世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ネオの恋⑥

2018-01-18 04:12:40 | 風紋


「手首をきかせて一気にあげるんだ。大きいぞ」

言われたとおりにしてみた。するとほどなく、銀色の魚が水面に見えてきた。ネオは目を見開いた。

絶対、おれ、これやる! ネオは心の中で叫んだ。絶対絶対、うまくなって、すごい釣りができるようになる!!

銀色の魚を手にとりながら、ネオの心は明るい喜びに満ちていた。

その日、ネオは五匹の魚を釣った。サリクにお礼を言うと、ネオは魚を持って、走ってモラの家に向かった。自分の釣った魚を、一番にモラに見せたかったのだ。

モラはまだ十五だから、母親の家に一緒に住んでいる。ネオが一目散でその家を目指して走っていくと、モラは外で土器の壺の中を覗いていた。ネオはその姿を見るなり叫ぶように言った。

「モラ、おれ魚釣ったよ!」
その声を聞いて、モラは驚いて振り向いた。息を切らせて走ってきたネオが、飛び込むように近くに寄ってきた。手には銀色の魚を持っている。

「ああネオ、きれいな魚ね」
「うん、サリクに釣り教えてもらったんだ。五匹も釣れてさ、みんな食えないから、二匹君にやるよ」
「くれるの?」
「うん!!」

ネオは持っていた茅袋の中を覗き、その中から一番大きな魚を取り出して、モラに差し出した。
「ほら、これ食べると、腹の子がよく育つんだって!」
「うん、知ってるわ、ありがとネオ」
言いながら、モラは笑って魚を受け取った。子供を孕むと、その父親が何かをくれるということは、よくあることだったからだ。




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