日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

色づく秋の北国へ 六日目

2013-10-03 22:46:03 | 北海道
本日の全行程終了です。気温は10度、しかし数字以上に冷たい風に吹かれ、さらには雨にも打たれて、秋の虫の声はすっかり途絶えてしまいました。涼やかな夜風が吹く空知から、時雨そぼ降る晩秋のオホーツクに至るまで、日ごとに深まる秋を目の当たりにしたようです。

実は、今日活動の傍ら大いに悩んだ問題があります。花見の時に繰り返した一時帰京という奥の手を使って、道内の滞在を延ばせないかということです。具体的には、道内に日曜いっぱい滞在して空路の最終便で一時帰京し、来週の金曜を休み中四日で北海道に舞い戻ると、体育の日の三連休と合わせて四日の日程が確保できます。連休最終日はフェリーでの移動に費やされるとしても、もともと移動日になるはずだった今週の日曜と、翌週の金曜から日曜までの三日間は道内に滞在できるため、道内の滞在時間が合わせて四日延びるという寸法です。日曜の便に乗るなら、Air Doの特定便割引がきく三日前、つまり今日までに事実上意思決定をする必要があります。しかし、結論としては延長しないで予定通り帰ることにしました。

もちろん、道内でやりたいことを全てやり尽くしたというわけではなく、むしろその正反対です。四日どころか、半月あろうと一月あろうと長すぎることはありません。しかし、それにもかかわらず予定通り切り上げることにしたのは、潮時も大切と感じたことによります。
途中二日ばかり雨に降られて難儀する場面もあったとはいえ、清々しい秋晴れから薄ら寒い時雨の夜まで、日ごとに深まる秋を体感できたという点で、この時期の北海道へ来た目的はおよそ達成できたというのが実感です。このまま切り上げても、物足りなさを感じる以前に充実感と満足感が先立つのではないでしょうか。空路での無粋な移動を挟んでまで滞在を延ばすよりも、むしろ旅の余韻をそのまま持ち帰り、積み残したことは来年への活力にして、年内は次なる旅へと気分を切り替えるのがよかろうと思い至った次第です。

この結果、道内の滞在時間は泣いても笑ってもあと二日ということになりました。どう動くかは多分に流動的ながら、土曜の日没まで活動しても、帰りのフェリーが出るのは深夜の一時半なので、根室や稚内などよほどの場所でない限り、苫小牧への移動はどうにかなるでしょう。残りわずかな時間ではありますが、詰め込めるだけ詰め込んで帰りたいと思っています。
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色づく秋の北国へ 六日目

2013-10-03 21:07:37 | 晩酌
本日も買い出しを済ませて晩酌の時間とします。献立はこちらです。

サッポロクラシック
ししゃも焼き
きゅうりの酢の物
味付ラムジンギスカン
もやし

他に選択肢がないという事情でセイコーマートに頼りはしたものの、刺身を除くあらゆる肴はここで揃うと改めて実感する結果となりました。特に、惣菜にしてもジンギスカンにしても、一人前を前提とした分量で売られているのが好都合なのです。
序盤に比べて品数が減ってきているのは、同じことを数日続けて分量の勘所が分かってきたからです。道の駅からコンビニまではそう遠くないため、どうしても足りなくなったら歩いて買いに行きます。

先ほどまで星が出ていたにもかかわらず、今し方にわか雨が落ちてきました。今夜キャンプをしていたら、寒さと風と雨とで散々だったでしょう。興部の宿は文字通り地獄に仏だったということになります。
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色づく秋の北国へ 六日目

2013-10-03 20:16:30 | 温泉
買い出しの前に一風呂浴びます。かつての駅が道の駅になり、そこに列車を使った無料の宿が置かれて、すぐそばに銭湯もあると事前に聞いてはいたものの、いざ訪ねてみると本当に近くです。駐車場を起点にすれば、列車も銭湯も100m前後といったところでしょう。買い出しの選択肢が限られることを除けば、道内で安く手軽に夜を明かすのにこれほど便利な施設はないかもしれません。

★興部町公衆浴場
紋別郡興部町興部泉町
0158-82-4126
1700PM-2100PM(4-10月 日曜定休・11-3月 火曜木曜日曜定休)
入浴料420円
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色づく秋の北国へ 六日目

2013-10-03 19:38:34 | 北海道
結局渚滑から左へ曲がって興部にやってきました。気温は日没から二時間ほどで早くも4度下がって11度、この調子なら明け方にはおそらく一桁になるでしょう。これまで10月の北海道といってもこんなものかと拍子抜けしていたところが、明け方のにわか雨で空気が変わったようです。屋内で休める場所が近くにあって助かりました。
興浜南線を分ける要衝であり、沿線では紋別に次ぐ大きな町と記憶していた興部ですが、七時になるかどうかの時分というのに駅前には店の明かりもほとんどなく、どうやら国道沿いのセイコーマート以外に補給手段はなさそうです。行き交う車もまばらな市街を歩くと、士別と名寄が都会のように思えてきます。天候といい、沿線の淋しげな雰囲気といい、名寄を過ぎてからの変化は実に劇的です。

星空を眺めつつ晩酌したいのはやまやまながら、少なくとも風が止まない限りは屋外で飲み食いする気分にもなりません。先客が寝静まる前に、車内のテーブルで済ませてしまった方がよさそうです。
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色づく秋の北国へ 六日目

2013-10-03 17:00:09 | 北海道
今日も五時にかなり先んじて夕日が山影に落ち、昼の部はこれにて打ち止めと相成りました。予想通りというか何というか、網走どころか紋別にすらたどり着かないまま終わったことになります。とはいえ、走行距離に関する限りは既に過去二日を合わせたよりも長く、それなりに慌ただしい一日ではありました。
透明な秋晴れは、昨日をも上回る道中一番の好天だったといってよいでしょう。しかし大きく違ったことが三つほどあります。強い風が終日吹き続けたこと、雲が綿のようだったこと、それに気温が朝からほとんど上がらなかったことです。昨日は23度前後まで気温が上がり、汗ばむ場面も多かったのに対し、今日の気温は終始15度前後にとどまり、なおかつ風も吹いていたため、そのような場面が一切ありませんでした。現在の気温は14度と、一昨日の夕暮れ時と比べてもさほどの違いがないにもかかわらず、体感温度は全く違い、今日は長袖シャツの下にもう一枚着込んでちょうどよく感じます。絹や鱗のような秋らしい雲が影を潜めたのも、気候が変わった証拠でしょう。絶好のキャンプ日和だった過去二日に対し、今夜は少々勝手が異なるようです。
幸いにして興部にかつての列車を使った無料の宿泊施設があるため、今夜はこちらを利用するのが最も賢明でしょう。しかし、紋別なら土地柄からして気の利いた酒場の一つもありそうだという期待はあり、市内に投宿して呑むのも悪くはなかろうと考えています。渚滑から左へ走れば興部、右へ走れば紋別です。どちらへ行くかはもうしばらく夕空を眺めてから考えます。
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色づく秋の北国へ 六日目

2013-10-03 16:49:11 | 北海道
かつて北海道には「仮乗降場」というものが点在していました。その名の通り、駅に満たない簡易な乗降場で、大半が板きれで造った一、二両分のホームに簡素な待合室というささやかなものでした。そのため、仮乗降場は路線もろとも跡形もなく姿を消すのが通常であり、現役当時の名残をとどめているのは名寄本線の富丘、天北線の飛行場前などごく一部に限られます。渚滑線にはそんな貴重な仮乗降場の痕跡が残っています。
それがこの16号線で、かつての乗降場そのものではないながらも、かつて線路際に建てられていた停留場の予告表示が、国道沿いに移植されているのです。短い路線ながらも、列車が走った頃の名残が随所に見られ、鉄道に対する人々の愛着が感じられるという点では、この渚滑線が道央の幌内線と並ぶ双璧といってよいかもしれません。
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色づく秋の北国へ 六日目

2013-10-03 16:23:58 | 北海道
上渚滑駅の跡地は公民館となり、その一角が「交通公園」と名付けられて、レプリカとはいえホームが造られ、レールの上には軌道自転車、ホームの上には駅名標が置かれて、その脇には踏切の警報器と転轍機が並んでいます。しかも、北国の風雪に長年さらされたにもかかわらず、そのどれもが小ぎれいに保たれているのは、適宜手を入れているからなのでしょう。廃止から三十年近くが経った今もなお、人々の鉄道への愛着が感じられる光景です。
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色づく秋の北国へ 六日目

2013-10-03 16:08:10 | 北海道
路線の長さの割に駅の跡が多く残っているのが渚滑線の特徴です。滝ノ下では、中名寄と同じ道北特有の小さな待合室が、国道のすぐそばにぽつんと佇んでいます。
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色づく秋の北国へ 六日目

2013-10-03 15:54:05 | 北海道
一つ隣の濁川駅を訪ねます。町というより集落然とした雰囲気は、本日訪ねた駅の多くに共通する特徴ながら、今なお盛業中の駅前旅館が、林業で栄えた古きよき時代を偲ばせます。
背が高く立派な北見滝ノ上の駅舎に対し、こちらは切妻の屋根とファサードをもち、壁面からストーブの煙突を張り出させた北海道の正統派です。その駅舎が夕日を浴び、背後の青い空に綿のような雲がいくつも浮かんで流れる様子は見事です。
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2013-10-03 15:12:29 | 旅日記
西興部から峠を越えて滝上に着きました。北国の短い日が早くも傾き、日没までの残り時間が気になりだしたところではありますが、この後は渚滑線に沿って紋別方面へ向かいます。五年前に同じ経路を走ってはいるものの、雨上がりの悪条件だったため、再訪の機会をうかがっていた次第なのです。そのとき開館前だった駅舎内の資料館も見られるため、残り時間を注ぎ込む価値はあると判断しました。
昨日の日没時刻からして、実質的な持ち時間は一時間少々といったところでしょうか。30kmほどの短い路線だけに、何となれば積み残しは明日取り返してもよいため、ともかく時間の許す限り訪ね歩くことにします。
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色づく秋の北国へ 六日目

2013-10-03 14:12:50 | 北海道
続いて訪ねるのは中興部駅です。見渡す限り民家一軒以外は生活の気配もない、これまで以上に淋しい場所ながら、木造駅舎の健在ぶりを再確認できたのは喜ばしいものがあります。しかし、何より驚いたのは駅前に紫陽花が咲いていることです。お盆に信州で紫陽花を見たときにも相当奇異に思えただけに、一瞬目を疑いました。果たしていつ頃から咲いているのでしょうか。11月に沖縄で蛍を見たとき以来の驚きです。
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色づく秋の北国へ 六日目

2013-10-03 13:43:33 | 北海道
西興部駅の手前に鉄橋が残っています。跨線橋と駅舎はともかく、線路の遺構を目にするのはよくよく考えるとこれが初めてです。かつての鉄路がそれだけ風化しつつあるということでしょう。
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2013-10-03 13:08:05 | 北海道
峠を越えて上興部に着きました。こちらも町というより集落然とした場所ながら、道の駅があったり芝生が広がったりするところは、一の橋の侘しい雰囲気とは対照的な明るさがが感じられます。かつての駅舎も鉄道資料館として残り、ホームにはキハ27にラッセルヘッドという変わった組み合わせの車両が並んで、じっくり見物すると小一時間は消費しそうです。
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色づく秋の北国へ 六日目

2013-10-03 12:07:15 | 北海道
一の橋に着きました。郵便局があるだけの小さな集落なのは上名寄と同じながら、かつては峠越えの前進基地として知られた場所です。
この駅には思い出があります。自身二度目の北海道で、初めて本格的に廃線めぐりをしたとき、名寄本線の最後に立ち寄ったのがこの駅だったのです。峠越えの遺構が何か残っていればと思いバスを降りたところが、残念ながら跡地にはバスの待合所と公民館があるだけでした。しかしその公民館の裏手を東へ向かって歩くと、明らかに急勾配と分かる路盤が一直線に伸びており、そこを埋めるようにルピナスの花が咲いていました。こうして、兵どもが夢の跡というべき光景をしばし眺めてから、夕暮れ間近のバス停で名寄行のバスを待ったというのがそのときの顛末です。自分にとって、十数年経った今でも昨日のことのように思い出す、非常に印象的な光景でもあります。
しかし今回、当時と同じように公民館の裏手を東へ進んでも、そこには草木が雑然と茂っているだけで、どこに線路があったのかは判然としなくなってしまいました。これまでの流れからおおよそ予想できた展開とはいえ、あのとき眺めたルピナスの咲く線路跡も過去のものになってしまったかと思うと、やはり一抹の淋しさを禁じ得ないものがあります。
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色づく秋の北国へ 六日目

2013-10-03 11:40:55 | 北海道
二の橋跨線橋で三たび線路跡を越えます。欄干にある「名寄本線」の銘板は、架けられてから40年経ったとは思えないほど艶やかに光っているのに対し、前後の線路跡は嘘のように消え失せています。
それにしても、下川を出てから沿道が一段と淋しくなってきました。人家も交通量もまばらになり、耕作されずに荒れたままの土地も目立ちます。少なくとも一の橋の先にある峠を越えるまでは、こんな車窓が続くことになりそうです。
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