世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

クプダ⑦

2018-06-21 04:12:50 | 風紋


イタカの野とオロソ沼の境界あたりで、アシメックはずっと地面を睨んでいた。エルヅは、歩く足の幅を数えて、広さを測ると言っていた。それをやってみた。

太陽を見ながら方角を測り、自分の歩数をざっと数えてみた。水たまりをよけながら歩き、歩数はすぐに百を超えた。アシメックはエルヅにならい、百以上も数えた。オロソ沼の近くの、低い湿った地面の広さは、南北に向かってだけで六百歩あまりもあった。東西は数えられなかったが、同じくらいある。かなり広い。これだけの広さを沼にして、稲を植えるには、どれだけの人数がいるだろう。土木工事だけなら十人で十分だ。だが、稲を植える時にはそれだけでは足らない。

稲は、春の若い苗の内に、とって植えればいい。毎年沼から自然に生えてくる苗を、いくつか株分けすればいい。そうすれば、いくらでも増えるはずだ。だがそれをやる時期と人員は……

歌垣の前だ。狩人組には鹿狩りをやらせればいい。そのほかの人間には、稲を植えさせる。

アシメックの頭の中には、着々と計画が盛り上がって来ていた。夢で聴いた神の声をもう一度思い出した。

イタカの野に細い川を描き
稲を歩かせ
豊の実りを太らせよ

わかった。おれはそれをやるのだ。なんでもない。カシワナカの教えにもあった。とんでもない難を解決せねばならない時は、とんでもないことをやってみろと。

やってみるしかない。




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