ロック探偵のMY GENERATION

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「辺野古 基地に翻弄された戦後」

2019-09-22 19:03:59 | 日記

 

ETV特集「辺野古 基地に翻弄された戦後」という番組を観ました。

 

昨今はジャーナリズムも劣化を指摘されますが……なかなか良質で見ごたえのあるドキュメントでした。

 

テーマは、辺野古です。

現在の泥沼状態に至るまでを、敗戦後に沖縄が米軍統治下に置かれたところからたどっていきます。

 

キャンプ・シュワブができる過程では、圧倒的な権力を持つ側の狡猾な戦略が描かれます。

 

その当時も、基地建設に対して住民の間では激しい反対運動が起きたそうですが、アメリカ側は“アメとムチ”で反対派住民にくさびを打ち込み、分断していきます。

 

反対してもどのみち勝ち目はない。だったら、基地建設を認めたうえで見返りを得たほうがいい……こうして反対派の一部を条件闘争に移行させることで、反対運動を分断。いったん基地を作りはじめれば、既成事実化し、今さら反対してもしょうがないという空気ができあがる……

 

これは、沖縄の基地をめぐる闘争において、今にいたるまで何度も繰り返されてきたことでしょう。

 

見返りをちらつかせ、反対し続けるよりは見返りを得たほうが……という方向に誘導し、住民を分断する。そのたぐいの話は、幾度もありました。

辺野古の歴史を鑑みれば、その“見返り”も結局は一時的なものでしかありませんでした。

そもそも、外国の基地に依存する経済はきわめて脆弱なものでしょう。アメリカ側の事情に振り回され、いつ生活の糧を断たれるかわからない不安定な状態です。これは果たして、見返りといえるものなのか……

 

そして、現在の辺野古では、普天間返還にあわせてということで新たな基地が作られています。

 

この工事に関しては、大浦湾に軟弱地盤があることが明らかになり、政府もそのことを認めています。

しかしながら、政府はもう計画を止めるつもりはなさそうです。

以前も指摘したとおり、そういう場所に基地を作るのは、純粋に安全保障という観点から見ても問題があるでしょう。いざ有事というときに、液状化とか滑走路が傾いているとかいうことになって使えなかったらどうするんでしょう。それとも、そんなことはありえないと言い張るんでしょうか……

大量の杭を打ち込むという工事が技術的に可能だとしても、そういうリスクがわずかでもあればそれを避けるのが安全保障ということなんじゃないでしょうか。

現状ではもはや、辺野古に基地を作るということそれ自体が目的化してしまっています。

先日、推理作家協会の作家らが抗議の声明を出した件をこのブログで紹介しましたが、そこにあったように、硬直した政府の姿勢は“異常”と表現されてもやむをえないものでしょう。

 

ドキュメントでは、旧民主党政権が県外移設を打ち出したものの、結局その方針を変更したことも描かれていました。

この件についても、その背景にあったとされる「65カイリ基準」とか米側による「大使呼び出し」という話が、いずれも後に虚偽であったことが明らかにされています。こうして、目的も、その過程も欺瞞にまみれたなかで、基地建設だけが続いているというのが実情なのです。

 

このドキュメントのなかで、「相手は巨大な怪物」という言葉がありました。

 

辺野古住民の一人が口にしたこの言葉は、じつに印象的です。

これを聞いて私は、以前このブログで書いた『ゴジラ対ヘドラ』を思い出しました。

ヘドラは、若者たちの運動を押しつぶす巨大な体制の象徴のようなものともとれると、そこでは書きました。ここでいう“体制”とは、単に政府という意味ではありません。もっと広範な、世間とか、経済とか、そういうものを含めた意味での“体制”です。

 

辺野古の基地建設に突き進む今の状況は、あの、ヘドラの醜悪な姿そのものではないでしょうか。これをなんとかできるかということで、日本という国が試されているような気さえします。

 

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