ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
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ロッキー盛り

2024年05月13日 | 日記

 

 以前書いたことがあるが、僕の特技はざるそばをきれいに食べることで、かなり大げさに言うとそれは一生の目標でもある。

仕事柄、県都センダード市へ出張で行くことが多く、そんな時はトレーニングにと、一日一回は立ち食いそばだ。二回の日もある。もちろん、家族との食事となれば(贖罪の気持ちからも)しゃれたホテルレストランやビストロを予約してサービスに努めているが。

なぜ立ち食いかというと、座って食べるよりすする力が込めやすいから。

それに、そばは食事ではなくおやつなので、特に老舗でも高級?でなくてもいい。

 そんな僕の誰に頼まれたわけでもない修行の日々の中で出会った迷店のひとつが、駅前の「そば処やぶ金」だ。

ここには「ロッキー盛り」といういわゆるデカ盛りの名物メニューがある。

ただしあまりの大盛りにみな恐れをなしているのか、食べている人をいまだ見たことがない。

僕は大男だが食が細く、いつも並みですませていた。

それが何回目かの昼、僕の斜め向かいに座った、どうみても10歳近く年上のご老体が、常連らしく、席に着くなり「大盛り」と店員に声を掛けた。

その大盛りのざるがやってきて、僕は度肝を抜かれてしまった。

これのどこがロッキー盛りと違うの?と。

そしてさらに驚いたのが、ご老体の食べ方の美しさ。

ずっず~っとすする快音がリズミカルに繰り返され、みるみるそばが減って行く。

これは負けてはいられない、と僕も箸で約八本ずつそばをつかみ、つゆに三分づけしてずっず~っと音を立てて食べる。

ご老体がちらりとこちらを見た。

僕はぺこりと頭を下げた。

どこにでもその道の達人はいるものだな、慢心してはいけない、とその日は改めて思った。

 

きれいなそばの食べ方(※諸説あります)

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