突然ですが、今回からこのブログでは、映画についても書こうと思います。
私は別に映画に詳しくもないんですが、このブログはなるべく多くの人にアピールしていこうという趣旨なので、まあ、多角経営の一環といったところです。
はじめに紹介するのは、『バーレスク』という映画。
この映画、拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』のなかでもちらっと言及されています。
一応、『ホテル・カリフォルニアの殺人』ゆかりの映画ということで。
もっとも、お読みになった方はご存知のことと思いますが、じつはこの映画、『ホテル・カリフォルニアの殺人』では、やや否定的に語られています。“アメリカンドリーム”の幻想に基づいた安易なサクセスストーリーを描いているということで……
たしかに私の中にそう評価する部分があるのも事実ではありますが、しかしそこを差し引いても、本当に面白いんです。
ストーリーは、ありきたりといえばありきたりな話。
主人公は、アイオワの田舎町でバイトしながら暮らす娘アリ(クリスティーナ・アギレラ)。
彼女はある日、意を決してLAにむけて旅立ちます。
「見回して気づいたの そこに私の人生はないって」
と、アリはいいます。
そして、LAで働きはじめたのが、「バーレスク」。
Burlesque というのは、妖艶で猥雑なショーのこと。
まさにその名の通りの、バーレスクです。
その主は、往年のスターであるテス(シェール)。
この、“落ちぶれた往年のスター”というキャラが、まずぐっときます。
バーレスクにはチャップリンみたいな感じのコメディアンもいたりして、『ライムライト』とか、そういう雰囲気を醸し出しています。
しかしこのバーレスク、実は経営難に陥っているのです。
借金を返済しなければ、いつなくなってもおかしくない自転車操業状態。やり手実業家が、買収を狙ってあたりをうろついています。
そこで、アリが活躍します。
彼女は、パワフルな歌声を披露し、一躍スターに。そして、バーレスクの業績も回復していきます。
しかし、それだけではまだ経営難を克服するには至りません。
いよいよ、借金返済の期限がせまってくる……そんななか、アリは、バーレスクを救う起死回生の策を見出します。
それはいったい何なのか……?
そこは、ネタバレになるので伏せておきましょう。
結果としてそれは成功し、バーレスクは破たんを免れます。この逆転劇で、サクセスストーリーは大団円に。
この一発逆転の爽快さと、サクセスストーリー、そしてアギレラの圧倒的な歌唱力が、この映画のポイントでしょう。
ですが、それだけではありません。
会話なんかがとてもいかしてるんです。
たとえば、借金の督促を受けたテスのもとに、店のナンバー2であるショーンがやってくる場面。
催告の書類を紙飛行機にして飛ばすテスにむかってショーンは、「たかが金だ。ただの数字」といいます。そこから、以下のようなやりとりに。
テス「嘘をいって」
ショーン「君は裁縫が上手だ」
テス「新しい嘘にして」
ショーン「君を愛してない」
こういうやりとりがいいですね。
この軽妙な会話にのせて、アリとテスの交流も描かれます。
まわりから浮いてしまう、どこか似た二人……この映画は、表通りからはじかれた者たちが自分の存在を証明するストーリーでもあるのです、
そこに、ラブロマンスもからんできます。
チープな展開ではありますが、そのチープさが、この作品にはマッチしているように思えます。これらの要素がバーレスクの猥雑さのなかに溶け込んで、この作品は名画となっているのです。