日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

色づく秋の北国へ 七日目

2013-10-04 21:54:56 | 居酒屋
成り行き任せの結果とはいえ、道内最後の夜をここで飾れたのは幸いでした。月曜以来四日ぶりとなる「独酌三四郎」を訪ねます。
旭川が道内最後の泊地となるのは、中盤あたりからある程度予想できたことでした。そして、旭川が最後になるなら、もう一度宿泊するより市街の近くのキャンプ場に泊まりたいという考えがありました。というのも、今回旭川の呑み屋街を改めて歩いた中でも、「独酌三四郎」を超える店がなさそうだということは承知しており、旭川に泊まるならもう一度この店に入る以外の選択肢が考えられなかったからです。もちろん「北海道一」との評判は伊達でないと感じたのは事実で、今後も旭川で呑むなら一軒目には必ずここを選ぶでしょう。しかし、どんなによい店でも間を開けずに行けば感動が薄れるのではないかという懸念がありました。そして何より、酒場めぐりよりもソロキャンプを中心とした今回の活動の趣旨からして、最後の夜もスーパーかセイコーマートの食材でささやかな晩酌にとどめたいという考えがあったのです。それがこの寒さによりやむなく断念となったわけですが、少なくとも「感動が薄れる」という懸念に関しては杞憂に終わりました。

金曜だけに多少の混雑を覚悟したものの、閉店まで一時間少々という時間もあり首尾よく着席。今回通されたのは手前のカウンターの中央で、右にはねじり鉢巻き半纏前掛けの店主、左には丸眼鏡割烹着の女将が鎮座し、正面上には酒の経木に神棚という位置です。一見ならば竈の前が特等席とはいえ、趣向を変える向きにはこれも悪くはありません。
一方で前回と同様なのがお通しです。豆を出汁で煮た簡素に見える品ながら、これが酒の肴としては好適で、最初の一品までの繋ぎとしてよく考えられていることが分かります。その一品目には前回と同様の〆さんまを注文。二度目となれば、前回選ばなかったもので組み立てるのが順当というところ、そのとき食した〆さんまがとりわけ秀逸だったこともあり、あえてマンネリズムに走った次第です。しっとりした食感は濃厚な刺身の味わいとは全く異なり、完成された酒肴の域に達しています。
一方、二度目でなければ注文しづらいものをと考え選んだのは新子焼です。若鶏の一枚肉を竈の火で焼き上げ、開業以来の六十年ものというタレにくぐらせたもので、焼鳥といえば塩よりタレを宗とする自分にとっては心惹かれる一品でした。しかし、わざわざ北海道で焼鳥を食する必然性というものがなく、また一人客にはかなりの分量ということもあり、前回は見送っていたのです。しかし、中三日での再訪となれば話は別で、〆の一品には躊躇なくこの新子焼を選びました。

二度目とはいえ短い間隔での再訪ということもあるのか、女将は覚えていてくれました。そうなると、この無口で無愛想な中年男とて打ち解けてくるというものです。お客があらかた引けた店内で、両隣に残った常連の御仁を交えてひとしきり談笑してから席を立ちます。こんな時間も一見ではなかなかあり得なかったのでしょうから、再訪した甲斐はあったといってよいでしょう。道内最後の夜を飾るにふさわしいひとときでした。

独酌三四郎
旭川市2条通5丁目左7号
0166-22-6751
1700PM-2300PM(日祝日定休)

絹雪・麒麟山
お通し
〆さんま
いかの沖漬け
新子焼き
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色づく秋の北国へ 七日目

2013-10-04 21:34:06 | 北海道
丸瀬布まで延びた旭川紋別道の恩恵により、想定よりもかなり短い時間で旭川に着きました。気温は10.5度、しかし数字以上に寒いのは昨日と同じで、上着と帽子を身につけた耐寒装備でちょうどよく、花見の頃の道東を彷彿とさせます。一年中で最も暑い梅雨明け十日の頃から二月遡ったのが花見の頃、二月経ったのが今頃なのですから、この寒さもよくよく考えれば当然です。北海道はいよいよ晩秋の様相を呈してきました。
昨夜はあまりの寒さによく寝付けず、今朝は六時前から朝日を追って活動し、その後一気に移動してきたため、もはや倒れ込みそうなほど疲れています。下手に休むとそのまま眠り込んでしまいそうなので、前置きは抜きにして早々に酒場へ繰り出します。
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色づく秋の北国へ 七日目

2013-10-04 18:24:03 | 温泉
時間は押してきましたが、道の駅に温泉があるためこちらで一風呂浴びていきます。
以前からホームの一部と跨線橋、それにラッセル車と車掌車が残されていた中湧別駅の跡地に、後年建設されたのが温泉と食堂と畳の休憩室を備えたこの施設です。このような成り立ちからして見た目も中身も近代的で風情は皆無ながら、広々した浴槽に注がれる無色透明のなめらかな源泉は、やや塩素臭がすることを除けばそれなりのものです。時節柄チューリップこそないものの、露天風呂は花壇で彩られています。日が落ちて気温が下がり、少し温めのお湯が身体に染み入るようです。

かみゆうべつ温泉チューリップの湯
紋別郡湧別町中湧別中町3020番地1
01586-4-1126
1000AM-2130PM(最終受付)
入浴料500円
泉質 ナトリウム炭酸水素塩泉
泉温 33.2度
pH 7.8
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色づく秋の北国へ 七日目

2013-10-04 18:04:53 | 北海道
六時を過ぎて西の空の残照もほぼなくなりました。出発以来ほぼ1000kmを走破し、現在中湧別駅の跡地にある道の駅に滞在中です。日中最高16度まで上がった気温が日没を境にして大きく落ち、現在のところ10度となっています。今夜も昨晩と同等あるいはそれ以上に冷え込むでしょう。道内最後の夜だけに、キャンプで締めくくりたいのはやまやまながら、今夜は旭川にて宿泊ということになりそうです。
旭川までの距離はざっと150km, しかし道内ならば三時間もあればたどり着く距離です。脇目もふらず走れば、「独酌三四郎」に入れる程度の時間には着きます。間隔が短すぎて感動が薄れるのは致し方のないこととはいえ、北海道一の名酒場で道内最後の夜を飾れるのであれば、それだけで十分ではないでしょうか。
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色づく秋の北国へ 七日目

2013-10-04 16:37:14 | 北海道
夕日がいよいよ山の向こうへ落ちようとする中、沼ノ上の先に短い鉄橋が。時間的にもこれが本日最後の遺構となるでしょう。昨日までの展開からしてある程度予想できたこととはいえ、網走どころか中湧別にすらたどり着かずに終わりそうです。これ以上欲張っても仕方がないので、あとは夕日を眺めて昼の部を締めくくります。
久方ぶりに時間をかけて回った名寄本線とその支線でしたが、鉄橋や路盤などの遺構が時間とともに失われつつある一方で、駅の跡地が公園になったり、そこまで行かなくとも記念碑が建ったりするなど、風化する一方ではなかったのも事実です。何度も繰り返した台詞ではありますが、鉄道の存在が人々の記憶の中で生き続けているのを感じた二日間でした。
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色づく秋の北国へ 七日目

2013-10-04 16:25:34 | 北海道
秋の日は驚くほどの勢いで傾き、早くも日没まで秒読み段階に入ってきました。次に訪ねるのは沼ノ上駅です。以前訪ねたときには、駅の敷地を貫くように正面から裏へと抜ける道が造られ、無残に破壊されたホームの上で、駅名標が侘しげに佇んでいたのを記憶しています。そして今回再訪すると、駅名標はレプリカとおぼしきものに変わり、ホームも不自然にアスファルトで舗装されるなど、当時のものかどうかは判然としなくなりました。とはいえ、ホームの下から眺めると、駅名標が茜色の空に浮かぶ様子はそこそこ様になっています。
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色づく秋の北国へ 七日目

2013-10-04 16:05:09 | 北海道
細長い公園で駅の跡地と分かる元紋別を経て小向に着きました。初めてここを訪ねたとき、駅舎が残ると聞いていながら、何もかも取り壊されて更地になっており落胆したという経験があります。その一方で、渚滑のように間一髪で間に合ったこともあるわけです。自分が廃線めぐりに熱中していた十数年前は、道内各地に残っていた廃線の駅舎が、取り壊されるかどうかの瀬戸際だったのです。
その後、放置された駅はあらかた取り壊され、保存を目的とした駅はそのような前提で整備された結果、このように間に合った、間に合わなかったという悲喜こもごもが繰り返されることもなくなりました。その代わり、かつてはさほど珍しくもなかった鉄橋が跡形もなく姿を消したり、路盤が切り崩されるか草むすなどしてたどれなくなったりするなどの変化が、今回再訪して顕著に感じられます。これからは違った形で時間との闘いが続くのかもしれません。
かつて更地になっていた駅の跡地は芝生の公園となり、こんなに広々していただろうかと思うほど変貌しています。しかし、かつて線路があったであろう位置に遊歩道が造られ、その脇には転轍機とレプリカの駅名標が建ち、まっさらな路盤だけが続いていたかつての光景がどことなく偲ばれるようです。
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色づく秋の北国へ 七日目

2013-10-04 15:31:56 | 北海道
沿線最大の町、流氷で知られる紋別の市街に入りました。市内最大の見所だった、かつてのホームへ上がる階段だけがぽつんと残った潮見町の駅跡は、その後区画整理で飲み込まれたのか発見できず。駅の近くにあったキロポストが渚滑に移植されていたことからして、ある意味予想できたこととはいえ残念です。
紋別駅でも、駅前の一角が再開発で取り壊され更地になっており、駅前通の面影が若干損なわれてしまいました。しかし悪いことばかりではありません。駅の跡地にできたスーパーの店先に、レプリカとはいえ駅名標と動輪とレリーフが飾られています。渚滑の9600しかり、かつての駅の名残が異なる形ながらも残されたのはよいことです。
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色づく秋の北国へ 七日目

2013-10-04 14:42:04 | MOS
そろそろ日が傾き出す時分、行き足も急ぎがちになりそうなところ、三時のおやつをかねてMOSに寄ります。「オホーツク紋別店」です。
紋別にMOSが復活したのは四年前のことですから、五年ぶりに当地を訪ねた自分にとってはもちろん初見となります。郊外型店舗の集積地にある箱形店舗は、八王子楢原店を彷彿させるような見るからに安っぽい外観をしており、近年横行する低コスト店舗の嚆矢であることが一目瞭然です。これでは内装も推して知るべしというものでしょう。最近よくある白木調ではなく焦茶の化粧板が使われており、幾分異なる印象はあるものの、これは低コスト店舗が濫造され出す前の試行錯誤の段階だったためと推察され、全体を貫く低コスト化の思想はありありと感じられました。
小物や植木で飾り付けられているのがせめてもの救いではあり、おしぼりを添えて提供するところも気が利いています。しかし、味とサービスはともかく、店舗の質についてはMOSも落ちたものだというのが毎度ながらの実感です。

モスバーガーオホーツク紋別店
紋別市落石町2-29-1
0158-27-5555
900AM-2300PM
第4780号
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色づく秋の北国へ 七日目

2013-10-04 14:27:16 | 北海道
中名寄、滝ノ下と同じ形をした下渚滑の待合室が、移設されて倉庫になっています。二日にわたった渚滑線の遺構めぐりはこれにて打ち止めと相成りました。
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2013-10-04 14:18:49 | 北海道
仮乗降場の遺構が富丘に続いて本日二度目の登場です。元西仮乗降場の予告表示が、昨日訪ねた16号線と同様国道脇に移植されています。
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色づく秋の北国へ 七日目

2013-10-04 13:53:16 | 北海道
渚滑に着きました。初めて沿線を訪ねたとき、駅舎もホームもそのまま残るという噂に聞いて訪ねたところが、跨線橋と反対側のホームが取り壊されて、残っていたのは駅舎とそれに続くホーム一本だけでした。それも翌年には跡形もなく取り壊され、跡地には市の施設が建てられて、「渚滑駅前」の道路信号と、用をなさなくなった国道との立体交差だけが駅の名残を伝えているというのが、自分の知る渚滑駅の変遷です。
しかし今回久方ぶりに訪ねてみると、パークゴルフ場になった駅の敷地の片隅に9600型が鎮座していました。それもぴかぴかに磨かれた非常によい状態です。その脇には、この機関車の由来を記した看板が、かつてお隣の潮見町付近にあった92kmポストとともに建っています。しかもパークゴルフ場の休憩室は、かつての駅舎を模して造られたものです。あくまで模したものにすぎないとはいえ、当時の駅舎の特徴をよく捉えています。渚滑線の沿線と同様、ここでも鉄道の存在が人々の心に今なお生き続けているようです。
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色づく秋の北国へ 七日目

2013-10-04 13:39:37 | 北海道
富丘と渚滑の間の小さな沼地をまたぐ橋梁が、枕木もろとも残っており、前後の築堤も健在です。廃線めぐりにおいて駅舎と並ぶ見所といえるのが鉄橋ですが、かつては沿線の至る所に見られたこれらの遺構も、護岸工事によって少なからず姿を消してしまいました。この橋梁は果たしていつまで残るのでしょうか。
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色づく秋の北国へ 七日目

2013-10-04 12:34:15 | 北海道
お立ち台のすぐ近くにあるのが、昨日も触れた富丘仮乗降場の跡です。線路が走る海岸段丘を切り通しにして造られたコンクリートの立体交差は、比較的後年の区画整理によりできたもので、その立体交差の下からは、乗降場へ続いていた半透明のフード付の階段が残ります。国道沿いには現役当時に使われていたとおぼしき屋根付の自転車置き場が残り、その隣にはご丁寧にも区画整理事業の完成図を列車入りで描いた大きな看板が。文字通り簡素なものがほとんどだった仮乗降場にあって、コンクリートの立派な構築物で固められた富丘の遺構はひときわ異彩を放っており、下手な駅より後年まで残ることになりそうです。
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色づく秋の北国へ 七日目

2013-10-04 12:25:28 | 北海道
国道沿いのお立ち台からオホーツク海を望みます。左手にある沙留市街を起点にして、はるか彼方の紋別市街まで文字通りの水平線が延び、沖合には行き交う船の姿もありません。とかく単調になりがちなのが水平線とはいえ、これだけ長いとさすがに見応えがあります。しかも彼方の空を大きな雲が悠然と流れ、これがなおさら絵になるのです。
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