坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

100点の新作に挑戦する草間彌生

2011年07月18日 | 展覧会
16日にNHKBSプレミアムで放送された〈世界が私を待っている 草間彌生の疾走〉という番組では、世界のKUSAMAの初期の作品群から、現在スペイン、パリ、ロンドン、ニューヨークの主要な美術館を巡回中の大規模な個展へ向けての制作中の姿を追ったものでした。82歳になる彼女は、2m、3m四方もあるキャンバスに、1日で描ききるときもあるし、数日かかることもありますが、これまで実像が見えてこなかった草間のアーティストとしてのパッション、いや執念ともいえる情熱が伝わる内容でした。
あいちトリエンナーレや十和田現代美術館の新たな野外彫刻展示空間のArts Towada(8月29日まで)では水玉模様でラッピングした車やバスが走り、原色輝くカラフルな花や犬のオブジェは、キッチュなかわいさという今日的なポップカルチャーと連動して世界的にも注目が集まっています。
・掲載写真は、ドットの原点であるかぼちゃと現在進行中の作品シリーズがうまく対比されています。
草間彌生は松本市の裕福な種の卸商店の末娘として生まれ、小さいころから絵が好きでよく描いていました。京都に出て日本画を学びますが、その保守的な体質に合わず、1957年29歳でニューヨークに渡ります。ときは、ポロックらの抽象表現主義の旋風によりアーティストにとっては既成のない自由な表現ができる格好の舞台となります。
ハプニングなど前衛芸術家のパフォーマンスに参加するなど、当時のニューヨークですら女性アーティストはマイノリティで、草間は積極的に当時有名なアーティストと接触して吸収していきます。
草間の初期の作品は無限の網シリーズの反復と増殖の絵画でした。ネットペインティングからニューヨークのポップアートに見られるソフトスカルプチュアの作品は性的なテーマを追求していました。
ミニマルアートから三次元的なサーキットの絵画を展開したフランク・ステラは、草間の初期の絵画を所有していたアーティストの一人で、彼女のリズミカルなタッチに注目したそうです。
心のなかに溢れるイメージは、ピンクの上にグリーン、そして黒などのアクリル絵の具で人間の横顔や植物的な生命体のように画面に埋め尽くされていきます。その目の輝きの強さを物語るように画面にはフォルティシモのリズムがあふれています。

◆草間彌生展/開催中~9月18日・レイナ・ソフィア(マドリード)10月9日~12年1月9日・セントラル・ポンピドゥー(パリ)
 2月8日~5月20日・テート・モダン(ロンドン)6月~9月・ホイットニー美術館(ニューヨーク)
 草間彌生 十和田でうたう/開催中~8月29日/十和田市現代美術館・中心商店街