ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。

大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。 また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。

精神歌

2024年06月06日 | 珠玉

 「なごみの日」の行事進行は職員に任せ、僕は久しぶりに花巻農業高校敷地内にある羅須地人協会の建物を訪ねた。

新型コロナ感染症の流行以来、構内への立ち入りが長くできなくなっていたが、昨年やっと解禁されている。

建物を一周し、「下ノ畑ニ居リマス」の黒板のチョーク入れに名刺を置いて、「精神歌」の石碑の前に立った僕はあたりを見回し、誰もいないのを確認して、音読を始めようとした。

ところが、おずおずと第一声を発する直前に、どこからかその一節が先んじて聞こえてきた。

慌てていると、石碑の後ろからひょっこり、ざしき童子が顔を出した。

きみか。

僕は照れ隠しに怖い顔をして見せた。

白いコットンジャケットに七分丈の白いパンツ。

相変わらず、白づくめの天使といったところだ。

「殊勝な心がけね、お礼参りだなんて。」

いつの間にかベンチの隣りに座っていた彼女は、バナナクリームの福田パンを長い指で半分ちぎって差し出す。

僕は一口食べた。

美味しいですね、清い糧は。

僕はこのくらいがちょうどいいな。

「そう。」

でも、向上心や上昇志向、野心がなくなったところから、ざしき童子はいなくなるんじゃありませんか。

「そんなことはないわ。私は私が必要と思うところに出向く。あなたはまだまだ心配ね。」

僕は苦笑した。

僕のなにがこうして他者に心配をかけるのだろう。

結局分からず仕舞いだな。

とはいえ、それが分らないうちは、彼女はいてくれるらしい。

安堵のため息が、口を衝いて出た。

 

精神歌

 

(一)日ハ君臨シ カガヤキハ
   白金ノアメ ソソギタリ
   ワレラハ黒キ ツチニ俯シ
   マコトノクサノ タネマケリ

(二)日ハ君臨シ 穹窿ニ
   ミナギリワタス 青ビカリ
   ヒカリノアセヲ 感ズレバ
   気圏ノキハミ 隈モナシ

(三)日ハ君臨シ 玻璃ノマド
   清澄ニシテ 寂カナリ
   サアレマコトヲ 索メテハ
   白堊ノ霧モ アビヌベシ

(四)日ハ君臨シ カガヤキノ
   太陽系ハ マヒルナリ
   ケハシキタビノ ナカニシテ
   ワレラヒカリノ ミチヲフム

 

 

コメント
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