坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

古代ギリシャ展 2千年前の神々と人の躍動

2011年07月06日 | 展覧会
鍛えられた人間の身体の躍動美、これぞ正統な美の規範!と現代の私たちにも神聖なる美を投げかけるアフロディテ(ヴィーナス)像。大英博物館が所蔵するギリシャ・ローマコレクションから厳選された約130点で辿る「古代ギリシャ展」の開催が、国立西洋美術館で始まりました。
私たちが美しいと感じる美の基準、比率などは2千年前の古代文明に遡ります。ルネサンスによりギリシャの正統美が再復活して、よくご存じのラファエロの聖母子像やボッティチェリの三美神など古代のおおらかな人間賛歌への敬意が示されました。
古代ギリシャ美術のおおらかさと言えば、ギリシャの神々はとても人間的。浮気をしたり、盗みを働いたりと。かの有名なスーパーヒーローのヘラクレスは、神ゼウスと妻ではない人間の女性との間に生まれ、腕力に秀でて、その力と勇気で数々の難行を成し遂げました。それらの場面がアンフォラという黒地の焼き物の壺に描かれているなど、オリンピックに参加した選手の競技場面など壺絵も充実していました。
・掲載の「円盤投げ(ディスコポロス)ハ、原作は前450~前440年ごろですが、ローマ時代の後2世紀に復元された貴重な作品です。側面からみられるように作られ、シルエットが美しい作品です。このように原型が失われたものをローマ時代に復元された作品はローマンコピーと言われ、ギリシャ美術の魅力を後世に伝えてきました。
ヘレニズム時代に入ると、ギリシャ神話の彫像はより複雑に構成され、全方位的にみられるように作られました。
装飾的なデザインやリアリズム表現など奥深い古代ギリシャの魅力の一端をみることができました。

◆大英博物館 古代ギリシャ展/開催中~9月25日/国立西洋美術館(上野公園)