(有)村田牧場通信

(有)村田牧場から情報を発信するブログ

【血統・配合】メジェルダの2018(ターファイトクラブ提供馬 牡 父アジアエクスプレス)

2018年11月27日 | クラブ募集馬
ハーランズルビーの2018につづき、今回もクラブ提供馬のメジェルダの2018を紹介させていただきます。









元ターファイトクラブ提供馬の母メジェルダにとって初仔となる本馬。

メジェルダに関しては、当場の想定よりも早い引退となってしまって出資会員の皆さまには申し訳なく思っております。

2歳時のうちはG3ファンタジーSで2着するなど能力の高さを見せてくれましたが、3歳以降は馬体に大きな成長が見られず、それが競走成績にもはっきりと出ている状況でした。

長く休養を挟むことで馬体が成長してくれることを期待しましたが、それでもこちらが期待するほどの大きな成長が見られず、4歳時には新潟直線の芝1000なども試しましたが着外に終わったことにより引退という決断に至りました。

引退した年はじっくりと休ませて翌年からの繁殖供用を想定していましたが、引退後すぐに「良い発情が来ている」という獣医のアドバイスもあり、一度だけ種付することにしてその一度で見事に受胎してくれました。

種付相手には、初仔であることと少し遅い予定日の誕生が予想されるタイミングということで、やや小柄な産駒が生まれることも予想されたことから立派な馬格のアジアエクスプレスを選びました。

結果として生まれたメジェルダの2018は、予想通りやや小柄な馬体で生まれましたが、アジアエクスプレス産駒の評判が良いように本馬も良い雰囲気を持った馬体をしています。

母メジェルダにとっては初仔だった本馬は、離乳前まで母が本馬を相当可愛がっていたこともあり、離乳後に1歳分場に移動してからも気性的に我儘な面が強かったです。

ただ、繁殖分場から1歳分場に移動して1か月が経過して環境に慣れてきたり当歳牡馬の仲間たちと昼夜放牧されるなかで、以前のような我儘でチャカついた面もなくなってきて気性面の成長が見られるようになりました。

早生まれの馬たちと比べるとまだまだ体格差がありますが、この馬だけで見れば馬体、気性ともに順調に成長しています。


母メジェルダはG3ファンタジーSで2着するなどの芝馬、彼女の母メリュジーヌはJRAでダート3勝したダート馬、さらにその母メジェールはJRAの芝で2勝のほかダートでも3勝したように、この牝系は配合によって芝・ダートいずれにも出る血統です。

本馬の3代母メジェールは、その母カスパースカイゴールドを米国の繁殖馬セールで購買した際に受胎していた持込馬でした。





カスパースカイゴールドを購買した最たる理由は、その好馬体とSeeking the GoldやNureyevといった日本で実績のある血を持っていた点にあります。

当然、受胎していたタバスコキャット×カスパースカイゴールドの配合も調べましたが、非常に良い血統パターンだと感じていました。

カスパースカイゴールドを輸入して牝馬が生まれたときは、やや小柄ながら品の良い好馬体の持ち主で、競走馬としてはもちろん将来の繁殖牝馬としても期待していたので、ターファイトクラブにお世話になることにしました。

メジェールの血統における最大の特徴は、タバスコキャット≒ビベの組み合わせでしょう。





米2冠馬のタバスコキャットと、加3冠馬Peteskiの母ビベとの組み合わせです。

いずれもNorthern Dancer系×Graustark(His Majesty)系の配合であり、5代表ではわかりませんが母方にLavendulaやBull Leaを持つ点でも共通しています。

この米血脈による組み合わせと、日本のスピード馬場で実績のあったSeeking the Goldの血が加わるなどして、メジェールは芝・ダートどちらの馬場でも勝ってくれました。

これら米血脈のスピードを素直に活かしたのがフレンチデピュティ×メジェールの配合であり、その結果生まれたのがメリュジーヌでした。

母メジェールがターファイトクラブでお世話になった関係で、メリュジーヌも同クラブで募集することになりました。





メリュジーヌは配合通りのダート短距離のスピード馬でしたが、血統的特徴の最たるものはフレンチデピュティ≒Storm Catにあると考えます。





いずれも父系がNorthern Dancer系であり、Bold Ruler系×Princequillo系のニックを持つMittelandとSecretariatの関係も存在します。

また、Eight Thirty系を父に持ち母方にSir Gallahadを持つ点で共通するBlue Moon≒Bolero Roseもあるなど、フレンチデピュティ≒Storm Catは比較的高い相似関係にある血脈同士です。

短距離馬らしい発達した筋肉を持っていたメリュジーヌでしたが、体質的にもう少し柔らかめの種牡馬を付けたら母馬よりも距離が持つ産駒が生まれるのではと考え、高額な種付料でしたがディープインパクトを配合することにしました。

実際、ディープインパクトは米血脈の強い牝馬との配合から活躍馬を出している傾向にありますが、この配合で生まれたのがメジェルダでした。

母そして祖母も元ターファイトクラブ馬だったのと、名種牡馬ディープインパクトの牝馬ということで将来は繁殖牝馬として帰ってきてほしいという願いから、彼女もターファイトクラブでお世話になることにしました。





ダービー馬マカヒキに代表されるように、メジェルダの持つディープインパクト×フレンチデピュティ牝馬の組み合わせは、ディープ産駒の成功パターンと言えるでしょう。

これを血統面から推察すると、ディープインパクトの母父AlzaoとフレンチデピュティがいずれもNorthern Dancer系の種牡馬×Nearco/Princequilloを持つ牝馬である点が最大の理由だと思われます。

そして、この血統的特徴は既述のようにStorm Catにも当てはまります。

そのため、ディープインパクト×Storm Cat牝馬の配合からも、キズナやリアルスティールのような活躍馬が出ています。

特に、Alzao≒Storm Catという関係においては、Attica≒First Roseの組み合わせもあるので血統的な相似性は高いと思われます。







メジェルダのこの血統的特徴を活かすべく、思い切ってStorm Catクロスのできるアジアエクスプレスと配合して生まれたのが本馬です。

アジアエクスプレスはヘニーヒューズの代表産駒の一頭ですが、その血統はヘニーヒューズ産駒の成功パターンを踏襲しています。

すなわち、Eight Thirty≒War Relic≒Good Exampleによる相似クロスを持つ点です。

これら3者の血統的な関係性は、前回の記事【血統・配合】ハーランズルビーの2018(ローレルクラブ提供馬 牡 父ヘニーヒューズ)で紹介しています。

ヘニーヒューズ自身がEight Thirty≒War Relicを持っていますが、そこにWar Relic≒Good Exampleを持つランニングボブキャッツと配合されたことで、本馬の父アジアエクスプレスが誕生しました。

コンスタントに勝ち馬を出しているヘニーヒューズを父に持ち、質の高い血脈を豊富に持つ母ランニングボブキャッツから生まれたアジアエクスプレスは、日高地区でも指折りの人気種牡馬です。

供用初年度の種付頭数は175頭でしたが、それによって生まれた今年の当歳馬たちの評判が高く、今年の種付頭数は205頭に増加しました。

この状況からすると通常は次年度は種付料アップが予想されますが、それでもすでに来年度の予約が相当数に上っているようで、来年度の種付権利も早い段階で満口になるような気配です。

当場でも今年3頭のアジアエクスプレス産駒が生まれていますが、そのどれも出来が良く、父のヘニーヒューズ同様に来年度も力を入れたい種牡馬の一頭です。

さて、このような血統背景を持つアジアエクスプレスですが、メジェルダと配合したことでStorm Catを直接クロスさせることにした理由は2つあります。

一つは、母メジェルダにとってStorm Catの血がフレンチデピュティやAlzaoの血を活かす役割を果たしているため、それをクロスさせることで血統的な継続強化を狙ったこと。

もう一つは、Storm Catが母方にEight Thirtyを持つので、Storm Catクロスをつくることで父アジアエクスプレスの特徴であるEight Thirty≒War Relic≒Good Exampleを活かせる点を考えました。

実はメジェルダの2018においては、Deputy MinisterとHold Your Peaceもクロスとして持つのですが、Deputy MinisterはGood Exampleを持ちHold Ypur PeaceはEight Thirtyを持つので、父の血統的特徴を継続強化する意味でプラスに働くのではと考えています。

このように、昨年の引退時期の関係で一度しか種付できないタイミングだったとはいえ、配合的にはかなり考えた上でメジェルダに対してアジアエクスプレスを配合相手に選びました。

血統的にはある程度の才能を与えられたと考えているので、あとは馬体・気性面で順調に成長してくれることを願って飼養管理していきます。



【血統・配合】ハーランズルビーの2018(ローレルクラブ提供馬 牡 父ヘニーヒューズ)

2018年11月14日 | クラブ募集馬
今回はローレルクラブ提供馬のハーランズルビーの2018を紹介させていただきます。







現3歳募集馬で2勝しているダンケシェーン、そして現2歳で未勝利戦で2着するなどもう少しのところまで来ている募集馬ベルキューズに続く、当場から3頭目のヘニーヒューズ産駒募集となります。

また、当場も参加しているファンと牧場をつなぐサイトpacallaさんの企画で参加した「もくしでつなぐプロジェクト」にも、本馬は参加させてもらいました。


【関連記事】もくしでつなぐプロジェクト(ハーランズルビーの2018)


4月16日生まれというのは当場における今年の出産のなかでは少し遅いグループに入るので、先に生まれている当歳馬たちと比べるとやや小さめに映りますが、それでも体高は後半に生まれたグループのなかでは大きい部類です。

出産当時から立派な馬体だったので、その差が出ているのだと思います。

母のハーランズルビー自身は標準サイズの馬体をしていますが、初仔のハーランズワンダーを除いては、平均以上の馬格に成長する産駒ばかりです。

本馬も生まれたときから標準以上の馬格だったので、成長とともに立派になっていくと予想しています。

本馬は10月下旬に繁殖本場から1歳分場に移動。

最終的に当歳馬15頭が1歳分場に移動し終えて、全頭が環境に慣れ切ってから組分けをしました。

基本的には牡馬と牝馬のグループに分けたわけですが、本馬は生まれのタイミングの関係から繁殖本場では牝馬たちとのグループだったので、組分けの際は1頭だけ分かれて他の牡馬たちと合流という形になりました。

組分け直後は、1頭だけ分かれたこともあり、寂しがるなどして馬体も少しスリムに見せる時期がありました。

それでも今現在は、1歳分場に到着した頃よりも厚みが出始めているように思います。

新しい群れにも慣れて精神的にも安定しているので、このまま順調に成長していってくれそうな気配です。


父のヘニーヒューズは海外で繫養された後に日本に輸入された種牡馬で、現3歳馬が日本における初年度産駒となります。

現2歳世代と合わせて2世代+マル外という陣容ですが、それでも現時点でJRA種牡馬ランキングで第20位につけるなど、日高地区繫養の種牡馬としてはよく頑張ってくれています。

産駒の傾向としては、1400M以下に適性を示す産駒が多く若いうちは芝をこなす産駒もいますが、年齢を重ねる毎にダート適性が強くなる印象があります。

特に日本繫養後の産駒からドンフォルティス(Jpn3北海道2歳優駿)やプロミストリープ(浦和桜花賞)のような活躍馬が出てきてからは、最初からダートでデビューする産駒が目立つようになりました。

血統的特徴として、Eight Thirty≒War Relic≒Good Exampleの組み合わせを持つヘニーヒューズ産駒は活躍傾向にあります。

前述したドンフォルティスとプロミストリープはともに母父がフジキセキですが、ヘニーヒューズ×フジキセキ牝馬の配合ではEight Thirty≒War Relicが生じます。





また、ヘニーヒューズの代表産駒であるアジアエクスプレスとモーニンという2頭のG1勝ち馬は、ともに母方にCozzeneの血を持ちますが、この血もWar Relicを持っているのでEight Thirty≒War Relicができる関係です。

アジアエクスプレスに関しては、母方のDeputy Ministerを通じてGood Exampleの血も持っているので、Eght Thirty≒Good Exampleの組み合わせも持っていることになります。





当場生産馬でローレル提供馬のダンケシェーンも母方にEight Thirtyを持つので、ヘニーヒューズ自身が持つEight Thirty≒War Relicを継続強化する配合になっています。

では、本馬ハーランズルビーの2018はどうかというと、Eight Thirtyの血を含むStorm Catを直接3×4でクロスさせることで、Eight Thirty≒War Relicを継続強化する配合にしました。

母ハーランズルビーついては、その父Harlan's HolidayがEight Thirty≒Good Exampleを持っているので、この血とヘニーヒューズを組み合わせることでEight Thirty≒War Relic≒Good Exampleを形成する血統パターンになります。

このように、ハーランズルビーの2018はヘニーヒューズの血統的特長を活かした配合に仕上げています。


ちなみに母のハーランズルビーは、当場が米国キーンランド繁殖馬セールで購買した繁殖牝馬です。

父のHarlan's Holidayは、Giant's Causewayやヘネシー系(Scat Daddyなど)たちと肩を並べるほどに、Storm Cat系の一翼を担う系統として現在の米国で人気のある種牡馬系統です。

ハーランズルビー自身は2歳のうちに勝ち上がると、米G1アルシバイアディーズS(8.5F)に出走。

このレースで3番人気に推された彼女は直線よく伸びたのですが、結局はウィッキドリーパーフェクト(後に日本に輸入されて、G2ホープフルS勝ち馬ハートレーを産む)の2着に敗れました。

その後、米G1BCジュベナイルフィリーズ(8.5F)に出走しましたが、直線での伸びを欠き8着と敗れています。

翌年、3歳を迎えたハーランズルビーは、緒戦のヴァルデイルS(8F)を制して、見事ステークスウィナーの仲間入りを果たしました。

さらにG3バーボネットS(8F)に出走して、重賞タイトルを狙いましたが、結局はSummer Soireeの2着に敗れました。

ちなみに、Summer Soireeはその後デルマーオークスを勝ってG1馬になっています。

ハーランズルビーを米国のセールで初めて見たときは、非常にしなやかな歩様の馬だと感じたものです。

丸みを帯びた米国産らしい筋肉量とともに、バランスの良い好馬体とその歩様から日本適性が高いと感じて購買に至りました。

彼女のしなやかな歩様は彼女の持つHalo4×3にあるのではと思い、その特長を活かそうとサンデー系種牡馬を配合してHaloクロスを継続する血統パターンを試みてきました。

その配合から生まれた最初の産駒ヒルノアトラーニ(現2勝)は好馬体に生まれてくれましたが、大柄な馬体で俊敏性というよりはパワーで勝負するタイプに成長して、現在はダート中距離を中心に走っています。

ハーランズルビーの2018に関しては、サンデー系種牡馬以外でハーランズルビーの血統的特長を活かしたいと思ってヘニーヒューズを配合した経緯があります。

彼女がクロスで持つHaloの血、とりわけその母Cosmahの血は、ヘニーヒューズ内のTom Catと相性が良いと思っていました。





これに関してはすでにダンケシェーンで試していますが、ヘニーヒューズがサンデー系牝馬との間に勝ち馬を出していることから考えても、Tom Cat≒Cosmahはある程度有効な配合手法だと考えています。

加えて、ヘニーヒューズがHaloを持つ牝馬と配合されると、Nothirdchance(Hail to Reasonの母)の牝馬クロスができる点にも好感が持てます。


生まれてからしばらくはハーランズルビーの仔らしい品の良さと馬体の張りを感じさせましたが、離乳して今現在に至ってみるとヘニーヒューズ産駒らしい四肢の発達が見受けられて、Storm Cat3×4をはじめとする米血脈が豊富な血統パターンらしいダート向きと思える馬体になってきました。

ただ、成長とともに馬体の雰囲気も変わってきそうな印象も受けるので、また機会を見つけて情報をアップしたいと思います。



チャームアスリープ産駒のレーヴ号が初勝利!

2018年11月07日 | 情報
11月6日の船橋第6Rシーサイドジュニア特別(ダ1600)で当場生産馬のレーヴ号(牡2歳)が出走して、4戦目にして念願の初勝利を飾りました。





本馬は当場としても特に思い入れのある血統で、父セレンそして母チャームアスリープともにレーヴと同じ馬主様、所属厩舎であり、また3頭すべてが当場生産馬であります。

父セレンは南関東重賞を4勝して、馬主様のご厚意により種牡馬入り。

母チャームアスリープは南関東牝馬3冠を制した馬でしたが、このブログでもお知らせしたように今年2月に急逝しました。


【関連記事】チャームアスリープ逝く


息子となる本馬のほかに、1歳の全弟がいて、この馬がチャームアスリープにとって最後の産駒となります。

全兄のレーヴがこうして勝ち上がってくれたので、全弟の彼にも亡き母の分まで頑張ってほしいと願っています。