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「大丈夫だ、できる。鍬は持てるんだろう? 土をかくくらいなら、簡単だ。どうだ?」
アシメックは言った。トカムはくちびるを噛みながら、アシメックの顔を見た。真剣な目が、自分を見ている。
こんなこと、断ったら、おれは、もっとだめになる。トカムはそう思った。そして、半分泣きそうな顔をしながら、「わかった」と返事をした。
「そうか!」とアシメックは喜んだ。そしてトカムの肩に手をおき、もう一度言った。
「夏になったら、一緒にやろう。約束だぞ」
トカムはうなずいた。
トカムの家を出ると、アシメックは空を見た。高いところをまた鷲が飛んでいた。
いける。と思いながら、アシメックは鷲を睨んだ。やってみねばわからない。神もやってみろと言った。
その年の鹿狩りには、アシメックは最初から最後まで付き合った。狩人組のやつらと、いい感じで話をしておきたかったのだ。
例の仕事の話をすると、サリクは意外に消極的だった。今まで聞いたこともないような仕事をするのには、あまり気のりがしないようだった。だがレンドとモカドは興味を持った。やってみてもいいと言った。
「おもしろそうだな。でもオロソが広がると、鹿がイタカに来なくなるんじゃないか?」
「そこは大丈夫だ。水をひいても、アマ草が生えるところまではいかない」
「ほんとか?」
「ああ、そこはちゃんと土地を見てるんだ。イタカはオロソ沼の岸から傾斜してだんだん高くなっている。地面が高くなって水気がなくなって乾いているところからアマ草が始まっている。おそらくそこから先に水は行かない」
アシメックはそうしていろいろな男と話をつけていった。セムドとも話をし、最終的に、夏の仕事に協力してくれる男が、十五人決まった。
よし、これだけいれば、できる。
歌垣が終わり、夏が始まる頃、アシメックは決行を、至聖所から、神と先祖に宣言した。