下北沢から三軒茶屋へと通じる一本道の茶沢通りを、A、B、Cの三人はぶらぶらと歩いていた。
深夜、さすがにもう人通りも絶えて、両側の住宅街は静まり返っていた。
大学生のAとBは終電がなくなったので、Cのアパートに泊めてもらうことになっていた。
そんなことが、これまでも何度かあった。
家に着くと少しだけ音楽の話をして、AとBは居間で、女あるじのCは別室で、それぞれ寝た。
翌朝、簡単な朝食をごちそうになった後、Aはどうしても出席しなくちゃいけない講義があるので、と早々に退出した。
M大生のBは、オレはまだいいや、とじゅうたんの上にごろりと横になった。
それからしばらくして、Aがあるコンサート会場へ行くと、BとCが来ていた。
それもよくあることで、その逆もあったのだが、その日は明らかに様子が違った。
Bの目の中には得意の色が動いていた。
AはCの顔を見ることができなかった。
あの朝のことを、とAは言う。
何年も繰り返し考えた。
でも、ある時気がついたんだ。
自分が逆の立場だったとしても、いつも通りだったろうなって。
長い間、それが分からなくてひどく苦しんだけれど。