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流野精四郎&東澤昭が綴る読書と散歩、演劇、映画、アートに関する日々の雑記帳

ユーリンタウン 再び

2011-10-30 | 演劇
 10月22日(土)、流山児★事務所公演「ユーリンタウン―URINETOWN The Musical」を観た。脚本・詞:グレッグ・コティス、音楽・詞:マーク・ホルマン、翻訳:吉原豊司、台本:坂手洋二、演出:流山児祥、於:座・高円寺1。

 ストーリーの舞台はすでにご案内のとおり、地球上の旱魃により節水を余儀なくされた近未来のある街。誰もが有料公衆トイレの使用を法的に義務付けられていた。立ちションなどしたら最後、警官ロックストックらに逮捕され、誰もが恐れが誰もが見たことのない「ユーリンタウン」に送り込まれることになっていた。
 全てのトイレを管理しているのは、冷血クラウドことコールドウェル・クラッドウェルの経営するUCC社。この理不尽極まりない法律はクラウド社長が賄賂と政治力によって作り上げたもの。
 貧民街では、今朝も金がなくトイレを使えないホームレス達が大騒ぎを起こしているが、管理人ペニーは容赦がない。そんな中、管理人助手ボビーの父親ストロングじいさんがガマンしきれずに立ちションをし、「ユーリンタウン」に送られてしまう。
 ボビーは失意の中、美しい娘ホープに出会い、自分のなすべきことに気づく。それは自由も求めて「革命」を起こすことだった。
 ボビーがついにクラッドウェルらと対峙した時、ホープが彼の愛娘だということを知る・・・・・・。

 本作は、2009年、流山児★事務所創立25周年記念公演ならびに座・高円寺の杮落とし公演として上演され、大きな話題となるとともに第44回紀伊国屋演劇賞ほか数々の受賞によって高い評価を得ることとなった作品の再演である。
 私は2年前に驚くほど感動して再見したほどだったから、今回は3回目の観劇となる。
 舞台セットを新たにし、警官ロックストック役が千葉哲也から別所哲也になり、若手俳優の多くも入れ替わってテキストを読み直し、ほぼ「新作」として創り上げた群衆革命ミュージカルである。

 別所哲也の起用が一つのポイントと思うのだが、同じ哲也ながら、前回ロックストックを演じた千葉哲也が私は好きだった、というか、この群衆ミュージカルには、別所哲也のような「売れている」ミュージカル俳優の存在はやや目立ちすぎるのである。いろいろな意味で・・・・・・。
 立ち姿が際立って美しく、歌ももちろん巧みでこれ以上望むことはないのだが、狂言回しとしてのその時々に見せる「誰もが知っている俳優」別所哲也がわざとらしく演じる「地」が何ともジャマに思えてならない。もっとも多くのお客さんはそれで喜んでいるのだからわざわざ異を唱えることもないのだけれどね。

 さて、作品である。
 本作がありきたりなハッピーエンドに終わらないことは周知のことだが、改めて3・11後の今になってこの舞台を観ると、そのシニカルな批評性に慄然とせざるを得ない。
 ユーリンタウンは水不足の世界なのだが、これを電力不足の世界に置き換えてみたらどうだろう。
 私たちが今まさに直面している問題の数々が浮かび上がってくるのではないだろうか。

 本作の優れているところはある種の韜晦性にあると私は思うのだが、作者はもちろん、革命をめざす群衆と、水を支配することで世界の秩序立てを目論む冷血クラウドのいずれに与することはなく、そのどちらの側にも冷徹な目を向け続ける。
 それゆえにこそ、それは原発廃止論者にとっても、擁護派にとっても、深い「絶望」のありようとともに、複雑に入り組み捩れた問題の底から何としてでも見出すべき「希望」のカタチを提示しているように思えるのである。


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