坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

曽谷朝絵展-Swim-

2011年07月26日 | 展覧会
時間の移ろいにより光の変幻を映し出したのは、印象派の画家たちです。その一瞬の光の透明感やきらきらと光る木漏れ日、自然だけでなく、現代の私たちの周りにはさまざまなイリュミネーションの光の明滅に囲まれていますが、風景の部分的なものとして見過ごされがちです。
光を色彩で分解したような緻密なグラデーションと光のプリズム。曽根朝絵さんの描きだすダイナミックで透明感のある色彩の波動は、私たちが触れたことのある感触であり、その輝きを絵画にとどめています。
2002年に「VOCA展」において〈Bathtub〉の作品でVOCA賞を受賞。画面に大きくバスタブを描き、浴室のウエットな感触をたゆたうような色彩の波で描きだしました。その癒し的な感覚から、〈Circles〉、〈Airport〉などのシリーズへとつづき、色彩もそれまでの青を基調とするグラデーションから赤や黄色の原色の鮮やかなビートが利いたものへと進展しています。
2010年、資生堂ギャラリーでの「鳴る音」では、ビニールのカッティングシートによるインスタレーションで、色彩の和音を会場に響かせました。
長野県の小布施で開催される本展では、これまでのシリーズや新作を含め、当会場の空間に合わせたインスタレーションの作品も見どころです。軽井沢から車で1時間半、避暑地からこの歴史の町に行かれるときには、ぜひご覧ください。

◆曽谷朝絵展ーSwimー/7月30日~9月20日/おぶせミュージアム・中島千波館
 ・曽谷さんの作品は「カフェ・イン・水戸」水戸芸術館(茨城)/7月30日~10月16日
  「Sparkling Days」横浜市民ギャラリー(神奈川)9月30日~ などにも出品されます。