月光院璋子の映画日記

気ままな映画備忘録日記です。

「情婦」(原題「Witness for the Prosecution」)

2008年11月16日 | ◆サ行&ザ行

★1957年制作 監督ビリー・ワイルダー

 

随分古い映画で、まさに古典劇を観ているような感じが拭えないけれど、何度見ても騙されてしまう・・・。忘れた頃に観るのですが、今回で3度目か4度目なのに、今回もやっぱり騙されてしまった。法廷サスペンスですが、本作はそういう映画です。
さすがによく出来ているなァと。アガサ・クリスティ原作のミステリーです。


(弁護の依頼に来た男がウソをついているかどうかを探るチャールズ・ロートン扮する著名な弁護士)


(目のところ、写真の汚れではありません。光が当てられているのですが、果たしてこれで依頼人がウソをついているかどうか分かるのか・・・・)

状況的に無罪を得るのは絶望的と思われた被告の弁護を引き受けることになるイギリスの往年(1930年代ー1950年代)の名優チャールズ・ロートンも、この映画が製作された1957年には既にアメリカ市民となっているので、映画に軸足を移して油が乗り切っていたことなのでしょうが、このとき58歳とは思えない老成ぶりには改めて驚愕します。


(本作でのチャールズ・ロートン 58歳だなんて信じがたい老成振り)

19世紀最後の年に生まれていることを思うと、50代後半なのに70代後半くらいに見えるのですから、ああ、時代はそれだけ違っているのだと感慨深かったです。
ところが、一方のマレーネ・ディートリッヒもまた、本作出演時には、何と56歳。それが、30代に見えるのですから、もう何をかいわんや・・・・・


(これぞ、往年のマレーネ・ディートリッヒ)

タイトルが「情婦」とあるのは、そのマレーネ・ディートリッヒを迎えての映画ということで付けられたのでしょうが、今思うと、やはりクセのある邦題だと思います。原題の「Witness for the Prosecution」は、検察側の証人という裁判用語。そのまま日本語にしたタイトルの方がずっとスマートだったように思います。

さて、改めて考えるに、本作の主演は誰か。
弁護を推し進めるチャールズ・ロートンか。



あるいは被告を演じたタイロン・パワーか。



あるいはその妻役のマレーネ・ディートリッヒか。



もっとも、彼女は法律的に被告の妻ではないことが分かるので、愛人もしくは情婦という立場になるのでしょう。
だから、邦題が「妻」ではなく「情婦」であり、被告の無実を唯一証明できるその彼女が検索側の証人となることから、本作は息詰まる緊張感に包まれます。

余談ながら、ご覧のように本作でも黄金の脚線美は健在!


(これが、56歳のディートリッヒの脚線美です♪)

ディートリッヒ演じる妻クリスティーヌは、敗戦後のドイツから逃げ出したくてタイロン・パワーを色仕掛けで落とし、彼と共にイギリスにやってきたドイツ女性。


(この小悪魔的なたくらみの眼差しはどうでしょう・・・56歳!)

そこで二人は宣誓して結婚。けれど、いかに宣誓しての挙式でも郷里のドイツですでに結婚していたままの状態では二重結婚になるか、はたまたその結婚は無効になる。こんなことが裁判で明らかになっていくとき、弁護側は戦略の練り直しを迫られるのですが・・・

当時のハリウッドを代表する色男タイロン・パワーが赴任先の戦地で出会い見初めた女性であり、元女優で歌手というディートリッヒそのままの役柄ですから、この役はマレーネ・ディートリッヒ以外は考えられなかったことでしょう。当時の絶大な人気を考えると、キャスティングはこれ以上ないという布陣だったろうと思います。

富裕の未亡人殺害の容疑で窮地に立たされた被告ヴォール(タイロン・パワー)、この限りなく軽妙で楽天的、かつ純朴な青年を、さて、ロンドン法曹界の長老の敏腕弁護士ウィルフリッド卿(=チャールズ・ロートン)は、裁判でいかに弁護していくのか。
そして、弁護側の証人ではなく検察側の証人として出頭した妻クリスチーネ(=マレーネ・ディートリッ)は、いったいどんな証言をしようとしているのか・・・・

最終論告が迫った前日、裁判をひっくり返すような情報がもたらされるのですが、

ここで今回もすっかり騙されてしまいました。

法廷サスペンスなので、この映画をまだご覧になっていらっしゃらない方達のために結末に繋がる話は一切できないので、本作についてはこのくらいに留めます。ご覧になろうと思われた方は、ネットで映画の「情婦」を検索なさらずにご覧くださいね。本作でもラストでは「この結末は話さないでください」というメッセージが表示されますので、映画を愛する一人としてそのメッセージにはちゃんと応えたいと思いましたゆえ、ご紹介はここまで。m(__)m
 


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