不尽さへの、やり場のない怒りにも裏打ちされているのです…

あの、世界が大きく変わった2001年9月11日…人が姿を消したニューヨークの路上で、砂埃に咳き込みながら絵を描き続けていたミリキタニさんを、監督のリンダさんが「うちへ来ない?」と誘うのです…

リンダさんのアパートに居座ったミリキタニさん
「うどんが冷たいからもっとあっためてくれ」とわがままを言ったり、
真夜中に帰宅したリンダさんに
「こんなに遅く帰ってくるなんて、心配でたまらないよ」
…とぶつぶつ文句を言い、本当に心配なのか自分がかまってほしいのか…??

でも、路上生活のときには首を縮め、背中を丸め、縮こまっていたミリキタニさんが、アパートで人間らしい生活を始めると、すっと背中が伸び、きりっとした表情になり、昔の写真もなかなかの男前でしたが、本当に芸術家らしい風貌になっていきます…
(きっと日本では、由緒ある家柄だったのでは???)

強制収容所の恨みから、生活保護を受けることも市民権を再度取得することも拒否していたミリキタニさんですが、リンダさんの尽力のおかげで、白い壁に囲まれた小奇麗なアパートに入居することが決まります…

真っ白な何も無い空間だったアパートが、壁中、ミリキタニさんの絵で埋め尽くされた素敵な部屋に変わっていきます…

80歳を過ぎてもバリバリの現役なんですよね~!!
絵もとってもポップで、若者にも充分魅力的な可愛らしさがあります!!
「死ぬまで絵を描いていく」と言うミリキタニさんの芸術家としてのエネルギーには、ただただ感服!!

そして、ツールレーク強制収容所あとへの慰霊のバス旅行…
同じ悲しみを抱えて生きてきた人々、またその関係者との旅は、ミリキタニさんの頑なだった心を溶かしていきます…

路上生活をしていたころの、怒り、恨みのこもった鋭い表情はもうすっかり消え去っています…

「皆がわかってくれたから、今はとてもいい気分だ」
「今はただ、思い出が通過するだけだ」…

そうなんですよね…「人が自分のことを分かってくれる」っていうのは、本当に心が癒されるんですよね…

今までのことがすべて水に流されるわけではないだろうけれど、不屈の精神力で生き抜いてきたミリキタニさんが、最後に幸せになれて本当によかった!!!

そして、ミリキタニさんの幸運が、単に「運がよかった」ということで終わるのではなく、その他大勢の路上で暮らす、それぞれに苦しみを抱えて生きている人々の上にも降り注ぎますように…と祈らずにはいられません。。。