少し前のこと、日本映画を観ていたら、大阪の小さなレコード店のシーンがあった。
偶然居合わせた自分のマネージャー兼ローディーの男性(成田凌)にヒロイン(小松菜奈)がレコードジャケットをかざして評価を尋ねると、
「ピーター・グリーンの絶頂期の作品でブリティッシュ・ブルースロックの最高傑作の一枚。でもきみの趣味かどうか。」
いいぞ、成田凌。ただ、僕なら親切心からこう言うだろう。
「でもそれ全曲インストだから、買うなら別のものにして、僕が貸してあげるよ。」
―どうも話が長くていけません。
小松菜奈の後ろに、大物ブルースマン、ハウリン・ウルフのLPが二枚並んでいる。
また、成田が初め掘っている棚の隣にはクリスタルズの同題大ヒットシングルを収録した「ヒーズ・ア・レベル」がちょこんと置かれている。
これ完全に、映る箇所は意図的に並べ替えている、と思った。
それにしても、不思議な感覚だった。
老いた僕はこれらのLPを処分しようとしている、一方で、映画の若いヒロインはこの名盤たちに今出会っているのだから。
フリートウッド・マック脱退後の、ソロデビュー作(1970年)だ
小松の左肩越しに見えている、ハウリン・ウルフのデビュー作(1959年)
その隣に置かれた、第二作(1962年)
クリスタルズ名義だが、フィル・スペクターがダーレン・ラブに
歌わせたゴースト・レコード
せっかくなので、個人的に大好きな曲を。フリートウッド・マック在籍時にカバーしたオーティス・
ラッシュの「ホームワーク」。1969年暮れ、フランスのテレビ番組での演奏だ。