自由広場

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インビクタス

2010-08-18 00:45:12 | たまには映画。
またもクリントイーストウッド。彼と同じ時代に生き、彼の作品に出あえることをとても幸福に感じます。グラントリノも感動したが、このインビクタスもええ話でした。しかも実話ときたもんだ。



偶然にも、前回紹介した第9地区から続けての鑑賞で、双方ともに南アフリカを舞台とし、アパルトヘイトといった人種差別のテーマを重心として物語は進められていました。図らずもアフリカの歴史背景について知識を深められたことはあり難いです。映画が史実や思想の記録として貴重な媒体であることを再認識しました。



もはや少年ジャンプですら使い古しすぎて扱わないような、「努力」「友情」「勝利」の三本柱を掲げたありきたりサクセスストーリーでありながら、当時の新大統領ネルソン・マンデラと、ラグビーワールドカップ南アフリカ代表チームとの交流を通し、人種差別撤退、南アの政治的立場の確立、国民への貢献と共同体意識向上、といった数々のテーマを描き、一見シンプルですが複雑な内情をいくつも織り交ぜています。だからといって毛嫌いしたくなるような悪臭を漂わせないのがクリントイーストウッドの巨匠たる所以なのでしょう。



毎度本筋から逸れますが、南アフリカ閣僚に「スポーツ大臣」なる役職が存在することに驚きました。調べみると、なんと世界的にありふれた大臣みたいですね。なぜに日本にはないんだろ。スポーツを政治に利用しない、なんてハリボテの見栄を張るよりは、ある種開き直って、国のためにもがんばってちょと選手の肩を叩いたほうがよっぽど筋が通っていると思います。ほんとなんでないんだ、スポーツ大臣。


クリントイーストウッドの日本への隠された(?)メッセージには笑えます。前作グラントリノでは自動車について皮肉をかましてくれましたが、今回はワールドカップ史上最高の「失点」を食らった不名誉な国として日本が挙げられています。ほんとこの人日本がお好きね。ていうかこういう皮肉的愛情を受け入れられる国って日本以外そうそうなさそうだ。



各俳優陣も役作りに余念が無かったようで、ラグビーチーム主将のマットデイモンに至っては、エンディングロールを見て初めて「え、あれデイモンだったの!?」と気づかされたくらいでした(実話)。これは最高の褒め言葉だと思うんですが、どうでしょうか。

特にネルソンマンデラを演じたモーガンフリーマンが凄まじかったと思います。ネルソン大統領自身の肉声を聞いた記憶はありませんが、かなり似たものにされたのでしょう。言葉一つ一つを優しく包む丁寧な話し方で、字幕がなくてもほぼ台詞を理解することができました。映画を観ながら学ぶリスニング教材として秀逸です。ややお堅い英語になってはいますが。



ネルソンマンデラといえば、まず第一に思い出すのは電波少年での松村邦洋との絡みです。アラファト議長もそうでしたが、一般人が滅多やたらと近づけない立場にいながら、突然の訪問にも歓迎ムードで、「このおっさん偉いのに寛大だな~」と子供ながらに感心したものです。

映画を観て思うのは、偉人もただの人だということ。家族が気がかりだし、病に臥すことだってある。
挫けない心を強く持てたかどうか、その差なんだと思います。それは先天的なものでもなければ、目に見えて鍛えられるものでもありません。分かりきったことだからこそ、大きすぎて見えないものがあります。この映画を通して今一度見直すべきなんだと強く感じました。



珍しく綺麗ごとを並べてみちゃったりしました。そうなってしまうくらい、スカッと晴れやかな映画です。人間臭すぎず、スポ根すぎず、説教がましすぎず、絶妙なバランスの上に成り立った映画でした。クリントイーストウッドはいよいよ80歳。いろんな意味で天に近しい御仁です。ほんと神様になっちゃいそうだね。デンデ以来の快挙だ。

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