むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

台湾の声一派こそが台湾人を誘導尋問して歪曲しているのではないか?

2009-04-19 17:11:17 | 台湾言語・族群
■NHKの編集は歪曲か?
話を番組に戻すと、ウヨクなどの批判の論点として、もうひとつ「インタビューされた人の意図に反して、一部の発言だけを取り上げ、発言の意図を歪曲した」とするものだ。
この論点は、ウヨクだけでなく、新聞記者からも聞いた。
しかし、これはテレビなどの映像メディアのもつ限界(いや、広くメディアの限界と特性)を知らない人の妄言である。
メディアというのは、活字だろうが映像だろうが、スペースや時間が限られている。映画でも、撮ったシーンをすべて映画にするわけではない。編集段階で、台本にあったシーンをカットすることもある。
新聞やテレビがある人に取材して、その発言をすべてその人の意図に完全に添うように、報道や紹介することは絶対にありえない。取材された相手は、意図とは異なることに不満であっても、それに文句を言わないのが大人の態度というものだ。
ましてテレビは、インタビューされた人間の発言の一部だけを編集して紹介するのが当然のことだ。
「柯三氏の発言をすべて使っていない」という批判は、メディア批判としては、完全に的外れだ。まして、この番組は柯三氏の個人史を紹介するものではない。だから、柯三氏のその他の発言をすべて紹介するわけにはいかない。いや、そんなことしたら、別の視聴者から「指導者でもない、たかだか町医者の見解を公共の電波を使って長々と流すな!」という文句が来るだろう。
しかも、実際、柯三氏は、ああいう発言をしているのだ。いくら「意図が捻じ曲げられた」といっても、本人が発言しているのだから、それに文句を言うのは筋違いだ。文句をいうなら、はじめからメディアの取材なんか受けるべきではない。実際、メディアの取材を拒否する人だっているのだから。
まして、おそらく本人はNHKときいて、喜んで取材に受けたのだろう。そして放映されるときにも友人や親戚に自慢し、放映されてからも、自慢しているに違いない。

■ウヨクもNHKと同じ手法で「柯三氏の怒り」を捏造していないのか?
しかもここで不思議なのは、柯三氏が本当に放映されたものに不満なら、何も日本人から電話を受けて受身に答えるのではなく、本人が放映直後からNHKに抗議の申し入れをするなり、本人の方から能動的にアクションを起こしていいはずだが、それをやっていないことだ。
伝わってくるのは、台湾の声一派が柯三氏に電話をして聞いたとする話だけだ。そして「NHKは誘導尋問して、捏造した」といっている。では、台湾の声側は「誘導尋問」や「断片的な編集」をしていないのか?そもそも台湾語を混ぜず、日本語だけで聞くことの限界やバイアスはないのか?
また、「柯三氏が怒っている」というが、いずれも日本人で電話をした人間が「怒っている」と脚色を加えているだけで、本人が怒っているというのは、どうしてそういう判断をしたのか、わからない。
日本人が「怒っている」と判断する語気や口調は、台湾人は怒っていない場合もある。逆に日本人にとっては何でもなく、気づいていないが、実は台湾人が怒っている場合も多い。
まして、台湾語ができない日本人が日本語だけで、しかも電話して、「怒っている」といっても、「電話をしてきたあなたに怒っている」のかも知れない。
そもそも80代という世代は、電話というものは、緊急連絡手段としか考えておらず、何時にかけたのか知らないが、遅い時間だったら機嫌が悪かったのかも知れない(まあその場合、台湾人は電話口に出ないことが多いが)。
まして、相手がいくら日本語世代の台湾人で日本語が流暢だといっても、現在日常的に日本語だけで生活しているわけではない。同世代で会って話すときも、日本語と台湾語のチャンポンであるのが普通だ。つまり、日本語世代の本音を聞こうと思ったら、台湾語も必須だ。台湾の声一派にそれができているとは思えない。しかも、老人は電話は苦手だ。

■台湾社会は無反応、日本人が勝手に柯三氏を利用しているだけでは
そもそも台湾人が日本統治時代をどう思っているかは、台湾人の問題であって、柯三氏が本当に自分の発言が歪曲されたというなら、柯三氏自身が能動的に抗議の申し入れをすればいいだけのことだ。今回の場合、それがなく、日本人が炊きつけている側面が強い。
しかも台湾社会は、この問題にほとんど反応していない。
台湾のネット掲示板を見ても、香港人や中国人と思しき人間ばかりが、番組も見ないで、ウヨクの言い分を鵜呑みにして、反日的な書き込みをしているだけで、台湾人自身の反応はいまのところあまり見かけない。
もちろん台湾人がこの番組を見て「反日的だと歪曲されていてけしからん」と抗議行動を起こすのであれば、私もそれをサポートしたいが、いまのところ、そんな反応は出ていない。それどころか、友人の話ではこの番組を見た若い世代の多くは、「反日的だと思わないし、別に普通ではないか」といっているという。
そう考えると、台湾人柯三氏を利用しているのは、実はウヨクのほうではないのか?

■ウヨクの皆さん、台湾人に梯子をはずされないように気をつけてねwww
さらに、柯三氏は週刊新潮のインタビューでも、日本統治時代のよいことと悪いことを50%ずつと述べている。ところが、週刊新潮が右派雑誌だからか、ウヨクは完全にスルーしている。しかしよく考えれば、悪いところも50%あったといっているわけだから、これも「新潮は反日宣伝を行った」といわないといけないことになるんだよなw。
というか、こういう言い方は本当に台湾人的だと思う。だれも敵に回したくなく、どちらにも読めるという点が。
柯三氏らあの番組に出ていた台北一中の人たちは、日本統治時代だけに生きていたのではなく、戦後の国民党支配でも生きてきた。ということは、中国人に対しては中国人が喜ぶことをいってきたということだ。さもなければ殺されていただろう。
それが台湾人なのだ。サービス精神が旺盛で、相手に合わせて立場や内容を変える。
そして、記憶力がないから、自分が発言したことも覚えていないし、したがって、自分の発言には責任を負わない。言葉が軽いのだ。
今回、柯三氏が日本人に対して「そんな意味ではない」といっているのも、台湾人らしい責任回避だと思った。柯三氏はもし外省人に抗議されたら、「日本統治時代は差別を受けたといったよ」と答えるだろう。
日本人で、まして台湾語ができない人は、日本語世代には日本語だけで話す。確かにそのほうが楽だ。しかしそれは日本人の甘えでしかない。
私はそういう甘えをしたくないから、日本語世代とはあまり付き合わないようにしているが。
そして台湾人が日本語で話すときには、かつての支配者、日本人に聞こえがいいことをいう。日本統治を賛美する。しかし同じ台湾人が、台湾語で台湾人だけと話すときは、日本人も窮屈だが、日本製品はよいとか、日本の対中外交は弱腰だとか、賞賛と批判を脈絡なしに述べている。そして同じ台湾人が中国人と中国語で話す場合には、日本統治を批判して蒋経国をほめるw。
問題は、日本語、台湾語、中国語のすべてを知り、日本人、台湾人、中国人の振りをして、彼らのいっていることをすべて聞かないと、彼らの多面性を知らないということだ。
日本人は日本人向けに話している台湾人を台湾人のすべてだと思い、中国人は中国人向けに話している台湾人を台湾人のすべてだと勘違いする。
ここに台湾をめぐる日中の悲劇がある。
ただ、誤解してはならないことは、台湾人は別に嘘つきなわけでも不誠実なわけでもないということだ。台湾人は正直で、よい人たちだ。ただし、本音がそのつど、その場の雰囲気に合わせてころころ変わり、前言ったことは覚えていないし責任も取らないだけなのだ。
それはマレー系プラス外来支配の歴史が長いという環境から自然に生まれた「台湾人の民族性」というものなのだ。
だからそうした多面性を日本人なり中国人なりの基準で、嘘や不誠実と考えるとしたら、それは民族によって誠実さの基準や方向性が異なることをわかっていないことになり、まさにそうだからこそ台湾人は日本人とも中国人とも異なる民族だということになる。

そういう点で台湾人の多面性と無責任さを知らない日本人が今回の事件で先走っても、最終的に台湾人に梯子をはずされてしまう可能性が強いと思う。

■NHKへの抗議は無駄である
当該番組は、NHKのドキュメンタリーとしては質は高いほうだと思う。テレビ番組にしては珍しく明らかな間違いはほとんどない。騒がれているのはいわば「受け止め方、視点、評価、編集のあり方の違い」であって、歴史の事実関係の指摘は多くない。
私は台湾でも日本に帰ってもあまりNHKは見ない。とくに台湾などに関係する教養番組は見たくない。
なぜなら教養番組をつくるスタッフもその問題の素人であり、専門に関係する分野だと、どうしても素人の勘違いや粗さが目立って、いらいらさせられるからだ。
好例が、シルクロードでシリアとレバノンを取り上げたときのマアルーラ村のシリア語とレバノンのマロン派についての解説が、でたらめだらけで腹がたった。
かといって、文句をいっても無駄だろう。スタッフたちは日々次々に出てくる仕事の処理に忙殺されていて、終わった番組のことなどどうでもいいからだ。というか、ほとんどの視聴者=日本人にとって、そんな細かな事実の間違いなどどうでもいい。テレビを見るだけで終わってしまう人は、そんな細かいことは覚えていない。本当に興味があれば、あとは専門書を読むなどして深めていけばいいから、テレビが間違っていても、実害はない。
今回の問題でも、台湾の声一派が視聴者センターに抗議の電話をかけているらしいが、Nスペなんてたいした視聴率がないものに何をいきりたっているのか、私にはわからない。
しかも視聴者センターは、苦情対応専門の窓口で、応対にはマニュアルがあって、「ご意見ありがとうございました」といわれるように指導されている。
NHKといえば、全国どこでも見られるし、主にヒマな爺婆が見ているから、視聴者センターには台湾の声一派のように「まじめ」なwクレームだけでなく、「ネクタイが曲がっている」「声が嫌いだ」に類する「愚にもつかない」ものまで毎日何百万件もの苦情が寄せられているのだ。そんな中で、台湾の声の主張など制作側には届くわけがない。
ひょっとして台湾の声一派は、自分たちのほうが真面目で重要だと考えているのか知れないが、暇な年寄りにとってはネクタイが曲がっていることのほうが世の中で最も重要な問題かも知れないのだから、あまり思い上がるべきではない。
というか、台湾の声一派は、マロン派に関する明らかな間違いを私が憤慨したとしても聞く耳は持つまい。それと同じことは、台湾に関心など薄い大多数の日本国民が、台湾の声の「抗議行動」をたいした問題ではないと見ていると、なぜ、当人たちは考えないのだろう?
本当に実効性のある抗議をしたいなら、制作局長の自宅を探りだして、内容証明付で抗議文書を送りつければいいのに、そんなことも思いつかないから、素人は困るんだよねw。


■結論 番組見て「台湾は反日だ」と見方を変える人は少なく、過剰反応する台湾の声はむしろシナ人的w
結論からいって、台湾の声一派が「番組は親日派台湾人を反日派だと歪曲するための印象操作で、視聴者をミスリードさせるもの」といった心配と批判をしているのはあたらない。
私自身はこの番組を見て台湾人が反日だという印象を作ろうとしているようには見えなかった。
奥ゆかしい日本人として当たり前の反省的な視点で創っているだけだ。それが左翼になるなら、日本人の9割は左翼になってしまうw。
よしんば反日捏造だったとしても、テレビ番組は映像が一番印象に残るものであって、字幕や人の話の細かなところに注目して記憶している人など僅かだ。
逆にあの番組では末尾に登場した元日本兵の老人は、いずれも笑顔だったことに、普通の視聴者は印象を残すだろう。つまり、日本への恨み言もいっていても、若い時代の思い出として懐かしい部分と、やはり日本統治はプラス面もあったという部分が、あの笑顔からわかるのだから。日本のドラマのつくりもそうだが、日本人というのは、そうした表情をよく見ているものだからである。

ぎゃくに台詞がどうのとか、言葉をやたら重視し、理屈を重視する台湾の声一派は、心性がよほどシナ人的だ。言葉で批判的なことを言うと反日だと思われると解釈するなど、彼らは何よりも「理屈」を重視している。そこには、大和魂(源氏物語に初出の本来の意味での)はなく、唐心しかない。
なるほど、だから台湾の声一派は、口先だけで日本が好きなどといって、実践ではほとんど日本人と共同作業などせずに蒋経国を顕彰して喜んでいるシナ人みたいなおっさんの李登輝が好きなんだろうね。台湾の声も、李登輝も、理屈や言い回しに目がいくシナ人。
大和魂をもった日本人の多数は、表情とか動作とか雰囲気をより注意しているものなんだよ!

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