むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

「ゲド戦記」を観て

2007-03-05 00:53:24 | 芸術・文化全般
スタジオ・ジブリの最新作「ゲド戦記」が今になって台湾で上映されている。始まったのは旧正月前だったと思うが、今日ようやく見に行った。
いろいろネット情報で見ているかぎり、評判はそれほどよくないようだが、私自身はわりと良かったと思う。もちろん決して傑作と呼べるものではないし、映像自体は荒削りな部分もあるが、話のテンポも悪くなく、少なくともエンターテインメントとしては飽きなかった。
メッセージ性としては「風の谷のナウシカ」と「千と千尋の神隠し」を合わせたような、生態系破壊に対する警告と登場人物の人間的成長(この作品では「生の価値」も加わるというか、それがメーンだが)、登場人物のキャラは「天空の城ラピュタ」や「カリオストロの城」を彷彿させた。また、ジブリ以外では「指輪物語」も連想させる。また、原作とは違うというが、原作は読んでいないので知らない。
まあまあ良かったとはいえ、それほど何度も見たいとは思わない。もちろん、明らかに駄作の「ハウルの動く城」なんかよりははるかに良い。だが、劇場・ビデオ・テレビや台湾語吹き替えビデオなどで計20回は見たであろう「風の谷のナウシカ」、同じく計10回は見たであろう「天空の城ラピュタ」、数回は見た「カリオストロの城」「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」「もののけ姫」あたりと比べたら、やはり劣る。
特にメッセージ性についていうと、まだまだ宮崎吾朗の修行が足りないのか、まるで韓国人のように能書きが多くて説教くさいわりには、あまり心に訴えかけるものがなかった。もちろん、ジブリ作品で社会性やメッセージ性の強いものには、往々にして説教くさい傾向があるのだが、ナウシカやラピュタや千尋はそれなりの深みは感じられるし、だからこそ何度も鑑賞に堪えられるのだと思う。しかし、この作品は台詞に関しては台湾人の観客すら白けていたくらいの薄っぺらさだった(そういえば台湾人は、笑えるようなものではない真面目なこの作品でもひそひそ笑いをよくしていた、やっぱり台湾人は能天気だ)。また、ヒロイン・テルー役の声も新人らしく下手だった。せっかく中世欧州を思わせる背景や登場人物のキャラ設定も悪くなかっただけに、もっと台詞に気配りしてほしかった。

ただ、今回は台湾人の鑑賞態度で関心したことがある。封切からだいぶたっているのに、観客は4割は入っていてそこそこだったことがまず驚いたが、評価できる点は観客のうち私を除いた4人くらいがエンドロールをしっかり見ていたからである。しかも制作スタッフで韓国人の名前がずらっと並ぶと「おお、韓国人がやっている」などと声を出していた。
台湾では、普通観客はエンドロールを見ない。これは映画を見る態度としては非常にけしからんことだと思って、毎回台湾で映画を見るたびに憤慨している。だが、これまでの経験で、台湾でエンドロールをちゃんと見た人がいたのは、やや奇妙な内容のドイツ映画のときだけだった。ドイツ映画と同様に、映画通かアニメヲタクなのかも知れないが、それでもちゃんと台湾でもエンドロールを見てくれるまともな観客がいることは久しぶりに気持ちが良かった。


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