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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

認知症か痴呆か

2005-08-21 10:54:45 | 認知症
昨年12月に“「痴呆」に替わる用語に関する検討会”が痴呆に変わる言葉として、「認知症」という新たな言葉を提示した。これは、痴呆という言葉自体に侮蔑的な意味があったからで、その経緯はこれまでもさまざまなところで紹介されているので、ご存知の方も多いだろう。そして、今年4月からは行政用語としても「認知症」で統一されることになった。これからは、法律からはじまりすべての書類が認知症と記載されることになったのである。

しかし、その裏で今だ「痴呆」という言葉が横行している世界があることをご存知だろうか。それは学術会である。
もともと認知症ということばが行政用語になる時に、但し書きとして学術用語としては別であることが明記されている。つまり、学術用語としては「痴呆」という言葉を使い続けてもよい、ということである。
なぜ、そうなっているのかはいくつかの理由がある。そのひとつが「症」という使い方にあるという。これまで「症」と使う時は、「高血圧」⇔「高血圧症」、「脳血栓」⇔「脳血栓症」などと「症」付けても付けなくても同義語として理解されるというルールのうえで使われていた。しかし、「認知」という感覚機能と「認知症」という言葉はまったくの別ものになってしまい、これまでの医学会のルールを完全に無視しているのだという。そのため、「認知(機能不全)症」として読み替えることができるならば、その短縮形として「認知症」でもよいのではないかという意見もあるようだ。
また、もうひとつの理由として、検討委員会の中に老年精神医学会や日本痴呆学会などの学術会からの参加がなく、事前にどのような言葉がよいかの聞き取りもなかったことがあるらしい。簡単に言ってしまえば、ないがしろにされプライドを傷つけられたということだろう。

ケアの現場に働く私たちにしてみれば、大したことではないように思えてしまうが、“先生”方にとってみれば重要なことなのかもしれない。しかし、学術会でも痴呆という言葉自体は相応しくないという意見は一致しているようで、それでも新しい言葉を考えてこなかったことに怠慢を感じてしまうのは私だけだろうか。
しかし、学術会の中でも変化はあるようで、老年精神医学会では今年度中に「認知症」で言葉を統一することになるという。その他の学会でも随時検討していく動きにあるようだ。

認知症の患者を真っ先に診断する医師が、学術用語として「痴呆」という言葉を使い続けていると、患者と接したときにも痴呆という言葉を話してしまうのではないか。そして、言葉自体に侮蔑の意味があることを理解しているのであれば、その時に患者に少しでも不快感を与える可能性はないのだろうか。人間と向き合う職業としての判断を期待したい。

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
とぼけ症 (槍投一二三)
2005-11-05 00:33:47
いつも手堅い情報提供ありがとうございます。「痴呆」急速に古い言葉になっていますね。「ぼけ」は結構まだ支持されており、三好春樹氏などは「痴呆」にもこだわって使っているようですが…。

TBさせていただきます。
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