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流野精四郎&東澤昭が綴る読書と散歩、演劇、映画、アートに関する日々の雑記帳

地域発 新作オペラ

2009-08-13 | 舞台芸術
 9日、東京芸術劇場で「ひかりのゆりかご~熊になった男」というオペラの舞台を観た。
 本作は岐阜県発の新作オペラで、昨年の当地における公演の大成功を受け、東京での公演となったものという。
 家庭崩壊や地域社会崩壊に象徴されるような現代の日本人の心の喪失、自然破壊や環境破壊という私たち自身に関わる身近な内容にスポットを当てながら、「家族の絆」「親子の絆」を見つめ直そうというものであると、主催団体の代表者がパンフレットに書いている。

 もちろん、その意気込みに否やはないし、志には心からの賛意を表するけれど、その舞台成果としてはどうだったか。日本語の、それも市民参加でオペラをつくることの難しさばかりが浮き彫りになったように感じてならない。
 私は音楽にはまったくの素人だけれど、オペラ歌手たちに若手の小劇場演劇まがいの設定で演技させても観るほうはまったく乗っていけない。まるで、キャリア官僚が吉本の舞台でお笑いを演じているようで何とも居心地が悪くてしかたがない。
 もっと音楽劇に特化したほうが数段インパクトは高まったように感じる。

 地域発の舞台なのだから、もっと郡上八幡という場に特化した歴史的な物語にするか、あるいは逆により普遍性を持たせた寓話的な設定にしたほうがテーマに迫れたのではないかと思えてならないのだ。

 問題なのはビジョンであり、何を見せ、何を感じさせたいのかということだと思う。
 緻密な構成の現代演劇と異なり、オペラはテーマに素直にまっすぐ迫ることのできる表現形式である。臆することなく物語を創るべきではないだろうか。
 


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