「フラッグシップ―旗艦。艦隊の司令官が乗船する艦。
グループホーム虔十はNPO法人なごやかにとって旗艦店だからね、とY管理者、コードネーム『ホワイト・ロールス』へ僕は時々言った。そのたび彼女は誇らしげに笑ってうなずいた。
連合艦隊の旗艦は長く戦艦長門だった。
映画『トラ・トラ・トラ!』(1970年)は山本五十六大将の司令長官着任式(昭和14年9月)のシーンから始まるが、これは福岡県遠賀郡芦屋町に建設された長門と空母赤城の巨大な実物大屋外セットで撮影されている。
ちなみに、先日書いた近江兵曹の同司令部従兵長拝命は翌15年12月のことだ。
このあと連合艦隊の旗艦は次々と変わって行く。
長門がドックでの改装に入る間、旗艦は同型艦の陸奥にいったん移り、改装が終わるとまた長門に戻った。ここで太平洋戦争の開戦(16年12月)を迎える。
同年暮れに戦艦大和が竣工すると翌年2月にそちらへ旗艦が移り、ミッドウエイ海戦の大敗北を遠くから眺めている。
さらに、大和型戦艦の二番艦武蔵が竣工するなり、旗艦が移っている。
その理由というのが、大和の司令部区間より武蔵のそれがラグジュアリーだったからだそうだ。
この、ころころと変わる旗艦の移転を差配したのが近江従兵長で、その際のエピソードをこともなげに自著へ書き綴っている。なんにせよ、戦艦大和、武蔵、長門、陸奥に乗船し、そのすべての心臓部を見たひとって、なかなかいないだろうなあ。」