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流野精四郎&東澤昭が綴る読書と散歩、演劇、映画、アートに関する日々の雑記帳

組織と人材

2021-02-18 | 日記
 この数日、引きこもりのように家から外に出ずにいるのは、コロナ禍のなか、感染リスクを怖れてのことでもあるのだが、何より薬の副作用のために言いようのない倦怠感や疲労感が重しのようにのしかかって身体全体から力を奪い取り、能動的に動こうとする気力を吸い取られているような気分なのだ。
 こうした状態では、ひたすら眠りこけるか、読書(それもあまり小難しくないもの)に耽溺するか、テレビを見るしかなくなるのだが、そもそも気力や集中力の削がれたような今の精神状態では、結局、呆けたように終日テレビ画面を見るともなく見続ける羽目になる。番組視聴率のアップに人知れず貢献しているというわけである。

 そんな次第で、最近見たテレビ番組の中で記憶に残ったものをメモしておく。
 その一つが、2月15日(月)の放送されたNHKの「逆転人生」で、「コロナ禍でも黒字のイタリアン 大逆転の秘けつとは」というタイトルがつけられている。
 今回の主人公は、世界的料理ガイドブックで10年連続一つ星のレストランを経営するイタリアンシェフの村山太一さんである。自らの厳しい修業時代の経験から、絶対的リーダーとして君臨するスタイルで店舗スタッフにも服従を求め、厳しく叱り飛ばす毎日だったが、意に反して客からの酷評が相次ぎ、赤字に転落。原因はチームワークの崩壊だった。
 そんな村山さんが覚醒したきっかけはファミリーレストランでのバイト。少ない人数ながらスタッフ同士が信頼しあい、協力しながら店を切り盛りする姿に感銘を受け、さらにスタッフの意見を吸い上げるフラットな組織のあり方に目覚め、方針を大転換したのだ。そこにはコロナ禍を乗り切るヒントが……、という内容である。

 さらにもう一つは、1月7日(木)放送のNHK「クローズアップ現代」で、「緊急事態宣言 雇用を守る現場の模索」というテーマだった。
 「雇用の危機」が続く2021年、新たな雇用を生み出している現場がある。大阪市のお好み焼き専門店は「地方」進出で新たな客層をつかみ、社員5人だった福島県内のプラスチック部品メーカーは専門分野の異なる企業とM&Aをした結果、互いのノウハウを生かして新製品を生み出し、従業員数を6倍にまで増やしている。取材から見えてくるのは、社会の変化を的確に捉え、平時では思いつかなかった発想の転換で活路を見いだしている点だ。始まった模索から厳しい時代を生き抜くヒントを探る、というもの。

 詳細は省くけれど、これらの取材から浮かび上がってきたものは、一方的なトップダウンによる命令や指示に服従させるのではなく、フラットな信頼関係に基づき、互いのノウハウを生かすとともに、ボトムアップにより知恵を出し合い問題解決を図るという組織運営の重要性である。
 さらには、「苦境の時こそ人材育成」というキーワードに見られるように、雇用した人を使い捨てのコマのように扱うのではなく、組織の財産として大切に育てていこうとする姿勢である。このことは、非正規社員を正社員として採用することに転換した会社の姿勢にも表れている。

 組織改善や経営改革という名のもとに行われる取り組みの多くが、効率化の名のもとに行われる雇止めだったり、単なる経費の切り詰めであったりするなか、ビジョンを共有しながら信頼関係を築き、人を大切にするという経営哲学の重要性をこれらの番組で紹介された事例から知ることができる。
 今、苦難の時代だからこその組織運営のヒントがそこにあるように感じる。