10年前に認知症高齢者グループホーム建設資金としてメイン銀行から融資を受けた借入金が全120回、完済した。
少しして、当時の契約書が返送されてきたのだが、封筒から出してみて驚いた。
茶色く変色し、しわだらけで、ボールペンや押印のインクが大きくにじんでいる。
契約から7か月後、東日本大震災による16メートルの大津波で当法人はグループホームを二つとデイサービス、居宅介護支援事業所を失っているが、融資の窓口となった支店も同じく大きな被害をこうむり、今夏にやっと元の場所での再建を果たしていた。
この契約書はきっと支店の金庫に当日あったものだろう。
(たとえ一本とはいえ、)借入金を払い終えただけでも十分感慨があるのに、あの日のこんな痕跡が手元に届いたら、とても穏やかな気持ちでいられるわけがなかった。