ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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『疑惑』

2022-10-07 23:07:59 | 映画

今日10月7日は、ミステリーの日。
……ということで、ミステリー系映画について書こうと思います。

去年は横溝正史原作の映画を紹介しましたが、今年は松本清張で。

『疑惑』です。


あの頃映画 the BEST 松竹ブルーレイ・コレクション『疑惑』2015/5/8リリース!

松本清張の原作で、監督は野村芳太郎――ということで、あの『砂の器』と同じ組み合わせ。また、音楽は芥川也寸志が担当と、これも『砂の器』と共通しています。


内容は、実際にあった保険金殺人事件をモチーフにしたサスペンス。
会社社長の男と若い妻が、車で海に転落。多額の保険金がかかっている夫は死亡し、妻だけが助かる。誰がどうみても保険金殺人、有罪は間違いなし……という事件の裁判を描く法廷ものとなっています。

岩下志麻、柄本明、丹波哲郎……など、キャストも豪華。
しかしなんといっても、この映画で圧倒的な存在感を放っているのは桃井かおりさんでしょう。

桃井さんが演じるのは、殺人容疑をかけられた被告人の鬼塚球磨子。

冒頭の登場シーンからエンディングにいたるまで、この鬼塚球磨子という役が、実に見事にはまっています。

最終的にどうなるかということは、例によって伏せますが……終盤では意外な展開も用意されており、サスペンスとしても上出来です。

清張作品の一つの特色は、その“徒労”にあるというのが私の持論ですが、本作にもそれは表れているでしょう。
謎を解き明かしても、それが必ずしもハッピーエンディングとはならない。まあ、人が死んでいる以上ハッピーにはならないといもいえるかもしれませんが、それにしても救いがない場合が多いように思えます。

この『疑惑』も、後味はあまりよろしくありません。
しかしそこが、清張流のリアリズムということでしょう。そのビターな味わいこそが、清張作品の魅力なのです。