NPO法人なごやか理事長の執務室に入ると、顧問税理士事務所の担当者Tさんと理事長が今年最後の会計監査を終え、くつろいだ様子でコーヒーを飲んでいた。
「そういえばTさん、昨日御社から送付いただいたこの月報の中に、女性経営者の集いの集合写真が掲載されていますが、こちらの方、ひときわ立派ですね。」
「わかりましたか、理事長、この方は私が今回、会にお誘いしたんです。」
「あはは、Tさん、お目が高い。」
「いえ、理事長とお付き合いするようになってから、人品について意識し出しました。」
理事長は写真の女性に関して、それ以上尋ねなかった。
そこがいつも私が不思議に思うところだ。
このひとは他人に対して興味がないのだろうか。
Tさんが続けて言った。
「この8名の中に当社の社員が一人だけいるのですが、どれかわかりますか。」
「社員の方がこの写真を撮影したのかと思っていましたが。」
「当日はもう一人、担当の男性社員がいて、彼が撮影したんです。」
「そうでしたか。もちろん、当てることはできますよ。」
彼は少し迷った様子ながら、一人の女性を指し示した。
「この方でしょうか。」
「いいえ、違います。このひとです。」
理事長は笑って言った。
「すみません、Tさん、当たったら御社に失礼かと思い、二番目に地味なひとを選びました。」
それが理事長の負け惜しみだったのかどうかは私にはわからない。
ただ、Tさんの表情が少し引きつったのは、確かだった。