月光院璋子の映画日記

気ままな映画備忘録日記です。

「シリアの花嫁」・・・(1)

2009年02月17日 | ◆サ行&ザ行

去年の国際ニュースにあったゴラン高原のシリアの花嫁、http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2524129/3374321

この高原の街に住み暮らしていたイスラム教ドルーズ派の女性Arin Safadiさん(24歳)は、去年の秋に親戚筋のRabia Safadiさん(35歳)と結婚するため、停戦ライン上の国連軍の監視ポイントからシリア側に入ったとのこと。けれど、彼女は二度とイスラエルが統治する故郷にいる家族とは会えない・・・・

  
(これらの画像は、去年実際にあったゴラン高原での結婚の写真です)

まさに、本作『シリアの花嫁』は、
こうした現実を写し取った映画です。

映画は、モナという娘の結婚式の一日。
けれど、祝いの席上には花婿はそこにおらず、家族は何やらさまざまな事情を抱えているらしく、宗教上、あるいは政治上緊迫したシーンがさりげなく日常の一場面として淡々と描かれているだけに、音楽が止まったときにはドキリとさせれました。

モナの姉のアマルは彼女の結婚を心から祝っていて、
本人以上に熱心です。


(アマルとモナ)

本作は、結婚式を迎えた妹の一日を淡々と追っていきますが、何と言っても大活躍なのは、花嫁よりも姉のアマル。彼女を軸に一家のかかえる複雑な事情、兄弟姉妹の複雑な事情、彼女の子供たちとの関係などが描かれていくのですが、この複雑な役柄を演じているのが、イスラエルの国際派女優のヒアム・アッバスという女優でrす。
そして、嫁ぐ花嫁モナを演じているのは、クララ・フーリ。姉のアマルの動きの合間合間に微妙に揺れ動く心理状態を台詞ではなく表情で見せきっているので目が離せませんでした。
彼女たちの父親を演じるのは、クララの実父でもあり、イスラエルを代表するマクラム・J・フーリという名優です。

ゴラン高原に住む人たちの置かれている政治的立場、その問題を登場人物たちそれぞれに背負わせて展開される本作は、登場人物達の政治的な背景を通してゴラン高原が抱える政治的な問題に目を向ければ、個々人の運命を狂わす政治というテーマに行くつくが、政治的な背景を抱えさせた家族の個々に焦点を合わせれば、本作は、自分の運命を決めるのはあくまでも個々の意志であるという命題に行き着くでしょうか。



この映画は、2004年のモントリオール世界映画祭でグランプリ・観客賞・国際批評家連盟賞・エキュメニカル賞という4つの栄誉ある賞を受賞し、同年のロカルノ国際映画祭でも観客賞を受賞した映画である。世界中の観客の圧倒的な支持を得て10以上もの賞を受賞した映画なのに、それでも、現実の政治課題を解決する力にはなりえないのだという感想を抱かされました。



では、つぎのブログで、
作品そのもののご紹介をさせていただきますね。

 


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