数理論理教(科学教)の研究

数理論理(科学)はどこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか、少しでも考えてみたいと思います。人文系

免疫(9)白血球の種類、血液細胞の起源はマクロファージ?

2023-09-02 10:48:59 | 免疫
1.白血球の種類 
 白血球とは、外部から侵入した異物(細菌・ウイルスなど)や自己の細胞が変異(腫瘍細胞や老化細胞など)したものを排除・分解する免疫細胞で、ヒトでは造血幹細胞から作られます。
 種類としては以下のようなものがあります。
(1)単球
 単球は、最も大きなタイプの白血球であり、マクロファージ(食細胞、抗原提示も行う)や樹状細胞(抗原提示細胞)に分化します。単球の外観はアメーバのようであり、細胞の中には大量の抗菌物質などの顆粒が入っています。ヒトでの単球の白血球に占める割合は2%から10%で、免疫機能において複数の役割を果たします。
 単球は骨髄の単芽球と呼ばれる造血幹細胞の前駆細胞から作られ、血流中を約1-3日間循環した後、通常は体内の組織に移動して、マクロファージ又は樹状細胞に分化します。また単球の半数は、脾臓に予備として貯蔵されているようです。
 免疫系において、単球(マクロファージ、樹状細胞)は以下のような機能を果します。
●食作用
 単球はパターン認識受容体からの情報や病原体に結合した抗体や補体を目印として、病原体を取り込み消化・破壊します。
●抗原提示
 単球は食作用によって分解された病原体の断片をMHC分子を介して細胞表面に提示して、それを認識したTリンパ球を活性化させ、獲得免疫(液性免疫(抗体)・細胞性免疫(キラーT細胞))を始動させます。
 単球は警戒情報のサイトカイン(情報伝達物質)を産出して放出します。
 
(2)好中球
 顆粒球(抗菌物質などを含む)と呼ばれるものの一つで、侵入した細菌や真菌類を貪食(取り込み)して殺菌します。白血球全体の60~65%を占め、最も多く存在する食細胞です。
 細菌などが侵入するとまずマクロファージや肥満細胞が対応して、警戒情報のサイトカインを放出して、感染細胞を炎症化させます。好中球はその警戒情報をキャッチして、血管を遊走し、炎症化した細胞に行って食作用を行います。細菌類を食作用した好中球はやがて死んで、その死体が膿になります。膿はマクロファージなどが処理します。
 
 (3)好塩基球
 好塩基球は白血球の中で占める割合が0.5%にすぎず、少し前まではその役割が良く分かっていなかったようです。
 好塩基球も顆粒球の一つで、顆粒の中にはヒスタミンセロトニンヘパリン(血液凝固阻害)が含まれています。 好塩基球はいろいろな炎症性反応に関係しているようで、アレルギー反応を引き起こします。

「好塩基球は慢性アレルギー炎症を誘導する細胞だった!!
 …好塩基球がIgE依存的慢性アレルギー炎症をひきこす主役であることをつきとめました(Immunity, 2005)
 好塩基球はアナフィラキシー・ショックにも関係していた!!
 …私たちの最近の研究により、IgEが関与する全身性アナフィラキシーにおいてはマスト細胞が、IgGが関与する全身性アナフィラキシーにおいては好塩基球が重要であり、即時型アレルギー反応である全身性アナフィラキシーにおいて、好塩基球はマスト細胞とは明らかに異なる役割を果たしていることが判明しました(Immunity, 2008)
 外部寄生虫であるマダニに対する免疫に好塩基球が重要だった!!
                  (引用終わり)」
(4)好酸球
 好酸球は顆粒球の1つであり、I型アレルギーや寄生虫の感染などで増殖します。好酸球は好中球と同じように走行し、抗菌物質(顆粒球)を放出したりします。なお好酸球はサイトカイン(IL-10など)を放出して免疫反応を調節しているとも見られいます。 
 なおI型アレルギーとは、IgEというタイプの免疫ブログリン(抗体)が肥満細胞や好塩基球に結合し、そこに抗原が結合すると、好塩基球などからヒスタミンやセロトニンが放出されることによって、血管拡張・血管透過性亢進などが引き起こされ、浮腫や掻痒などの即時反応型のアレルギー症状が出るものです。
 
(5)リンパ球
 リンパ球には、獲得免疫を担うT細胞(司令塔のヘルパーT細胞・細胞性免疫のキラーT細胞)やB細胞液性免疫の抗体を産出)、また自然免疫であるナチュラルキラー細胞(NK細胞)があります。
 獲得免疫は脊椎動物が持つ高度特異的(病原体の個別具体的な特徴を認識できる)な免疫システムです。一度、病原体(抗原)が侵入すると、その病原体の標識に合致した細胞(T細胞・B細胞)がコピー保存(記憶)され、再度の侵入のときは即時に免疫システムを発動できます。
 NK細胞は、大型の顆粒性(抗菌物質を内蔵する)リンパ球であり、独自に細胞の異常(腫瘍細胞、癌細胞など)を認識する複数の受容体を持ち、それらの情報から異常細胞を攻撃します。NK細胞は自己細胞を傷害するため、誤って正常な自己細胞を攻撃しないように厳密に制御されているようです。NK細胞はサイトカイン(インターフェロンなど)の放出などにより活性化されるようです。 

2.白血球など血液細胞の起源はマクロファージ?
 この複雑な白血球はどのようにできたのでしょうか?それについて、すべての動物が持つマクロファージが起源なのではないかとの研究もあるようです。
 全ての動物ではCEBPαという転写因子(DNAに結合するタンパク質で遺伝子の転写を調整する)が唯一共通してあり、それが発現するとマクロファージになってしまうので、高等動物では様々な血液細胞を作るためにCEBPαが抑制されているとのことです。
「赤血球や血小板、好中球、マクロファージ(食細胞)、リンパ球など、体内には様々な血液の細胞が存在しますが、その進化的起源については不明な部分が多く、マクロファージはほぼ全ての動物にも存在することから、「マクロファージが起源であろう」と漠然と推測されてきただけでした。本研究では、マウスから単細胞生物にまで渡る広範な生物種の遺伝子発現状態を包括的に比較し、血液細胞の起源がマクロファージであること、その遺伝学的特徴が単細胞生物から保存されていることを突き止めました。 


…脊椎動物において、赤血球や T 細胞などの多様な血液細胞がいかにして出現したのかの解明に挑み ました。赤血球や、巨核球、T 細胞、B 細胞では、CEBPαが発現すると、もとの状態を失ってマクロファージ へと転換してしまいます。したがって、これらの血液細胞では、CEBPαは抑制され続けなければなりません。 どうやって CEBPαが抑制されているのかをマウスを用いて調べたところ、赤血球や、巨核球、T 細胞、B 細胞 に共通して、ポリコーム複合体 が抑制していることが明らかとなりました。マウスの血液細胞で、ポリコ ーム複合体の構成蛋白である Ring1A と Ring1B を欠失させてポリコーム複合体の機能を失わせると、赤血球、 巨核球、T 細胞、B 細胞において CEBPαの発現が上昇し、マクロファージへと転換してしまうことがわかり ました。
(引用終わり)」
「造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう; hematopoietic stem cell - HSC)とは血球系細胞に分化可能な幹細胞である。ヒト成体では主に骨髄に存在し、白血球(好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球、マクロファージ)、赤血球、巨核球、血小板、肥満細胞、樹状細胞を生み出す。血球芽細胞、骨髄幹細胞ともいう。幹細胞の定義として、一個の細胞が分裂の結果2種類以上の細胞系統に分化 (differentiation) 可能であると同時に幹細胞自体にも分裂可能であり(self renewal: 自己複製)結果として幹細胞が絶える事なく生体内の状況に応じて分化、自己複製を調整し必要な細胞を供給している事になる。この過程を造血という。 
 血球系の細胞には寿命があり、造血組織より供給されなくなると徐々に減って行く。この寿命は血球の種類によって異なり、ヒトでは赤血球(約120日)、リンパ球(数日から数十年)、好中球(約1日)、血小板(3~4日)などである。ヒトの造血組織は骨髄内に存在するが、全ての骨の骨髄で造血が行われる訳ではなく、胸骨、肋骨、脊椎、骨盤など体幹の中心部分にある、扁平骨や短骨で主に行われる。その他の長管骨の骨髄では出生後しばらくは造血機能を持つが、青年期以降は造血機能を失い、加齢とともに徐々に辺縁部位が脂肪組織に置き換わって行く。最長の大腿骨でも25歳前後で造血機能を失う。なお、発生直後から骨髄で造血されているわけではなく、骨髄造血が始まるのは胎生4ヶ月頃からである。それ以前は初期は卵黄嚢で、中期は肝臓と脾臓で造血される。なお、肝臓と脾臓は造血機能を完全に失うわけではなく、血液疾患時には造血が見られることもある。骨髄には造血細胞だけでなく、脂肪細胞、マクロファージ、間葉幹細胞などが存在し、造血細胞の中にも、分化した上記血球系細胞およびそれらの前駆細胞が存在している。多分化能を保った造血幹細胞はこれらの中のごく一部であり、最新の学説においては、骨組織と骨髄の境界領域に高頻度に存在し、骨組織内の骨芽細胞(osteoblast)との接触がその維持に重要と考えられている。(造血幹細胞ニッチ) 」

「白血球(はっけっきゅう、英: white blood cellあるいは英: leukocyte)とは、生体防御に際した免疫を担当する細胞である単球(マクロファージ)、リンパ球、好中球、好塩基球、好酸球の5種類を含んだ総称的物質を指す。
この細胞成分は、外部から体内に侵入した細菌・ウイルスなどの異物の排除や、腫瘍細胞・役目を終えた細胞の排除及び分解殺失などを役割とする造血幹細胞由来の細胞である。
 血液検査などではWBCと表されることが多い。
 大きさは6から30µm(マクロファージはそれ以上)。数は、男女差はなく、正常血液3,500~9,500/μL(1 µLあたり、3,500から9,500個)程度である。
…末梢血内には顆粒球・リンパ球・単球があり、顆粒球はギムザ染色による染色のされ方の違いによって好中球、好酸球、好塩基球の3つに分類される[1]。
したがって末梢血内の白血球は通常、好中球・好酸球・好塩基球・リンパ球・単球の5種類とされる。
 顆粒球は骨髄で産出され、末梢血内の白血球の半分から3/4程度を占める[。細胞質には殺菌作用を持つ顆粒が存在する。リンパ球は末梢血内の20から40%を占め、単球は3から6%ほどを占める。
 組織内には単球の分化が進み組織ごとに適応し、異物の呑食・不要になった体細胞の処理、体液性免疫細胞への抗原提示、サイトカインの放出などさまざまな役割を果たすマクロファージが存在する。」

「単球は、アメーバのような外観で、顆粒を細胞質にもつ。アズール顆粒(azurophil granules)をもつ単核の白血球の1つである。単球の核の典型的な形状は楕円形であり、豆あるいは、腎臓のような形をしている。この特徴で顆粒球と見分けられる。単球は、人体の全ての白血球の2%から10%を占め、免疫機能において複数の役割を果たす。単球の役割には
  1. 通常の条件下で常在マクロファージを補充すること
  2. 組織内の感染部位からの炎症に応答して約8-12時間以内に移動していくこと
  3. マクロファージまたは樹状細胞への分化
が含まれる。成人では、単球の半数は脾臓に備蓄されている[2]。 単球は、一般に、大きな腎臓のような核が染色されることで同定される。これらは適切な組織に入った後にマクロファージに変化する。その後、血管の内皮で泡沫細胞(foam cells)となる場合ある。
 単球は、骨髄の単芽球と呼ばれる前駆細胞から生産される。単芽球は、造血幹細胞から分化する。単球は血流中で約1-3日間循環し、次いで通常は体内の組織に移動する。単球は、血液中の白血球の3-8%を占める。単球の半数は、脾臓の中の「red pulp's Cords of Billroth(脾臓の中の一部の名称)」でかたまって、予備として貯蔵されている[2]。単球はいろいろな組織で、異なるタイプのマクロファージに成熟する。単球は、血液に含まれる最大の細胞である。
血流から他の組織に移動する単球は、組織に常在するマクロファージまたは樹状細胞に分化する。マクロファージは組織を異物から保護する役割を担っているが、心臓や脳などの重要な器官の形成にも重要であると考えられている。マクロファージは、大きな平滑な核をもち、細胞質が広い領域を占め、異物を処理するために多くの小胞を細胞内部にもっている。
 単球およびマクロファージ、樹状細胞は、免疫系において3つの主要な機能を果たす。 食作用、抗原提示、およびサイトカイン産生である。 食作用では、微生物および粒子を取り込み、その物質の消化および破壊をする。 単球は、病原体を認識するパターン認識受容体を介して直接微生物に結合することに加えて、病原体に結合する抗体または補体などの中間タンパク質を目印に食作用ができる。 そのように標識されることをオプソニン化という。単球は、抗体依存性細胞障害の細胞毒性を使って感染宿主細胞を死滅させることもできる。Vacuolization(異物が入っている小胞)は、異物を食作用で取り込んで間もない細胞に存在する。
 …食作用での消化の後に残っている微生物断片は、抗原として役立ち得る。断片はMHC分子に取り込まれ、単球(およびマクロファージおよび樹状細胞)の細胞表面に輸送される。この過程は抗原提示と呼ばれ、Tリンパ球の活性化をもたらし、Tリンパ球が抗原に対する特異的免疫応答を行う。他の病原体の成分は、単球を直接活性化することができ、まずは炎症性サイトカインの、そして後に抗炎症性サイトカインの生成をもたらす。 単球によって産生される典型的なサイトカインは、TNF、IL-1、およびIL-12である。
 
ヒトの血液中には、少なくとも3つのタイプの単球が存在する
  1.  古典的単球は、CD14細胞表面受容体の高レベル発現によって特徴付けられる(CD14++ CD16-単球)。
  2. 非古典的単球は、CD14の低レベルの発現、およびCD16受容体の発現を示す(CD14+ CD16++単球)。[4]
  3. CD14の高レベル発現およびCD16の低レベル発現を伴う中間単球(CD14++ CD16+単球)。」
「顆粒球は多形核白血球とも呼び、好中球・好酸球・好塩基球が含まれる。顆粒球の特徴は、微生物を殺したり組織を消化する成分を含む顆粒を持つことである。
 顆粒球のもつ顆粒には、アズール顆粒(一次顆粒)と特異顆粒(英語版)(二次顆粒。好中球の場合は三次顆粒もある)がある。特異顆粒は顆粒球のみにみられるもので、特異顆粒の染色上の挙動により、顆粒球は、好中球(微細な赤褐色の顆粒)、好酸球(粗大な橙赤色の顆粒)、好塩基球(粗大な青黒色の顆粒)の三種に分けられている。
 全ての顆粒球に、一次顆粒とよばれるアズール顆粒が存在する。 
 一次顆粒は、各種の抗菌物質を大量に含有しており、食胞と融合して貪食された微生物を殺すのに重要な役割を果たしている。例をあげる:
  • ミエロペルオキシダーゼ:過酸化水素と塩素イオンから次亜塩素酸イオンを生成して殺菌作用を発揮する。好中球の乾燥重量の5%程度存在を占め、膿が緑色に見える原因。
  • ディフェンシン:陽イオン性の蛋白で各種の細菌、真菌、ウイルスを殺す作用があり、好中球の蛋白のほぼ5%程度を占める。
  • リゾチーム:細菌細胞壁のペプチドグリカンを分解する(リゾチームは特異顆粒にも含まれている)。
  • アズロシジン:抗菌・抗真菌活性を持つ。
 一次顆粒は、その他、好中球エラスターゼ、カテプシンG、などのプロテアーゼ(蛋白分解酵素)も含んでおり、細胞外に放出されて、病原体の除去や局所の炎症過程の制御に関与する。」

第7話_自然免疫系の仕組み
「自然免疫系の仕組み
 免疫は、大きく自然免疫系と獲得免疫系に分けられ る。自然免疫とは、体に最初から備わって いる仕組みのことで、病原体が侵入して来 たらすぐに働けるのが特徴である。自然免疫系では、細菌に共通の成分だとか、ウイルスに共通する成分などと結合できる分子が用いられている。
…自然免疫系の仕組みは、 脊椎動物、無脊椎動物を問わず動物界に広くみられるものである。最前線で働いているのは、抗菌ペプチドやリゾチームなどの ような、異物の認識能力と攻撃能力を兼ね備えた分子である。主に上皮系の細胞によって産生され、血液中や粘液中 に存在している。次は自然免疫系の主役、 食細胞である。食作用においては、食べる べきものかどうかを見分けるためのレセ プターや、病原体側にくっついて「味付け役」をする分子が働いている(図2-2、 図2-3)。他に、ナチュラルキラー(NK)細胞という、他の細胞を殺す事ができる細胞も働いている(図2-4)。この細胞は、 感染などで傷害を受けた細胞を見分ける レセプターを出している。
自然免疫系と獲得免疫系をつなぐ仕組み
 自然免疫系の仕組みの中には、病原体のセンサーとして働いて、「病原体来襲」の 警報を出す事に貢献する分子がある。1990 年代後半に発見されたトル様受容体 (TLR)という分子群は、主に食細胞が出している。10 種類くらいあり、 バクテリアやウイルスの成分を分業して 感知している。一方、食細胞を含む体の多くの細胞は、細胞内に病原体の存在を感知するレセプターを持っている(図2-6)。 NLR や、RLR と呼ばれる分子群である。
 これらの センサー系は自然免疫系の反応の中で働 くだけでなく、獲得免疫反応の始動役としても働く。

自然免疫系と獲得免疫系の連携  
…ある病原体が感染し たとき、まず抗菌物質が作用し、さらに食細胞が貪食する。感染細胞は NK 細胞が殺傷する。抗原を取り込んだ樹状細胞は TLR などのセンサー分子 で活性化され、活性化さ れた樹状細胞は、その病原体に特異的に反応できるキラーT 細胞 とヘルパーT 細胞を活性化する。キラーT 細胞は抗原特異的に感染細胞を殺す。 ヘルパーT 細胞は、食細胞と B 細胞を「抗 原特異的に」活性化する。これは第5回で 述べたとおり、抗原を取り込んだ食細胞や B 細胞だけを活性化するからである。ヘル パーT細胞はNK細胞やキラーT細胞も活性 化するが、こちらは必ずしも抗原特異的で はない。これらのうち食細胞や NK 細胞に 働きかける部分は、自然免疫系の反応を増 強する作用であるといえる。 活性化された B 細胞は、抗体を産生する。 抗体は病原体に結合して感染能力を無くしてしまえるので、それは獲得免疫系だけ で完結した反応といえよう。一方、抗体は 病原体と結合することで食細胞に食べて もらうための味付け役をしたり、補体とい う分子を呼び込んで細菌を殺傷したりも する。この時は、最終的には自然免疫系の 仕組みが使われている事になる。 」

免疫学入門 | Rebirthel
第16話_いろいろな生物の免疫の仕組み
「まず動物のおおまかな分類を解説する。 構造的に、口がないもの(海綿動物)、口が肛門を兼ねるもの(腔腸動物)、口と肛門があるものに分けられ、口と肛門のある ものの中では発生過程で口が先にできる のが前口動物で、後にできるのが後口動物 である(図 1)。 全ての動物は自然免疫系を有するが、獲得免疫系を有するのは脊椎動物だけで、種の数としては動物界全体の数%にすぎな い。ほとんどの無脊椎動物は自然免疫系だ けで生きているのである。
…軟骨魚類以上の脊椎動物は、すべて同じ タイプの獲得免疫系を有している。種による違いをみていこう。全ての種において T 細胞は胸腺でつくられており、T 細胞系は 大枠ではほぼ同じである。
…一方 B 細胞のつくられ方は、種による違いが大きい。…マウス やヒトでは遺伝子断片がランダムに組み 換えられる様式で多様性がつくられる。しかしニワトリでは多様性は組み換えでは 生じず、遺伝子変換と体細胞超変異でつく られる。前者は一度できた抗体遺伝子の一 部分を後で入れ替えるという様式で、後者は点突然変異を誘導するという様式である。哺乳類でもウサギ、ウシのように主に 遺伝子変換と体細胞超変異で多様性を得 る種もいる。つくられる場所も、マウスや ヒトでは骨髄だが、ニワトリではファブリ キウス嚢という肛門の近くの器官、ウサギ では虫垂、ヒツジでは腸管のパイエル板と、 大きく異なっている。」





















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XBB対応型ワクチンの危険性

2023-08-25 16:19:50 | mRNA・DNA型コロナワクチン公害(戦争)

 XBB対応型ワクチンを接種されようとされている方は、是非下記の動画を見てご自身でよくもう一度検討して下さい!

 村上名誉教授:
「このグラフを見ると、オミクロンBA二価よりも、確かに XBB 一価ワクチンをブースターで打つと、(中和抗体が)増えてますよね、と思うじゃないですか。444が 1800に増えていたり。4倍ですよね」
「しかし、これはですね。グラフが対数軸だから、こう見えるだけであって、これを対数じゃないグラフにするとこうなるんです」
村上名誉教授:
「こうなるんです。これ詐欺ですよ。これって、まったく(中和抗体レベルが)上がってないというように言うべきなんです」
「ほんのちょこっと増えたかな、ようやく原点から少し上がったかな、というような感じなんです。(中和抗体レベルは)ほぼゼロですよ」
「常識的に考えると、このレベルで抗体が増えても、まったく効果なしです。不活性もできない、感染も抑えられない、一切効かない」
村上名誉教授:
「それから、もうひつの問題は、XBB単価ワクチンのスパイクというのは、古い抗体にまったく反応できないんですよ」
(武漢型)抗体は、(XBBのスパイクタンパク質を)不活性化できないんですよ」
「XBBのスパイクを不活性化できないということは、せっかくメッセンジャーRNA ワクチンを打って、スパイクの IgG (※ 抗体の機能を持つタンパク質 / 免疫グロブリン)が作られていても、その抗体は、新たに接種した XBB のスパイクをまったく不活性化できないと」
「ということは、スパイクの毒性がもろに発揮されるということなんです」
 
(質問) XBB型スパイクタンパクというのは、武漢型と似たような構造なのですか?
村上名誉教授:
「かなり違いますね。ほとんど似ていないです」
(質問) その毒性を調べた結果の報告はないですよね?
村上名誉教授:
「毒性に関しては調べた報告はないのですけれど、もうひとつ言えるのが、ACE2 (※ スパイクタンパク質が受容する部位)という受容体がありますよね。その親和性がすごく上がっているんですよ。60倍とか 70倍上がっているんです」
 
(質問)つまり、ワクチンとして打ったスパイクが体中に回るけれども、その抗体ができないがために、ワクチンとして打った XBBスパイクタンパクが非常に毒性を発揮するだろうということですね?
村上名誉教授:
「まったく不活性化できないまま体中を回ってしまうので、本来あるべきスパイクの毒性を 100%発揮するということが恐いわけです」


「米国国立衛生研究所(NIH)によると、HLA-B15:01を持つ多くの人々のT細胞は、季節性コロナウイルスに過去にさらされたことがあるため、すでにSARS-CoV-2を認識できることが示唆されました。このSARS-CoV-2を認識する能力によって、彼らの免疫システムはウイルスに素早く反応し、感染症状を引き起こす前にウイルスを排除することができました。 
…要するに、NIHは3年以上遅れて、(毎年流行する風邪やインフルエンザに常に関与してきた「一般的な」)コロナウイルスとの接触がSARS-CoV-2に対する免疫につながることを認め、これを「無症状の症例」というおとぎ話に基づいた画期的な発見として売り出しているのです。 」
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免疫(8)インターフェロン インターフェロン抑制とウイルス

2023-08-25 09:56:42 | 免疫
1.インターフェロン 
 情報伝達物質(サイトカイン)の1種であるインターフェロンは、1954年に日本の長野泰一氏と小島保彦氏が「ウイルス干渉因子」として発見されました。
 ウイルス感染により、Toll様受容体(TLR)のTLR3、TLR7、TLR9(エンドソームに存在)やRIG-IMDA-5らのパータン認識型の受容体が情報を感知すると、I型インターフェロンが活性化されます。また様々な抗原が侵入したときに産生されるIL-1、IL-2、IL-12、TNF、CSFなどのサイトカインによっても、インターフェロンは誘導されます。
(1)IFN typeⅠ (Ⅰ型インターフェロン)
 I型インターフェロンには、インターフェロンα(IFN-α)、インターフェロンβ(IFN-β)などがあります。
  一般的にインターフェロンというと、このⅠ型インターフェロンのことをいいます。Ⅰ型インターフェロンには主に3つの機能があります。
 ①直接ウイルス複製を抑制する。
  ●RNaseL(リボヌクレアーゼ L)の活性化により、ウイルスのmRNAを
   分解する。
  ●真核生物蛋白質合成開始因子 eIF-2α(eIF2S1)をリン酸化してウイルス
   ペプチド鎖の合成開始を阻止する。
  ●その他、MxAが誘導されて、ウイルス感染細胞のアポトーシスの促進や
   ウイルス増殖の抑制が行われます。
 NK細胞がウイルス非感染細胞を攻撃しないように、MHCクラスI分子
  の発現を増加させる。
 ③NK細胞を活性化させてウイルス感染細胞を除去する
 
(2)IFN typeⅡ(2型インターフェロン)
 II型インターフェロン(IFN-γ)は、免疫系の細胞によって分泌されて、マクロファージを活性化します。

2.ウイルスによるインターフェロン抑制
 ウイルスにはインターフェロンを抑制する機能を持つものがいるようです。
インターフェロンの抑制方法としては、(1)IFN 結合性蛋白の産生、(2) JAK/STAT 系に関わる蛋白の分解、(3)JAK/STAT 系に関わる蛋白の活性化阻止、(4)活性化転写因子の核内移行の阻害、(5)JAK/STAT 系のネガテブ制御因子の誘導などがあるようです。
 スペイン風邪を復元して実験した結果では、インターフェロンが抑制されていたことが分かりました。
 また新型コロナウイルスも、インターフェロンを抑制する機能を持っているようです。

 
「…新型コロナウイルス感染ではⅠ型インターフェロンがうまく作られないことがあるようです。…ウイルスが作るタンパク質の一つであるORF3bが、宿主細胞のⅠ型インターフェロン遺伝子の活性化を抑えて、Ⅰ型インターフェロンの産出を抑えます。また、同じくウイルス由来の別のタンパク質PLProが、ORF3bとは別のメカニズムで、Ⅰ型インターフェロン遺伝子の活性化を抑え、結課としてⅠ型インターフェロンがうまく作られなくなります。
 Ⅰ型インターフェロンは、ウイルス増殖を抑えるだけでなく、周囲の細胞に対して炎症性サイトカイン産生を促してウイルスに対する炎症反応を促進する役目があることから、Ⅰ型インターフェロンが十分にできないと、抗ウイルス反応がうまく起きないだけでなく、風邪症状も起こりにくくなり、その間にウイルスは局所で増えていくことになります。」

「…驚くべきことに、SARS-CoV-2のORF3bタンパク質は、SARS-CoVのORF3bタンパク質よりも強いインターフェロン阻害活性があることを見いだしました。また、コウモリやセンザンコウで同定されている、SARS-CoV-2に近縁なウイルスのORF3bタンパク質についても同様に解析した結果、SARS-CoV-2のORF3bタンパク質と同様、強いインターフェロン阻害活性があることを明らかにしました。」  

「ORF3bはサルベコウイルス亜属のコロナウイルスに見られる遺伝子で、短い非構造タンパク質をコードしています。これはSARS-CoV ( SARSという病気を引き起こす) とSARS-CoV-2 ( COVID-19を引き起こす)の両方に存在します …インターフェロンアンタゴニストと同様の効果がある 」

「パパイン様プロテアーゼ(パパインようプロテアーゼ、英: papain-like protease、PLpro)は、コロナウイルスの複製に不可欠なシステインプロテアーゼで、CAグループペプチダーゼ(C16ファミリー)に属する。 
…PLproの触媒ドメインの分子構造は、「広げた右手」がN末端で「ユビキチン様」ドメイン(UBL)に結合して構成されている。PLproの構造は、脱ユビキチン化酵素(DUB)の構造と似ている。さらに、PLproの酵素活性のin vitro特性評価によって、このタンパク質様プロテアーゼはユビキチン(Ub)およびUBLのISG15(英語版)(インターフェロン誘導遺伝子15、interferon-induced gene 15)タンパク質を認識して、加水分解することがわかった。
UbとISG15はどちらも、ウイルス感染に対する宿主の自然免疫系の免疫応答のシグナル伝達において重要な役割を果たしており、これらの欠如はウイルス増殖に有利に働くことが分かっている。」


 「もし私たちがウイルスと呼ぶ病原体が生き物というなら、ウイルスを人工合成した彼らは生き物を創造した「神」になるのだろうか。2005年秋、インフルエンザ・ウイルスを再合成してみせた米陸軍病理研究所のJ・K・タウベンバーガーたちのことである。
 スペイン風邪を引き起こしたウイルス…1997年、アラスカから持ち帰った組織片からほぼ完全なウイルスを発見したタウンバーガーは歓喜して、ウイルスの遺伝子を解読し始めた。…すべての解読を終えたのは2005年。解読がどれほど大変だったかは歳月が示している。
 タウンバーガーたちは…比較的、簡単にDNA版のウイルス遺伝子を作ることができた。彼らに協力してウイルスの遺伝情報をもとにDNAを作り、これをプラスミドに組み込む重要な仕事をこなしたのは米ニューヨークのマウント・サイナイ医科大学の研究者たち。そのプラスミドを人の腎臓細胞の中に注入するという最後の仕上げ的な作業を担ったのは、世界の感染症対策の総本山と目される米疾病管理センター(CDC)のテレンス・タンビーらだった。
…ここからのプロセスはウイルスが感染した細胞の中で増殖するのと同じだ。
…復元されたウイルスは予想通り、致命的な毒性を持っていた。タンビーたちが、復元したウイルスを実験動物のネズミに感染させたところ、数日後にはネズミの肺に通常のインフルエンザ・ウイルスと比べ数万倍のウイルスが発生。ネズミは肺炎を起こして死んでしまった。
 2007年1月…米国のタウンバーガーたちが公表していたウイルスの遺伝情報をもとに、河岡はウイルスを復元、その成果を英科学誌ネイチャーで発表したのだ。
…河岡は二つの点で異彩を放った。人工合成したウイルスを人間に近いカニクイザルに感染させた点と、ウイルスの強力な毒性の背後に免疫の異常反応がからんでいるのを突きとめたことだ。
…まずスペイン風邪ウイルスをサルの鼻などに接種、すると24時間以内に体力や食欲が弱まり、感染して1週間ほどたつと重い肺炎を起こし呼吸困難になった。回復は不能と判断した研究者たちはここで実験を停止、サルを安楽死させることとなった。
 解剖するとサルの肺は約7割の領域が肺炎に冒され、水分がいっぱいたまってた。肺にたまった水分でサルが呼吸不全に陥ったことを示唆する光景だった。通常のインフルエンザ・ウイルスを接種したサルが肺炎を起こすこともなく軽い症状にとどまったのと比べると症状は重篤。スペイン風邪ウイルスは通常のウイルスに比べ、気管や肺で百倍以上に増えていた。
…免疫は異常な反応を見せていた。通常、ウイルスなどが侵入すると、生き物の体にはウイルスを抑えるインターフェロンという情報伝達物質が現れる。インターフェロンの別名はウイルス抑制因子。しかしサルの体内ではインターフェロンの分泌が抑制されていた。
 一方、過剰に分泌が増えた情報伝達分子もあった。発熱・腫れ・むくみ・痛みなどを引き起こすインターロイキン6という分子だ。その様子は関係者が嵐に例えて「サイトカイン・ストーム(嵐)」と呼んだほどだった。
…炎症は免疫の働きに不可欠な営みであるが、インターロイキン6がこれほど過剰に分泌され、またウイルスの増殖を抑えるインターフェロンの分泌が抑制されてはサルの体が無事ですむわけもなかった、と考えられる。」

「…コロナウイルスは、ウイルス感染の最初の10日間に自然免疫を回避します。感染の初期段階では、SARS-CoV-2 は、ヒト細胞における弱い IFN-I 誘導物質であるSARS-CoVよりもさらに低いI 型インターフェロン(IFN-I) 応答を誘導します。 SARS-CoV-2 も IFN-III 反応を制限します。加齢に伴う形質細胞様樹状細胞の数の減少は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症度の増加と関連しているが、これはおそらくこれらの細胞が実質的なインターフェロン産生細胞であるためであると考えられる。
 生命を脅かす新型コロナウイルス感染症患者の 10 パーセントは、I 型インターフェロンに対する自己抗体を持っています。
 IFN-I 応答の遅延は、 COVID-19疾患の後期段階で見られる病原性炎症 (サイトカインストーム)の一因となります。ウイルス感染前 (または感染の非常に初期段階) での IFN-I の適用は、PEG 化 IFN-λIII による治療と同様に防御効果があり、ランダム化臨床試験で検証されるべきである 。」

『2. ウイルスによるインターフェロン情報伝達系 抑制の分子機構』
「ウイルスに対する細胞や生体の防御機構の中で、インターフェロン(IFN)の示す抗ウイルス活性は大変重要であり、またIFNの多面的作用は獲得免疫発動にとっても欠かせないものでもある。ウイルスは IFN の情報伝達系を抑制することによってほぼ全 IFN システムを抑制する機能を獲得してきた と思われる。これまで判明している IFN 情報伝達系の抑制機構は、(1)IFN 結合性蛋白の産生、(2) JAK/STAT 系に関わる蛋白の分解、(3)JAK/STAT 系に関わる蛋白の活性化阻止、(4)活性化転写 因子の核内移行の阻害、(5)JAK/STAT 系のネガテブ制御因子の誘導、に整理される。我々の検討 している HSV1 ではネガテブ制御因子である SOCS3 の誘導が、ムンプスウイルスは V 蛋白による STAT-1,STAT-3 の分解が、麻疹ウイルスでは V 蛋白、C 蛋白が IFN レセプターと複合体を形成し Jak-1 のリン酸化が阻止されていることが、IFN 情報伝達系抑制に関わっている。 
…ウイルスや 細菌による IFN 産生制御,IFN による TLR や MyD88 の制 御は,免疫機構が微生物感染により広範な影響を受けるこ とを示している.ウイルスや細菌は,生体が大きなシステ ムとして構築してきた防御機構を様々な側面から撹乱し自 らの増殖性や侵襲性を確保する能力を備えている.このこ とは,ウイルスが単に IFN による抗ウイルス作用を抑制 するというだけではなく,JAK/STAT 情報伝達系の抑制 を介して IFN シグナルやサイトカインシグナル,さらに は TLR シグナルが乱され多くの細胞機能が抑制あるいは 促進されると共に,Th0 リンパ球から Th1 や Th2 への誘導 レベルの乱れ,樹状細胞機能変化,T リンパ球や B リンパ 球の分化・成熟過程の変化,その結果として免疫機構の破 綻に至ることが考えられる.従って,これらの微生物が如 何にして細胞内情報伝達機構を抑制,阻害するかという分 子機構を理解することは,微生物の病原性を解明する一助 になるであろうし,またより有効な治療法に繋がる可能性 を秘めていると思われる. 」

「インターフェロン(英: interferon、略号:IFN)とは、動物体内で病原体(特にウイルス)や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌する蛋白質のこと。ウイルス増殖の阻止や細胞増殖の抑制、免疫系および炎症の調節などの働きをするサイトカインの一種である。
…1954年に、伝染病研究所所長(当時)の長野泰一と小島保彦が「ウイルス干渉因子」として発見し報告した。1957年には、イギリスのアリック・アイザックス(Alick Isaacs)やスイスのジャン・リンデンマン(Jean Lindenmann)たちもウイルス増殖を非特異的に(抗体ではない)抑制する因子として確認し、ウイルス干渉(Interference)因子という意味で「Interferon(インターフェロン)」と命名した。 1980年頃に、インターフェロンが悪性腫瘍に効果があることが発見され、抗がん剤として発展していった。 蚕[8] やハムスターの体内にヒトの細胞を埋め込んで、その細胞にC型肝炎ウイルスの遺伝子を組み込んだセンダイウイルスを感染させることにより、インターフェロンを産生させるという方法を利用して大量生産が可能になった。 
…ウイルスの感染や2本鎖RNAなどによって直接誘導されることが知られている。これらの細胞外での受容体としてはToll様受容体(TLR)でその中でもエンドソームに存在するTLR3、TLR7、TLR9である。また、細胞内に存在する受容体としてはRIG-I、MDA-5が関与し、これらがI型インターフェロンの発現を高めると考えられる。また体内にいろいろな抗原が侵入したときそれに反応してIL-1、IL-2、IL-12、TNF、CSFなどのサイトカインが産生される。インターフェロンの産生はこれらのサイトカインによっても誘導される。
 インターフェロンにより調節される細胞内シグナル伝達経路の代表的なものとしてはJAK-STAT経路が知られるが、それ以外の経路も関与していると考えられる。
 インターフェロンαとβはリンパ球(T細胞、B細胞)、マクロファージ、線維芽細胞、血管内皮細胞、骨芽細胞など多くのタイプの細胞で産生され特に抗ウイルス応答の重要な要素である(詳しくはI型インターフェロンの項を参照)。インターフェロンαとβはマクロファージとNK細胞をともに刺激し、腫瘍細胞に対しても直接的に増殖抑制作用を示す。
 インターフェロンγは活性化されたT細胞で産生され免疫系と炎症反応に対して調節作用を有する。IFN-γにも抗ウイルス作用と抗腫瘍作用があるが弱く、その代わりIFN-αとβの効果を増強する作用がある。IFN-γは腫瘍のある局所で働く必要があり、がん治療への有効性は低い。IFN-γはTh1細胞からも分泌され、白血球を感染局所にリクルートして炎症を強化する作用がある。またマクロファージを刺激して細菌を貪食殺菌させる。Th1細胞から分泌されたIFN-γはTh2反応を調節する作用でも重要である。免疫応答の調節にも関わっており、過剰な産生は自己免疫疾患につながる可能性がある。IFN-ωは白血球からウイルス感染または腫瘍の局所で分泌される。」

「I型インターフェロン(英:type I interferon)とは、インターフェロンファミリーのうち、インターフェロンα(英語版)(IFN-α)とインターフェロンβ(英語版)(IFN-β)などを含めた総称で、ウイルス感染で誘導される抗ウイルス系のサイトカインである。「I型」という名前は、免疫系の細胞によって分泌されマクロファージを活性化するII型インターフェロン(IFN-γ)などと区別するための呼称であるが、一般に「インターフェロン」というとI型インターフェロンのことを指す。
…I型インターフェロンの主な機能としては、
  • (1)ウイルス複製を抑制することで、細胞のウイルス抵抗性を上昇させる
  • (2)ウイルス非感染細胞のMHCクラスI分子の発現を増加させ、NK細胞の攻撃から保護する
  • (3)NK細胞を活性化させてウイルス感染細胞を除去する
という3つである。 まず、I型インターフェロンが細胞に結合すると、(2'-5')オリゴアデニル酸合成酵素系とプロテインキナーゼ系が活性化する。(2'-5')オリゴアデニル酸合成酵素系(2-5AS系)では、通常3'-5'の形で結合しているATPを2'-5'結合オリゴマーに重合させることでエンドヌクレアーゼであるRNaseLを活性化しウイルスのmRNAを分解する。一方プロテインキナーゼ系では、真核生物蛋白質合成開始因子 eIF-2α(eIF2S1)をリン酸化することでウイルスペプチド鎖の合成開始を阻止する。この他にもインターフェロンは抗ウイルス活性を示す遺伝子を誘導する。その遺伝子の1つとしてMxA(myxovirus resistance A)がある。MxAはウイルス感染細胞におけるアポトーシスの促進とウイルス増殖の抑制を促すが、これはMxAが小胞体ストレスを起こすことによるものだと考えられている。
 上で述べたような直接的な抗ウイルス活性の他に、I型インターフェロンはウイルス非感染細胞のMHCクラスI分子の発現を高めることでNK細胞から正常細胞を保護している。というのも、NK細胞はウイルスによってMHCの発現が抑制されたり、立体配座(コンフォメーション)を変更させられたMHCを持つ細胞を攻撃する一方で正常のMHCクラスI分子を持っている細胞に対してはNK細胞に抑制性のシグナルが入り攻撃を行わないからである。この一方で、I型インターフェロンはNK細胞を活性化する役割も担っている。ここで活性化されたNK細胞はウイルス感染細胞を除去するとともにインターフェロンγ(IFN-γ)を放出することでT細胞依存性の細胞傷害を誘導する。」

「リボヌクレアーゼ LまたはRNase L (潜在型) は、リボヌクレアーゼ 4または2'-5' オリゴアデニル酸シンテターゼ依存性リボヌクレアーゼとしても知られ、インターフェロン (IFN)誘導性リボヌクレアーゼであり、活性化されると細胞内のすべてのRNAを破壊します(両方とも細胞性そしてバイラル)。RNase L は、ヒトではRNASEL遺伝子によってコードされる酵素です。」

「インターフェロン誘導 GTP 結合タンパク質 Mx1 は、ヒトではMX1遺伝子によってコードされるタンパク質です。
 マウスでは、インターフェロン誘導性 Mx タンパク質が、インフルエンザ ウイルス 感染に対する特異的な抗ウイルス状態を担っています。さらに、ヒトオルソログ MxA は、動物由来のインフルエンザウイルスの主要な決定因子です。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、その抗原関連性、誘導条件、物理化学的性質、およびアミノ酸分析によって決定されるように、マウスタンパク質に類似している。この細胞質タンパク質は、ダイナミン スーパーファミリーと大型GTPaseファミリーの両方のメンバーです。」

「真核生物翻訳開始因子 2 サブユニット 1 (eIF2α) は、ヒトではEIF2S1遺伝子によってコードされるタンパク質です。 
 この遺伝子によってコードされるタンパク質は、翻訳開始因子 eIF2 タンパク質複合体のアルファ (α) サブユニットであり、タンパク質合成開始の初期の制御されたステップを触媒し、イニシエーター tRNA (Met-tRNA i Met ) の40S リボソームサブユニットへの結合を促進します。 」

「インターフェロンは感染細胞から分泌され、周囲の細胞に対し自身が感染したことを警告する。また免疫機構の細胞がこれにより刺激されると、ウイルス監視の一環としてインターフェロンを分泌する。インターフェロンは細胞表面にある受容体と結合する小さなタンパク質である。この信号は細胞内へと伝えられ、これによってウイルス防御に関わる何百ものタンパク質が作られる。細胞が作るインターフェロンにはいくつかの種類がある。インターフェロン-α(interferon-alpha、PDBエントリー 1itf)とインターフェロン-β(interferon-beta、PDBエントリー 1au1)は最も一般的な型で、大半の細胞種、特に免疫機構細胞によって作られる。これらは成長を止め防御に集中するための基本的な信号を送る。一方インターフェロン-γ(interferon-gamma、PDBエントリー 1rfb)は主にT細胞から分泌され、免疫機構の反応を調節する信号を送る。 
…ウイルスは巧妙で、想像の通り、様々な方法で進化してインターフェロンによる防御に対抗する。ウイルスによってインターフェロンの活動を阻害する段階は異なり、インターフェロンがその受容体に結合するところから、最終的に核に達する一連の信号伝達経路に至るまでさまざまである。例えば、右図に示したタンパク質(PDBエントリー 3bes)はハツカネズミ(mouse)に天然痘(smallpox)に似た症状(マウス痘、奇肢症、ectromeria)を引き起こすウイルス(エクトロメリアウイルス ectromeria virus、ECTV)から得られたものである。このタンパク質(青)はインターフェロン(赤)を捕獲し、受容体へ結合するのを阻害する。 」

『1. 自然免疫による核酸認識』
「ウイルスや細菌のもつ核酸(DNA と RNA)は自然免疫系により認識され,I 型インターフェロン や炎症性サイトカインが産生され,感染病原体に対する生体防御応答が誘導される.我々は発現スク リーニングにより,二重鎖 DNA に対する自然免疫応答を制御する細胞内分子として TRIM56 を同定 した.
 TRIM56 はユビキチンリガーゼとして機能し,STING と呼ばれるアダプター分子の K63 型ユ ビキチン化を促進した.この修飾により,TBK1 キナーゼがリクルートされ最終的に I 型インターフェ ロンが誘導された.以上のことから,DNA に対する自然免疫応答において,TRIM56 によるユビキ チン化を軸とした新たなシグナル伝達経路の存在が明らかとなった.一方,Toll-like receptor (TLR) 7 と TLR9 は,ウイルスの核酸を認識し,プラズマ細胞様樹状細胞から I 型インターフェロン産生をさ せる.我々は,抗ウイルス因子として報告されていた Viperin が,プラズマ細胞様樹状細胞において TLR7/9 を介した I 型インターフェロン産生に重要な役割を果たしていることを見出した.Viperin は, プラズマ細胞様樹状細胞において TLR7/9 の刺激より転写因子 Interferon regulatory factor (IRF) 7 依 存的に強く誘導され,脂肪滴に局在している.Viperin は,プラズマ細胞様樹状細胞において TLR7/9 の下流で働き IRF7 を活性化するシグナル伝達因子として知られている TRAF6 と IRAK1 に 結合し,これらの因子を脂肪滴上へとリクルートする.その結果,IRAK1 の K63 結合型ユビキチン 化が効率的に誘導され,IRAK1 による IRF7 の活性化を介した I 型インターフェロンの産生が促進さ れる.Viperin が,直接的なウイルス複製阻害に加えて,TLR7/9 を介した I 型インターフェロン産 生の促進により抗ウイルス応答に関わっていることが判明した. 」

「…Viperinは直接的なウイルス複製の阻害にくわえ,TLR7およびTLR9を介したI型インターフェロンの産生の促進により抗ウイルス応答にかかわっていることが明らかになった.」

「ラジカル S-アデノシル メチオニン ドメイン含有タンパク質 2 は、ヒトでは RSAD2遺伝子によってコードされるタンパク質です。RSAD2 はウイルスプロセスにおける多機能タンパク質であり、インターフェロン刺激遺伝子です。 
…Viperin は、ウイルス RNA 依存性 RNA ポリメラーゼ (RdRp) を阻害するチェーン ターミネーターddhCTP (3'-デオキシ-3',4' ジデヒドロ-CTP) を生成できるラジカル SAM 酵素です。この活性はアミノ酸の代謝とミトコンドリア呼吸を無効にするようです。
 インフルエンザウイルスの出芽と放出の阻害において、ビペリンは、イソプレノイド生合成経路に必須の酵素であるファルネシル二リン酸シンターゼ(FPPS)に結合して酵素活性を低下させることにより、細胞の原形質膜上の脂質ラフトを破壊することが示唆されています。[13]ビペリンは、宿主タンパク質 hVAP-33 およびNS5A との相互作用および複製複合体の形成の破壊を介して、HCV のウイルス複製を阻害することが示唆されています。」

「JAK-STATシグナル伝達経路 (ジャック-スタット・シグナルでんたつけいろ)は細胞外からの化学シグナルを、細胞核に伝え、DNAの 転写と発現を起こす情報伝達系。 免疫、増殖, 分化、アポトーシス 、発癌などに関与する。 JAK-STATシグナルカスケードは主に3つの構成要素からなる: 細胞表面の受容体、 Janus kinase (JAK)、2つの信号トランスデューサおよび転写活性化(STAT)タンパク質である。[1] JAK-STAT機能が損なわれたり、制御できないと、自己免疫疾患, 免疫不全症候群や悪性腫瘍などを引き起こされることがある。 」

「MyD88(myeloid differentiation factor 88)はTLRやIL-1ファミリーサイトカイン受容体の下流でシグナルを伝えるアダプタータンパク質である。 
…ヒトのパターン認識受容体にはTLR、NLR、RLR、CLRなどが知られ、TLRは10個あまり知られている。TLRのうちTLR3とTLR4の一部以外はMyD88を介して転写因子NF-κBを活性化させる。TLR3はMyD88ではなくTRIFという別のアダプタータンパク質を介してⅠ型インターフェロンの産出に関わる。
 MyD88を介したシグナルはマクロファージ等からの炎症性サイトカインの産出を誘導し自然免疫応答を惹起するのに加え、樹状細胞の活性化を促し獲得免疫応答を誘導するにも重要な役割を果たす[9]。T細胞依存性抗原に対する抗体産出におけるMyD88の役割は樹状細胞の活性化による獲得免疫応答の誘導ならびにB細胞の活性化による抗体産出の増強がある。
 抗原提示細胞のMyD88シグナルの活性化は抗原提示細胞によるサイトカイン産出や補助刺激分子の発現を増加させることで、抗原特異的T細胞の活性化を誘導する。さらにTLR等を介したB細胞のMyD88シグナルの活性化はB細胞とT細胞との会合を促し、またB細胞の胚中心B細胞ならびに形質細胞への分化を促進することが知られている。このようにMyD88シグナルは自然免疫応答惹起だけではなく、獲得免疫応答ならびに抗体産生を正に制御している。」

「NF-κB(エヌエフ・カッパー・ビー、核内因子κB、nuclear factor-kappa B)は転写因子として働くタンパク質複合体である。NF-κBは1986年にノーベル生理学医学賞受賞者であるデビッド・ボルティモアらにより発見された。免疫グロブリンκ鎖遺伝子のエンハンサー領域に結合するタンパク質として発見され、当初はB細胞に特異的なものと考えられていたが、後に動物のほとんど全ての細胞に発現していることが明らかとなった。高等生物に限らずショウジョウバエやウニなどの無脊椎動物の細胞においてもNF-κBが発現している。
 NF-κBはストレスやサイトカイン、紫外線等の刺激により活性化される[1]。NF-κBは免疫反応において中心的役割を果たす転写因子の一つであり、急性および慢性炎症反応や細胞増殖、アポトーシスなどの数多くの生理現象に関与している。NF-κB活性制御の不良はクローン病や関節リウマチなどの炎症性疾患をはじめとし、癌や敗血症性ショックなどの原因となり、特に悪性腫瘍では多くの場合NF-κBの恒常的活性化が認められる。さらにNF-κBはサイトメガロウイルス (CMV) やヒト免疫不全ウイルス (HIV) の増殖にも関与している。」

「転写因子(てんしゃいんし)はDNAに特異的に結合するタンパク質の一群である。DNA上のプロモーター領域に、基本転写因子と呼ばれるものと、RNAポリメラーゼ(RNA合成酵素)が結合し、転写が開始する。DNAの遺伝情報をRNAに転写する過程を促進、あるいは逆に抑制する。転写因子はこの機能を単独で、または他のタンパク質と複合体を形成することによって実行する。ヒトのゲノム上には、転写因子をコードする遺伝子がおよそ1,800前後存在するとの推定がなされている。」 
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免疫(7)インターロイキン6 サイトカインストームとウイルス

2023-08-19 14:57:53 | 免疫
1.インターロイキン、炎症反応
 インターロイキンとは、ヘルパーT細胞によって分泌され、広範な免疫系の機能を開始させるための情報伝達物質(サイトカイン)です。
 その中でも「インターロイキン6」は多様な機能を発現させますが、特に炎症反応(本来免疫をスムーズに起こすためのもの)に関わる情報伝達物質になっています。その「インターロイキン6」が関わる炎症反応は、何らかの要因で過剰に機能して自己免疫疾患にもたらすこともあり、またその分泌が制御不能な暴走モードとなる「サイトカイン・ストーム」に至ることもあります。

2.サイトカイン・ストームとウイルス
(1)スペイン風邪とサイトカイン・ストーム
 1918年から1920年までに起きたパンデミックである「スペイン風邪」は、当時の世界人口の約3分の1が感染して、5000万~1億人以上の死者を出したと推定されています。 
 1948年、この危険極まりないスペイン風邪のウイルスを発見したいと思う医学生が現れました。当時医学生だったハルティンはアラスカのイヌイットがスペイン風邪で亡くなった遺体を永久凍土に埋葬していたということを聞きつけ、アラスカに赴き永久凍土の遺体を掘り起こしてスペイン風邪のウイルスを発見しようとしましたが上手く行きませんでした。
その後に約40年経ち、1990年代に米陸軍病理研究所のタウンバーガーらがスペイン風邪のウイルスの復元を目指す動きを始めると、73歳になっていたハルティンは再びアラスカの遺体からウイルスを探そうとタウンバーガーに提案して、実行されました。
 1997年にタウンバーガーは遺体から完全なウイルスを発見して、約8年かけてその遺伝子配列の解読に成功し、なおかつ復元(人工合成)しました。そのウイルスを使ったネズミの感染実験をおこなったところ、数日後にはネズミの肺に通常のインフルエンザの数万倍のウイルスが発生して、ネズミは肺炎ですべて死んでしまいました。スペイン風邪のウイルスの強毒性が明らかにな
りました。
 その後、日本の研究者である河岡氏もスペイン風邪のウイルスの復元に成功して、ヒトに近いカニクイザルで感染実験を行いました。その結果、1週間ほどでサルは重い肺炎を起こし呼吸困難になり安楽死させられました。スペイン風邪のウイルスは、気管や肺で通常のウイルスに比べ百倍以上に増加していました。さらには免疫の異常が見られ、インターフェロンの産出が抑制され、インターロイキン6が過剰に分泌される「サイトカイン・ストーム」に至ってい
たとのことです。


「…体のあちらこちらに、IL6が深くかかわっている多様な営みがある…
 炎症を起こしたり、骨を溶かして関節リウマチの症状を引き起こしたり、…IL6は肝臓の細胞を刺激したり血小板を増やしたりするほか、がん患者やエイズ患者をやせ細らせ、貧血にする悪液質にさえかかわっていた。
…21世紀に入って以降も、自己免疫疾患を引き起こすヘルパー17T細胞に誘導に欠かせない分子であることが判明する…
 そうしたなかで最近、あらためて研究者の関心を集めているのは、IL6が炎症を起こす営みだ。病気やケガをしたとき、患部が腫れて熱を出すのはとてもつらい。しかし、この作用によって免疫の働きが強まり、病気やケガの治りは早くなるのだから、IL6を一概に悪者とは決めつけられない。
…しかし、何らかの弾みや刺激によって免疫細胞が狂気に駆られたように、とめどなくIL6を放出しはじめるサイトカイン・ストームだけは異次元の悪行だ。

 
(引用終わり)」

「インターロイキン(Interleukin)とは一群のサイトカインで、ヘルパーT細胞(leukocyte から-leukin)によって分泌され、細胞間(inter-)コミュニケーションの機能を果たすものをいう。ILと略される。 

…初め個別に命名されリンフォカインやモノカインとしても分類され混乱したため、1979年に整理され、ILのあとにタンパク質として同定された順に番号を付けて呼ぶことになった。現在30種類以上が知られている。
 免疫系の機能は多くをインターロイキンに負っており、自己免疫疾患や免疫不全の多くの難病もインターロイキンに関係している。
 主なものを示すと次のようであるが、単球やマクロファージが産生するものはモノカイン、リンパ球が産生するものはリンフォカインにも分類される。
  • IL-1:マクロファージによって分泌され急性期反応を誘導する。
  • IL-2:T細胞によって分泌されT細胞の増殖と分化を促進する。がんの免疫療法に用いられる。
  • IL-3:T細胞によって分泌され骨髄幹細胞を刺激する。
  • IL-4:B細胞の増殖とT細胞および肥満細胞の分化に関与する。アレルギー反応で重要。
  • IL-5:B細胞を刺激してIgAを産生させ、 また好酸球を刺激する。
  • IL-6:マクロファージを刺激して急性反応を誘導する。
  • IL-7:B細胞、T細胞、NK細胞の生存、分化、ホメオスタシスに関与する。
  • IL-8:好中球の走化性を誘導する。
  • IL-9:肥満細胞を刺激する。
  • IL-10:樹状細胞を抑制することによって、Th1サイトカイン産生を阻害する。
  • IL-11:急性期タンパク質を産生させる。
  • IL-12:NK細胞を刺激し、Th1への分化を誘導する。
  • IL-13:B細胞の増殖と分化を刺激し、Th1細胞を阻害し、マクロファージの炎症性サイトカイン産生を阻害する。
  • IL-14:活性化B細胞の増殖誘導。B細胞の抗体産生抑制。T細胞から産生。
  • IL-15:末梢血単球および上皮細胞から産生。キラーT細胞の活性化。B細胞の増殖と分化誘導。
  • IL-17:炎症性サイトカインの産生を誘導する。
  • IL-18:インターフェロン-γの産生を誘導する。」
 
 
「もし私たちがウイルスと呼ぶ病原体が生き物というなら、ウイルスを人工合成した彼らは生き物を創造した「神」になるのだろうか。2005年秋、インフルエンザ・ウイルスを再合成してみせた米陸軍病理研究所のJ・K・タウベンバーガーたちのことである。
 スペイン風邪を引き起こしたウイルス…1997年、アラスカから持ち帰った組織片からほぼ完全なウイルスを発見したタウンバーガーは歓喜して、ウイルスの遺伝子を解読し始めた。…すべての解読を終えたのは2005年。解読がどれほど大変だったかは歳月が示している。
 タウンバーガーたちは…比較的、簡単にDNA版のウイルス遺伝子を作ることができた。彼らに協力してウイルスの遺伝情報をもとにDNAを作り、これをプラスミドに組み込む重要な仕事をこなしたのは米ニューヨークのマウント・サイナイ医科大学の研究者たち。そのプラスミドを人の腎臓細胞の中に注入するという最後の仕上げ的な作業を担ったのは、世界の感染症対策の総本山と目される米疾病管理センター(CDC)のテレンス・タンビーらだった。
…ここからのプロセスはウイルスが感染した細胞の中で増殖するのと同じだ。
…復元されたウイルスは予想通り、致命的な毒性を持っていた。タンビーたちが、復元したウイルスを実験動物のネズミに感染させたところ、数日後にはネズミの肺に通常のインフルエンザ・ウイルスと比べ数万倍のウイルスが発生。ネズミは肺炎を起こして死んでしまった。
 2007年1月…米国のタウンバーガーたちが公表していたウイルスの遺伝情報をもとに、河岡はウイルスを復元、その成果を英科学誌ネイチャーで発表したのだ。
…河岡は二つの点で異彩を放った。人工合成したウイルスを人間に近いカニクイザルに感染させた点と、ウイルスの強力な毒性の背後に免疫の異常反応がからんでいるのを突きとめたことだ。
…まずスペイン風邪ウイルスをサルの鼻などに接種、すると24時間以内に体力や食欲が弱まり、感染して1週間ほどたつと重い肺炎を起こし呼吸困難になった。回復は不能と判断した研究者たちはここで実験を停止、サルを安楽死させることとなった。
 解剖するとサルの肺は約7割の領域が肺炎に冒され、水分がいっぱいたまってた。肺にたまった水分でサルが呼吸不全に陥ったことを示唆する光景だった。通常のインフルエンザ・ウイルスを接種したサルが肺炎を起こすこともなく軽い症状にとどまったのと比べると症状は重篤。スペイン風邪ウイルスは通常のウイルスに比べ、気管や肺で百倍以上に増えていた。
…免疫は異常な反応を見せていた。通常、ウイルスなどが侵入すると、生き物の体にはウイルスを抑えるインターフェロンという情報伝達物質が現れる。インターフェロンの別名はウイルス抑制因子。しかしサルの体内ではインターフェロンの分泌が抑制されていた。
 一方、過剰に分泌が増えた情報伝達分子もあった。発熱・腫れ・むくみ・痛みなどを引き起こすインターロイキン6という分子だ。その様子は関係者が嵐に例えて「サイトカイン・ストーム(嵐)」と呼んだほどだった。
…炎症は免疫の働きに不可欠な営みであるが、インターロイキン6がこれほど過剰に分泌され、またウイルスの増殖を抑えるインターフェロンの分泌が抑制されてはサルの体が無事ですむわけもなかった、と考えられる。」

「スペインかぜ(英語: 1918 flu pandemic, Spanish flu)は、一般的に1918年から1920年にかけ全世界的に大流行したH1N1亜型インフルエンザの通称。初期にスペインから感染拡大の情報がもたらされたため、この名で呼ばれている。 
 全世界で5億人が感染したとされ、 世界人口(18億-19億)のおよそ27%(CDCによれば3分の1)とされており、 これには北極および太平洋諸国人口も含まれる。死亡者数は5,000万-1億人以上、おそらくは1億人を超えていたと推定されており、人類史上最も死者を出したパンデミックのひとつである。」 


「免疫系が病原体と闘う際には、感染細胞からサイトカインシグナルが放出されてT細胞やマクロファージ等の免疫細胞を炎症部位に誘導する。その後サイトカインはこれらの免疫細胞を活性化し、さらなるサイトカイン放出を促す。通常は、身体はこのフィードバックを見張っているが、時には、制御が乱れて免疫細胞が1箇所に過剰に集中して活性化されることがある。その正確な理由は完全には解明されていないが、新たな高病原性の脅威に対して過剰に反応するためであろうと考えられている。サイトカインストームは臓器組織に重大な障害を与える可能性がある。例えばサイトカインストームが肺で起こった場合には、漿液や免疫細胞が気道に集中して閉塞を生じ、死亡する危険性がある。

 …1918年から1919年に掛けて流行したスペイン風邪では、5千万〜1億人とされる死者の中で健康であった若者の死亡数が際立って多かった理由として、サイトカインストームが発生したことが関係すると信じられている。この場合、健康な免疫系は身を守るものとしてだけではなく己を攻撃するものとして動作したことになる。2003年のSARS流行の際も、香港での予備的な調査の結果、その死因の多くがサイトカインストームによると判明している。H5N1トリインフルエンザでヒトが死亡する場合にも関係している。2009年新型インフルエンザ (H1N1) で基礎疾患のない若者の死亡率が高いことも同様に説明され、スペイン風邪でも同様であったであろうと推測されている。しかし、米国疾病予防管理センター (CDC) はH1N1の症状は従来の季節性インフルエンザと同じで、「ブタ由来A型インフルエンザウイルス (H1N1) の変異株に関する臨床的知見の集積は不充分である」と声明を出している。サイトカインストームはハンタウイルス感染症でも発生する。また、新型コロナウイルス感染症 (2019年)でも発生しているという指摘もある。むしろ、新型コロナウイルス感染症における肺疾患は、ウイルスによる直接の肺への病害でなく、サイトカインストームによる肺障害の結果であるという見方も主流になりつつある。これは急性呼吸促迫症候群の発症機序と酷似しているからである。本症の合併症として、播種性血管内凝固症候群による脳梗塞、各種臓器の梗塞、凝固障害などが指摘されている事が傍証となる。 」

(2)新型コロナウイルスとサイトカイン・ストーム
 新型コロナウイルス(COVID-19)でも、サイトカイン・ストームが起きていたことが指摘されています。
 COVID-19はACE2という受容体を介して感染しますが、ACE2が減少するとアンジオテンシII作用(AngII)が増強されます。AngIIは血管収縮のみならず、血管透過性亢進・細胞増殖・炎症誘導作用などの作用があり、心臓血管障害やがんにも関与します。それらの活性化により、サイトカインが放出されます。
 また肺胞上皮細胞などの細胞死によりダメージ関連分子パターンが大量に放出され、それらの情報により活性化されてサイトカインが放出されます。
 自然免疫の伝達系とAngIIの伝達系が相俟って活性化することにより、サイトカイン(特にIL6)が過剰に放出されるようなり、最終的にサイトカインストームに至ると考えらているようです。

「ACE2 はアンジオテンシII(AngII)をAng(1-7)に変換するので、ACE2の減少によりAngIIが増加する。一方、Ang(1-7)はMasR (Mitochondrial assembly receptor)を介してAT1Rシグナルに拮抗する。このように、細胞膜にあるACE2が減少すると、アンジオテンシン受容体タイプ1(AT1R)を介するAngIIの作用が増強される【図表2】。



 AngIIはAT1Rを介して血管収縮のみならず、血管透過性亢進や細胞増殖や炎症誘導作用があり、心臓血管障害やがんに関与する。AT1RはG蛋白質共役受容体で、血管平滑筋、繊維芽細胞、心筋細胞、肺、腎臓、脳など多くの細胞や臓器で発現している。AT1Rはイノシトールトリスリン酸(IP3)やジアシルグリセロールを介してカルシウム濃度上昇やプロテインカイネース Cの活性化を誘導し血管収縮やアルドステロン分泌を誘導するのみならず、活性酸素の産生誘導やADAM17(a disintegrin and metalloprotease 17)という細胞膜上に存在するプロテアーゼを活性化する。その結果、細胞膜に存在するEGF受容体リガンドやTNFαの前駆体が切断されて成熟したEGFリガンドやTNFαが放出される。同様にIL-6受容体sIL-6α(IL-6Rα)もADAM17により切断されて、IL-6Rαも細胞膜から遊離して可溶性IL-6Rα(sIL-6α)が放出される。TNFαはその受容体を介してNF-kBを活性化し、IL-6をはじめとする様々な炎症性サイトカイン産生を誘導するとともに、血管内皮細胞マクロファージに組織因子の発現を誘導し、血栓形成誘導や脳梗塞の原因となる。一方、IL-6はその受容体を介してマクロファージやリンパ球などの免疫細胞に転写因子STAT3を活性化する。血中に放出されたsIL-6RαはIL-6と複合体を形成して、IL-6受容体のシグナル伝達分子であるgp130を発現している様々な細胞(血管上皮細胞、線維芽細胞、肺胞上皮細胞など)に作用して STAT3を活性化する。活性化されたSTAT3はNF-kBに作用して、その活性化をさらに強め、IL-6アンプが活性化される【図表2】【図表4】。


 一方、免疫反応がウイルスを排除できない間に、ウイルス感染により肺胞上皮細胞などの細胞死が生じる。大量の死細胞から放出されたダメージ関連分子パターン(DAMP:Damage associated molecular pattern)がPRRsに認識されNF-kBが活性化される。その結果IL-1b、TNFαやIL-6などのサイトカインやケモカイン産生が誘導される。さらに、SARS-CoV-1のN蛋白(Nucleocapsid protein)は、IL-6遺伝子プロモーターに直接またはNF-kBを介して作用することによりIL-6遺伝子発現を誘導する【図表4】。
 このように、自然免疫を介するシグナル伝達系とAngII-AT1Rを介するシグナル伝達系が協調して、STAT3によるNF-kB活性化が持続的に亢進する。すなわちIL-6アンプが活性化されて、大量の炎症性サイトカインやケモカインなどが産生されて、サイトカインストームに至ると考えられる。」

「  血液の通り道である血管は非常に弾力性のある組織で、収縮と弛緩を繰り返すことで血管にかかる圧力(血圧)と血液の流れを調節しています。しかしながら、加齢に伴う様々なストレスが要因となって血管が厚く硬く変化していきますと、弾力性が失われ、慢性的に血圧が高い状態(高血圧)になってしまいます。
 アンジオテンシンIIは、血圧を上昇させる作用を持つ生理活性ペプチドです。血圧が低下するとレニン-アンジオテンシン系を介してアンジオテンシンIIが産生され、産生されたアンジオテンシンIIは血管を収縮させることで血圧を上昇させ、血管恒常性の維持に働きます。一方で、アンジオテンシンIIは高血圧を誘導するという負の一面を有しています(図1)。なぜアンジオテンシンIIによって高血圧が起こるかというと、アンジオテンシンIIは血管中膜を肥厚させる性質を持っているからです。血管中膜が肥厚すると血管の弾力性が失われ、結果として血管を流れる血液の流れが悪くなり、慢性的に血圧が上昇します。この血管中膜が肥厚する仕組みは、アンジオテンシンIIが細胞膜上にあるAT1Rに作用することで血管平滑筋細胞を肥大させることによって起こります。 」

「アンジオテンシン II 受容体 1 型 (AT1) は、最もよく特徴付けられているアンジオテンシン受容体です。ヒトではAGTR1 遺伝子によってコードされています。AT1 には昇圧作用があり、アルドステロンの分泌を調節します。これは、心臓血管系の血圧と血圧を制御する重要なエフェクターです。アンジオテンシン II 受容体拮抗薬は、高血圧、糖尿病性腎症、うっ血性心不全に適応のある薬剤です。 」

【私は以前、健康診断で血圧が高いため治療が必要との指摘を受け、病院に行き処方を受けました。血圧がなかなか下がらず、確か2回目に出された薬がこの「アンジオテンシン II 受容体拮抗薬」でした。その後ネットでいろいろと調べた結果、高血圧の基準が年々下げらていること、それにともない医薬の需要が伸びること、薬を飲んだ方がリスクが大きいという情報もあることを知り、私は薬は飲まない(病院には行かない)ことにしました。(あくまで私的な判断です)

「NF-κB(エヌエフ・カッパー・ビー、核内因子κB、nuclear factor-kappa B)は転写因子として働くタンパク質複合体である。NF-κBは1986年にノーベル生理学医学賞受賞者であるデビッド・ボルティモアらにより発見された。免疫グロブリンκ鎖遺伝子のエンハンサー領域に結合するタンパク質として発見され、当初はB細胞に特異的なものと考えられていたが、後に動物のほとんど全ての細胞に発現していることが明らかとなった。高等生物に限らずショウジョウバエやウニなどの無脊椎動物の細胞においてもNF-κBが発現している。
 NF-κBはストレスやサイトカイン、紫外線等の刺激により活性化される。NF-κBは免疫反応において中心的役割を果たす転写因子の一つであり、急性および慢性炎症反応や細胞増殖、アポトーシスなどの数多くの生理現象に関与している。NF-κB活性制御の不良はクローン病や関節リウマチなどの炎症性疾患をはじめとし、癌や敗血症性ショックなどの原因となり、特に悪性腫瘍では多くの場合NF-κBの恒常的活性化が認められる。さらにNF-κBはサイトメガロウイルス (CMV) やヒト免疫不全ウイルス (HIV) の増殖にも関与している。」
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免疫(6)情報伝達物質(生理活性物質) サイトカイン

2023-08-16 09:43:21 | 免疫
1.サイトカイン
 主に免疫系の細胞間において情報伝達を行う低分子タンパク質のことを情報伝達物質といいます。この情報伝達分子は、その情報のやり取りよりも、その後の生理的な発現を重視して、生理活性物質(細胞を活性化する分子)と呼ばれることもあります。
 (主に免疫系)細胞は、トル様受容体(TLR)などが異物を感知したり、免疫細胞が抗原を認識したりすると、その情報により活性化され、いろいろな遺伝子を転写するようになり、サイトカインなどのタンパク質も産出し、細胞から分泌します。
 分泌されたサイトカインは、それの受容体を持つ細胞に結合して、今度はその細胞を活性化させます(自己の細胞が分泌したサイトカインで自己細胞自身が活性化されることもあります)。活性化された細胞は免疫応答などの様々な生理的な働きをするようになります。
 サイトカインにはインターロイキン(現在30種類以上が発見されている)やインターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF)などがあります。
 サイトカインは、もちろん免疫に非常に有用な機能ですが、その活性が過度(暴走状態)になると自己免疫疾患関節リウマチなど)などを引き起こし、弊害を及ぼすことがあります。そのため、このサイトカインの過度の働きを抑制するための様々な「抗体医薬」も開発されています。

 
「情報伝達分子(サイトカイン)とは
 細胞から分泌されるたんぱく質で、特定の細胞に情報や命令を伝える生体分子のこと。主に免疫細胞と免疫細胞の間で伝令の役割を果たしている。情報伝達分子は標的の細胞にたどりつくと細胞表面にある受容体と結合、情報を受け取った細胞はさまざまな生理的な営みを体内で始める。
 情報伝達分子は情報の受け渡しよりも、その後に現れる効果の方を重視して生理活性物質と呼ばれることもある。また、「細胞を活性化する分子」という意味からサイトカインとも呼ばれている。
 著名な情報伝達分子としてはウイルスの増殖を抑えるインターフェロン、炎症を起こさせるインターロイキン6、がん細胞を殺す分子として発見されたTNF(腫瘍壊死因子)などが知られている。」

 
「情報伝達分子
 免疫細胞と免疫細胞の間には、情報伝達分子と呼ばれる生体分子が行き来していて、免疫の営みに欠かせない情報や命令を受け渡している。
 たとえば抗原提示を受けたT細胞は、B細胞に抗体の生産を開始するよう指示する。この際、T細胞はB細胞に向かって微量のたんぱく質を放出する。これが情報伝達分子だ。専門家は情報伝達分子をサイトカインとも呼ぶ。
 これまで発見された情報伝達分子の顔ぶれは多彩である。たとえばがんの特効薬として期待されたインターフェロンやTNF(腫瘍壊死因子)、筆者の岸本が発見したインターロイキン6(IL6)などがある。
 インターロイキンとは「白血球と白血球の間をつなぐ分子」という意味の言葉だ。IL6は…発見当初はT細胞がB細胞に抗体を生産を促すための分子と理解されていた。
 だが、この分子がもっているさまざまな働きが、やがて続々と判明した。このうち特に重要なのは、炎症を起こす営みだ。ケガをしたとき、患部が腫れて熱を出すのはこの働きのせいなのだが、そのおかげで傷は早く治る。こうした働きから、IL6は「炎症性」の情報伝達分子と呼ばれている。
 IL6は、悪の顔も持っている。端的な例は、関節リウマチとの深いかかわりだ。関節リウマチは、免疫細胞が自分の体に牙をむく自己免疫疾患で、骨が溶け、最後には関節まで破壊される恐ろしい病気だ。犯人は患部でうごめいているIL6やTNFであることが突きとめられている。」

「サイトカイン (cytokine) は、細胞から分泌される低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。生理活性蛋白質とも呼ばれ、細胞間相互作用に関与し周囲の細胞に影響を与える。放出する細胞によって作用は変わるが、詳細な働きは解明途中である。 
…細胞シグナリングにおいて重要な小さい蛋白質(およそ5 - 20 kDa)であり、広範かつ緩やかな分類概念である。細胞からのサイトカイン分泌は周囲の細胞の行動に影響する。サイトカインはオートクリン、パラクリン、および内分泌のシグナリングに免疫調節因子として関与するといえる。サイトカインのホルモンとの明確な違いについては現在研究途上にある。サイトカインにはケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、および腫瘍壊死因子が含まれる一方、例えばエリスロポエチンのように多少の用語上の重複があるものの、一般的にはホルモンと成長因子は含まれない。サイトカインは多様な細胞により産生される。それにはマクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球、肥満細胞といった免疫細胞のほかに内皮細胞、線維芽細胞、各種の間葉系細胞をも含む。したがって、ある1つのサイトカインが多種類の細胞により産生されることがありうる。
 サイトカインは受容体を介して働き、免疫系において殊の外重要である。たとえば、サイトカインは液性免疫と細胞性免疫のバランスを調節し、ある特定の細胞集団の成熟、成長、および反応性を制御する。ある種のサイトカインは他のサイトカインの作用を複雑な方法で増進または抑制する。
 ホルモンもやはり重要な細胞シグナリング分子であるが、サイトカインは一般にホルモンとは異なる。ホルモンは特定の臓器の内分泌腺より血中に分泌され、比較的一定の範囲の濃度に保たれる。
 サイトカインは健康・病気いずれの状態においても重要であり、感染への宿主応答、免疫応答、炎症、外傷、敗血症、がん、生殖における重要性が特記される。

以下の様な分類がされる。
  1. インターロイキン(IL)
  2. 造血因子(CSF, EPO, TPO)
  3. インターフェロン(IFN)
  4. 腫瘍壊死因子(TNF)
  5. 増殖因子
  6. 増殖因子(EGF, FGF, PDGF)
  7. 7.ケモカイン(IL-8)
受容体(レセプター)
構造上類似しているものがあり、ファミリーが形成される。
  • a クラス I(ヘモポイエチンレセプター):IL-2〜7, 9, 11〜13, 15. GM-CSF, G-CSF, EPO, TPO, LIF, OSM, CNTF, GH, leptin.
  • b クラス II:インターフェロン、IL-10.
  • c Fas/TNFR:TNF, FasL, CD40L
  • d セリン/スレオニンキナーゼ:TGF-b, activin, inhibin.
  • e チロシンキナーゼ:EGF, PDGF, FGF, M-CSF, SCF.
  • f ケモカイン:IL-8, IL-16, Eotaxin, RANTES.
  • g TLR/IL-1R:IL-1, bacteria     
…最初に見つかったのはI型インターフェロンであるインターフェロン・アルファ (IFN-α) で、1954年に長野泰一らがウイルス干渉因子として発見したものが最初の報告とされる。ただし、インターフェロンの名は、アリック・アイザックスらが1957年に同様の因子を独自に発見したときに名付けたものであり、これが最初の発見とする研究者もいる。II型インターフェロンであるインターフェロン・ガンマ (IFN-γ) は1965年に記述された。マクロファージ遊走阻止因子 (MIF) の発見は1966年に2つのグループにより同時に報告された。
 1969年、ダドリー・デュモンド (Dudley DuMonde) が、これらの分子がいずれも広義の白血球(リンパ球、単球、マクロファージを含む)によって産生されることに着目し、「リンフォカイン」(lymphokine:白血球を意味する接頭語 lympho- とギリシア語で「動く」を意味する kinein からの造語)と総称することを提案した。その後、白血球の種類によって産生する分子に違いが見られることから、特にリンパ球系の細胞が産生するものは「リンフォカイン」、単球系(単球とマクロファージ)が産生するものは「モノカイン」(monokine:mono-は単球を意味するmonocytesに由来)と総称されるようになった。
 1974年、スタンリー・コーエンらはウイルスの感染した線維芽細胞がMIFを産生することを発表し、この蛋白の産生が免疫系細胞に限定されないことを示した。ここからコーエンは「サイトカイン」の語を提唱した。

…サイトカインはすでに数百種類が発見され、今日も発見が続いている。機能的には次のように分けられる(ただし重複するものも多い)。
  • インターロイキン (Interleukin (IL); インターリューキン):白血球が分泌し免疫系の調節に機能する。現在30種以上が知られる。
  • 同様に免疫系調節に関与するもので、リンパ球が分泌するものをリンフォカインという。また単球やマクロファージが分泌するものをモノカインということもある。
  • ケモカイン (chemokine):白血球の遊走を誘導する。
  • インターフェロン(Interferon; IFN):ウイルス増殖阻止や細胞増殖抑制の機能を持ち、免疫系でも重要である。
  • 造血因子:血球の分化・増殖を促進する。コロニー刺激因子(Coloney-Stimulating Factor (CSF):マクロファージを刺激)、顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte- (G-)CSF)、エリスロポエチン(Erythropoietin (EPO):赤血球を刺激)などがある。
  • 細胞増殖因子:特定の細胞に対して増殖を促進する。上皮成長因子(Epidermal Growth Factor (EGF))、線維芽細胞成長因子(Fibroblast Growth Factor (FGF))、血小板由来成長因子(Platelet-Derived Growth Factor (PDGF))、肝細胞成長因子(Hepatocyto Growth Factor (HGF))、トランスフォーミング成長因子(TGF)などがある。
  • 細胞傷害因子:腫瘍壊死因子(TNF-α)やリンフォトキシン(TNF-β)など、細胞にアポトーシスを誘発する。これらは構造的にも互いに類似しTNFスーパーファミリーと呼ばれる。
  • アディポカイン:脂肪組織から分泌されるレプチン、TNF-αなどで、食欲や脂質代謝の調節に関わる。
  • 神経栄養因子:神経成長因子(NGF)など、神経細胞の成長を促進する。
また構造的な類似から、多くのインターロイキンやCSF、G-CSF、EPOなどをまとめてI型サイトカイン、インターフェロンやIL-10などをII型サイトカインともいう。
  • コペンハーゲン大学医学部の教授(Bente Klarlund Pederson)により命名されたマイオカイン(Myokine)と呼ばれる運動因子誘発型インターロイキン6の一種が、最近になって成長ホルモンを増量させる効果があると言われるようになってきた。(引用終わり)」



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