ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

サトリ

2019年12月16日 | なごやか

 NPO法人なごやか理事長の執務室に入ると、顧問税理士事務所の担当者Tさんと理事長が今年最後の会計監査を終え、くつろいだ様子でコーヒーを飲んでいた。

「そういえばTさん、昨日御社から送付いただいたこの月報の中に、女性経営者の集いの集合写真が掲載されていますが、こちらの方、ひときわ立派ですね。」

「わかりましたか、理事長、この方は私が今回、会にお誘いしたんです。」

「あはは、Tさん、お目が高い。」

「いえ、理事長とお付き合いするようになってから、人品について意識し出しました。」

理事長は写真の女性に関して、それ以上尋ねなかった。

そこがいつも私が不思議に思うところだ。

このひとは他人に対して興味がないのだろうか。

Tさんが続けて言った。

「この8名の中に当社の社員が一人だけいるのですが、どれかわかりますか。」

「社員の方がこの写真を撮影したのかと思っていましたが。」

「当日はもう一人、担当の男性社員がいて、彼が撮影したんです。」

「そうでしたか。もちろん、当てることはできますよ。」

彼は少し迷った様子ながら、一人の女性を指し示した。

「この方でしょうか。」

「いいえ、違います。このひとです。」

理事長は笑って言った。

「すみません、Tさん、当たったら御社に失礼かと思い、二番目に地味なひとを選びました。」

それが理事長の負け惜しみだったのかどうかは私にはわからない。

ただ、Tさんの表情が少し引きつったのは、確かだった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ママがサンタにキッスした | トップ | 「特攻大作戦」 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。