長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」

三味線の音色にのせて、
主に東経140度北緯36度付近での
来たりし空、去り行く風…etc.を紡ぎます。

キヘンのひと、リターンズ。

2022年07月03日 03時22分44秒 | 折々の情景
2022年6月30日
 節電に協力するために、午前中に出掛ける。
 最寄り駅までの吉祥寺通りは、どうした方針か何年か前、立派な欅の街路樹の枝を払って、棒状の木立に直接、葉っぱが枝葉末節的に芽吹いた小枝が申し訳程度についているばかりで、日陰もなく涼しくもなく、炎天下にさらされた、これまた炎熱地獄に拍車をかけるイマイチ趣味の悪い三色タイル張りの舗道を歩くのも気鬱。
 生死にかかわるので遠慮して、文化園内を突っ切って井の頭公園駅まで歩く。
 さぞかし快適、涼しかろうと思いきや、あにはからんや…妹でも弟でもハカランヤ。
 これまた、一見オシャレ風な煉瓦様タイルを敷き詰めた歩道が整備されているお蔭で、チイとも涼しくありゃしない。

 公園の木々も整備されてしまったようで、春ごとに美しさを誇った桜樹の枝ぶりも今いづこ、灌木も疎らである。
 手の込んでないゲームの中につくられたテーマパークのようなナンチャッテ公園の如き、風景も幼稚で荒んで見える。
 日本の作庭の伝統を忘れ去った、精神性の貧しさを表象するようなデザインなのだった。
 見てくれだけの二次元世界のパースは、三次元として世に現れる時、四次元の時空に晒された感覚を盛り込むことを忘れているので、魂が入っていないのである。
 魂が入らない仏像と同じく、虚構の都市は人々を不幸にする。

 神宮外苑の再開発で樹齢百年にも及ぼうという美しい樹木たちを、千本余りも伐採するという、恐ろしい計画が推進されつつあるというが、何たること。
 木蔭が出来る木に育つまで、いったい何年かかるか判断できないのだろうか。
 少子高齢化で人口も減るというのに、今後、各種のインフラや都市機能が存続できなくなることは織り込み済みであろうに、こまごまとした人力でのメンテナンスが出来ないような、大規模な構造物を建てることになぜ固執するのか。
 目先の利益に追従して、人間としてあるべき見識・仁徳を失くしてしまったのだろうか。

 東京都がかくも苛烈な熱帯かつ無法地帯になり下がったのは、誰のせいか…還暦を迎えた大人の一人として、未来ある子どもたちに謝らなくてはならぬ…
 それにつけても、この暑さはどうだ。酷熱が怒りを増殖させる。
 アオスジアゲハが一匹、私の気を紛らせるように、熱風のなかをすり抜けて行った。

 
2022年7月1日
 猛暑というとマ行音で可愛らしい感じさえするが、はっきり言って酷暑である。
 今朝も5時半前に目が覚めてベランダに出て見れば、どうしたことか、ベランダ右手の床にバタバタと仰のけになって足掻いているものがある。
 アゲハの大紋を背負った蝶であったが、羽化不全で翅がくしゃくしゃになり、上翅は両方とも折り畳まれたままだった。
 いつの間に、そしてどこに在ったサナギから生まれたのか…狭いベランダの四方八方を見回したが分からなかった。
 とにかく、彼が育った檸檬の根方に…木片を差し出すと掴んだので、移動させた。
 どういう不幸がこの揚羽蝶を見舞ったのか…原因は分からないが、要因の一つはこの酷暑であることは疑いない。
 鳥の嘴や寄生虫や、その他多くの災厄から逃れて羽化できたというのに、不憫である。
 霧吹きで水分を与えると口吻を伸ばしてきた。すかさずスイカの切れ端を足下にしのばせると、吸い続けた。
 自力で飲めるならもう大丈夫。

 やれやれ、朝一番から気が揉めることだなぁ、と、哲学的な思惑に気持ちが沈みそうになったが、
 そういえば…と目を左へ向けると、昨日まで夢見ていた蛹虫、三番手がすでに羽化していた。







 2時間も経ち早や7時50分、網目の上から飛び立ちかねて、機を逸したか…


 
 陽射しは苛烈さを増し、



 なんという素早いフェイント!
 上端を潜り抜けるのかと思いきや、
 下へ急降下すると、
 自分が育った檸檬の垣根の隙間から、しゅばっと中空へ飛び立った。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする