(有)村田牧場通信

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【血統・配合】アメージングムーンの2017(牡 ローレルクラブ提供馬)

2017年11月28日 | クラブ募集馬



今回は、当場生産馬としてローレルクラブに提供しているアメージングムーンの2017を紹介したいと思います。

ターファイトクラブ提供馬としてすでに紹介済みのアルレガーロの2017とともに離乳を終えた後、10月上旬に当場の繁殖分場から1歳分場に移動したアメージングムーンの2017。





移動直後でも環境の変化にも動じることなくどっしりとしていて、その当時から素直に人間の指示に従う賢い面がありました。

ロードカナロア産駒にはそういう面があると聞いているので、今後も賢さを感じさせる馬に成長していくと思います。

馬体の大きさも標準サイズにありますし、ロードカナロアと母方ビッグテンビーの血を引くだけあって、スピードタイプの馬体と言っていいでしょう。

しっかりとした体つきと同時に素軽さも感じさせるので、これからの成長がますます楽しみです。





さて、ここからはアメージングムーンの2017の血統について触れていきます。

父のロードカナロアは、現2歳が初年度産駒となりますが、前評判通りに勝ち馬を量産中。

産駒は11月26日時点で中央にて24頭が勝ち上がって29勝しているわけですが、特筆すべきはそれらすべてが芝での勝利という点です。

芝路線においてはサンデーサイレンス系全盛の現代の日本競馬にあって、この勝利数は素晴らしいの一言です。

もちろん、ロードカナロアはサンデーの血を持たないので、サンデーの血を含む繁殖牝馬との配合が可能です。

実際、中央勝ち馬のロードカナロア産駒24頭のなかで16頭は、母方にサンデーを持っています。

ただその一方で、まったくサンデーの血を持たないカナロア産駒も8頭勝ち上がっています。

サンデーの血の力を借りなくても、現代日本のスピード競馬(特に芝路線)でコンスタントに勝ち馬を送り出せる種牡馬など、そうはいないと思います。

その意味では、ロードカナロアの血統的価値が今後さらに高まるでしょう。

ロードカナロアの血統は、代々異系による配合(父がMr.Prospector系、母父がNorthern Dancer系、2代母父がRibot系など)であり、遺伝的に健康と思わせるところがあります。

産駒が早い時期からデビューして勝ち上がっていく姿を見ると、カナロアのスピードの遺伝だけではなく、このような健康的な血統も産駒に好影響を及ぼしているかもしれません。

カナロア自身は、母が持つSecretariat=Syrian Seaの全きょうだいクロスを活かすべくMill ReefやCharlottesvilleとの相似クロス、あるいはそれらを加えたラストタイクーン≒The Dancer≒Storm Catの相似クロスを持ちます。







ラストタイクーンとStorm Catの比較では、父がNorthern Dancer系であり、母父がNasrullah/Princequilloのニックスから成るMill Reef≒Secretariatという相似性の高い関係です。

また、The Dancer≒Storm Catという観点では、Nijinsky≒Storm Birdの関係があり、互いの母父がNearco系×Prince Rose系というNasrullah/Princequilloのニックスに準じる血統パターンです。

このラストタイクーン≒The Dancer≒Storm Catは、ロードカナロアの血統においては非常に特長的だと思っていたので、配合の際にはこれらの血脈を強化する配合を試みたいと考えていました。


では次に、母のアメージングムーンについて触れていきます。

父のアドマイヤムーンは中距離で成績を残した馬であり、その一方でエンドスウィープやサンデーサイレンスというスピード系の血も含んでいたことから、ビッグテンビーの長所であるスピードを活かした上で距離延長が計れるのではと狙った配合でした。

ただ、アドマイヤムーン産駒は気性面も影響してか、結果的に短めの距離で活躍馬が出ているのが現状です。

ビッグテンビーに配合するときには読み切れませんでしたが、その傾向は産駒のアメージングムーンにも受け継がれました。

具体的には、札幌芝1200の2歳未勝利戦でレコード勝ちを収めて、つづくG3ファンタジーS(芝1400)で3着しています。

ローレルゲレイロの半妹だからと言えばそれまでの話しですが、結果として彼女もまた短距離馬でした。

休養先のファンタストクラブでアメージングムーンを見たときは素晴らしい馬体で、そのままの体調を維持して競馬に望めればもう少し成績も残せたでしょうし、距離延長にも少しは対応できたのではと今でも思います。

ただ彼女の場合、トレセンに入厩すると何十キロも体重が減ってしまうなど、牝馬特有の気性面を含めた体調管理の難しさがありました。

競走馬時代の体調の変動が影響したのか、繁殖入り初年度はヘニーヒューズを複数回種付するも不受胎で、シーズン途中でこの牝系と好相性のキングヘイローに配合変更しても不受胎。

結局、その年を不受胎で終えてしまいました。

ただ、その1年でしっかりと馬体つくりをして臨んだ翌年には、ロードカナロアを配合して1回目の種付で受胎し、その結果としてアメージングムーンの2017が生まれました。

アメージングムーンの初産駒はローレルクラブにお世話になりたいと思っていましたので、彼のクラブ提供は当場にとって既定路線でした。


アドマイヤムーンの血統はNearctic5×5があるものの、全体としてはやや血が散漫な印象というのが個人的見解です。

そういう種牡馬には強めのクロスを持っている繁殖牝馬が合うと思い、Nijinsky3×4というインブリードを持つビッグテンビーを配合しました。

アドマイヤムーン産駒の重賞勝ち馬のなかにも、ファインニードル(母がNorthern Dancer4×4)やレオアクティブ(母がNorthern Dancer3×4)が同様の血統傾向を持ちます。

最近の当場生産馬のなかでは、ソリストサンダーも同様の考え方で配合しています。

ソリストサンダーは、父トビーズコーナーが血が散漫というかキツいクロスを持っていない血統なので、Nijinsky4×4やHail to Reason4×4・6という強めのクロスを持つ繁殖牝馬に配合して生まれた馬です。

ある程度クロスを持った馬には少しアウトクロス気味の馬を配合する、というのも一つの配合手法だと思います。

さて、アメージングムーンの血統に話しを戻すと、彼女はMr.Prospector≒Alydarの相似クロスを持ちます。

また、Mr.Prospectorに関してはMr.Prospector/Nijinskyのニックスもあります。





Mr.ProspectorとNorthern DancerはいずれもNative Dancer系×Nearco系の組み合わせ、またMiss Dogwood≒Bull Pageという関係もあり、多くの馬に見られる血統パターンです。

アメージングムーンの2代母モガミヒメはTom Fool4×5を持ちますが、この血はエンドスウィープの4代母Poupeeと相似クロスを形成します。





いずれもPharamond×Bull Dog(Quatre Bras)の組み合わせを持っています。

アメージングムーンのように、モガミヒメの牝系にHaloを持つ種牡馬を配合すると、Halo≒Careless Notionの相似クロスができるのも特長的です。





この両者はPharamondやSir Gallahad(Bull Dog)を持つ点で共通するほか、Royal Charger≒NasrulahやMahmoud≒Mumtaz Begumの関係もあります。

この手法はキングヘイロー(母父がHalo)×モガミヒメ牝系ですでに試しているパターンですが、サンデーを通じたHaloを持つ種牡馬との配合例はまだ少ないので、もう少し試してみたいと思っています。

このような血統パターンを持つアメージングムーンに対して、ロードカナロアを配合して生まれたのがアメージングムーンの2017でした。

アメージングムーンの2017はMr.Prospectorクロスを持っていますが、これは母の持つMr.Prospector≒AlydarやMr.Prospector/Nijinskyのニックスを活かす意味もあります。

さらに、ロードカナロア産駒という観点で見れば、現時点で2勝以上している産駒が4頭いるわけですが、うち3頭はMr.Prospectorクロスを持っているので、やはりこのクロスは血統傾向として好ましいと考えます。

母アメージングムーンはPoupee≒Tom Foolを持っていましたが、アメージングムーンの2017の世代では遠い世代ではありますが、Tom Foolの息子Buckpasserを7×7でクロスしています。

『モガミヒメが持つTom Foolクロスを活かすために息子のBuckpasserをクロスさせる』という配合手法は、ローレルゲレイロや現役馬スルターナなど、キングヘイロー×モガミヒメ牝系の組み合わせでも試していて、ある程度の手ごたえを感じています。

そのほかでは、ダンケシェーンアルレガーロの2017などでも試していますが、アメージングムーンの2017はBolero Rose(Storm Catの3代母)≒Jester(カコイーシーズの母父)を持ちます。




特にEight Thirtyは、ロードカナロアが母方に持つWar Relicと相性が良いので、このBolero Rose≒Jesterは意味のある相似クロスだと思います。


キングカメハメハが持っていたneriad≒Milan Millや、ビッグテンビーが持っていたMilan Mill≒Quillという4分の3同血クロスは、アメージングムーンの2017の代ではMill Reefを6×6で直接クロスさせることで強化する形にしました。





ロードカナロアの血の活かし方という観点から見ると、カナロアが持つラストタイクーン≒The Dancer≒Storm Catに対して、母アメージングムーンがCaerleon≒モガミポイントを持つことで活かすことができます。

アメージングムーンの2017の代で派生するラストタイクーン≒The Dancer≒Storm Cat≒Caerleon≒モガミポイントという関係は、それぞれNorthern DancerやNasrullah/Princequilloを持っていたり、相手によってはNijinskyやBuckpasserあるいはBull Pageを持つ関係であり、それぞれが互いに関係の深い血脈だと言えます。

このように、父母の血統傾向を活かしながら配合した結果が、アメージングムーンの2017です。

ロードカナロア産駒の活躍で、本馬もローレル会員の皆様に注目されていると思います。

その期待に応えられるだけの立派な馬に育つように、当場でもしっかりと飼養管理していきます。


【寝起き気味のアメージングムーンの2017】