新珠三千代が東宝へ移籍する前の、初期の日活作品について書くつもりが、小津安二郎(松竹)が東宝に乞われ単身出向いて撮った「小早川家の秋(こはやがわけのあき)」(1961年)に、彼女も出演していたことを思い出し、予定を変更した。
この映画は何と言っても、原節子と新珠、それに浪花千恵子が着こなす浦部理一デザインの和服が素敵だ。
宝塚出身で姿勢のいい新珠にとって、小津が俳優たちに強いた前傾姿勢の三角形の構図は難しかっただろうな、とスチール写真を見ながら勝手に想像する。
黒柳徹子が言うには、森繫は「一回どう?」が口癖だったそうだが、原節子を見つめる目つきはそれそのものだ。
さりげなく小津が間に入ってガードしているかのように見える。