ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

つむじ風②

2015年08月10日 | 日記

 下北沢から三軒茶屋へと通じる一本道の茶沢通りを、A、B、Cの三人はぶらぶらと歩いていた。

深夜、さすがにもう人通りも絶えて、両側の住宅街は静まり返っていた。

大学生のAとBは終電がなくなったので、Cのアパートに泊めてもらうことになっていた。

そんなことが、これまでも何度かあった。

家に着くと少しだけ音楽の話をして、AとBは居間で、女あるじのCは別室で、それぞれ寝た。

 翌朝、簡単な朝食をごちそうになった後、Aはどうしても出席しなくちゃいけない講義があるので、と早々に退出した。

M大生のBは、オレはまだいいや、とじゅうたんの上にごろりと横になった。

 それからしばらくして、Aがあるコンサート会場へ行くと、BとCが来ていた。

それもよくあることで、その逆もあったのだが、その日は明らかに様子が違った。

Bの目の中には得意の色が動いていた。

AはCの顔を見ることができなかった。

 あの朝のことを、とAは言う。

何年も繰り返し考えた。

でも、ある時気がついたんだ。

自分が逆の立場だったとしても、いつも通りだったろうなって。

長い間、それが分からなくてひどく苦しんだけれど。

 

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