「ブルースはロックの親父やけん、リズム&ブルースは叔父さんや。6月9日はロックの日やろ? 6月10日はブルースの日ったい。」
昔、マコちゃん(鮎川誠)が下北沢音楽祭のステージ上で言い放った。
以来、僕はこの日が来るたび、ぼんやりとだが、今日はブルースの日やね、と思う。
初めてブルースの生ライブに行ったのは高円寺のライブハウスJIROKICHIで、1981年の冬だった。
まだ二十歳そこそこだった僕は、入場した途端、あー、やめればよかったと後悔した。
スカスカの客はみな長髪の年長の男性たちで、むさくるしいことこの上ない。
さらに、テーブルに着くと、常連らしい隣の客からさっそく話しかけられた。
おにいさん見かけない顔だけど、初めて?
はい、こちらに来るのは初めてです。
どんなレコード聴いてるの?
(来たよ、ここで間違えたらさらに地獄の時間になる。)
「スリム・ハーポとか、ジョン・リー・フッカーとか、ブギーが好きです。「ラスト・ワルツ」を観てポール・バターフィールドがカッコいいなと思っています。」
この返答が意外にも気に入られたらしく、若いのにセンスいいねと褒められた。
嬉しかった。
さらに嬉しかったのは、ステージに登場したホトケ(永井隆)の1曲目が、リトル・リチャードの「シェイク・ア・ハンド」だったこと。
当時スぺシャリティ・レコードから復刻発売されたばかりの初期オリジナルアルバム3枚の、3枚目に収録されているロッカ・バラードだった(のちにポール・マッカートニーもカバーしている)。
マディ・ウォーターズやウイルソン・ピケット、ルーファス・トーマスのカバーで大いに盛り上がったこの夜を境に、僕はさらにブルースのレコードを買い漁って行くことになる―。
再結成されたウエスト・ロード・ブルース・バンドの、たぶん1984、5年の映像。ホトケのスーツに見覚えがある。マディ・ウォーターズの「Ⅰjust want to make love to you」。
マーティン・スコセッシ監督「ラスト・ワルツ」(1978年)より、ザ・バンド+ポール・バターフィールド(ボーカル&ハープ)の「ミステリー・トレイン」。