「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)」(1995年)は大ヒット作ではないが、観客の胸に残る佳品だった。
その9年後、同じ監督、同じ俳優で続編「ビフォア・サンセット」(2004年)が作られた。こちらも、いい作品だった。
前作のラストで、半年後のウィーンでの再会を約束して別れた若い旅行者の二人。
続編では、アメリカ人の男(イーサン・ホーク)はそのたった一晩の思い出を小説として書き、作家になっている。
自作のプロモーションに訪れたパリの書店で、男は思いがけずフランス女性(ジュリー・デルピー)と再会する。アメリカへ帰る飛行機の搭乗時刻までの間、彼らはなぜ半年後に会えなかったのか、今はどんなふうに暮らしているのか、会話を重ねて行く。
「僕はあの本を書くことで
君と過ごした時間のすべてを保存したかった。
あの出会いをいつでも思い出せるように。
あれは本物の出会いだった。」
「本は読んでくれた?」
「ええ、想像つくと思うけど、すごく驚いたわ。二回も読んじゃった。」
「でも、あの夜のことはかなり美化されてた。」
「表向きにはフィクションって設定だから。」
「ええ、でも本の中の私は、、いえ、“私”じゃなく、“彼女”よね、とにかく神経過敏よ。」
「事実だろ。」
「そう思う?」
「冗談だよ、そんな書き方してないだろ?」
「私の考え過ぎかも。
でもモデルが自分かと思うと―嬉しいけど落ち着かない。」
「落ち着かないって?」
「なんていうか―他人の記憶の中の違う自分を見てるような。書き上げるには?」
「3、4年かかったな。」
「一夜を描くにしては長いわね。」
「ああ、まったくだ。」
「もう忘れられたと思ってた。」
「まさか。忘れるはずない。」
さて、この再会の結末は。
さらに9年後の2013年には続々編の「ビフォア・ミッドナイト」も作られている。次作は2022年か?
〇イーサン・ホークについて: https://blog.goo.ne.jp/nagomi8000/e/6b0fae9522262e21341b1df2e52e5ddc