腹がこなれてきたところで酒場の暖簾をくぐりました。本日訪ねるのは教祖おすすめの「どんど」です。おすすめといっても、「居酒屋味酒覧」に掲載された二軒の店ではありません。西日本の名酒場を訪ね歩いた「ひとり旅 ひとり酒」で、これらとともに紹介されたもう一軒の店がここなのです。
小浜の駅から商店街をまっすぐ進み、やがてアーケードが途切れて海へと突き当たる手前に店はあります。雑居ビルの1階にある店構えと、暖簾からのぞき込んだ店内は現代的に見え、どうやら若い店主が造った店のようです。果たせるかな、左手にカウンター一本、右手に一枚板のテーブルが三つ、その奥に半個室の掘りごたつという造りは、見立て通りに現代的でした。
このような店だけに、昨日訪ねた「紋や」のような上等な居酒屋というわけでもなければ、もともと行こうとしていた「富田屋」のような正統派の大衆酒場というわけでもなく、少なくとも店内や品書きを眺めるだけで酒が呑めるほどの店ではありません。しかし、ショーケースか何かのようにガラス板をはめ込み、内側に砂利を散らしてルアーを並べたカウンターが独特で、厨房がきれいに磨かれ、調理器具が整然と下がったところなどは気持ちのよいものがあり、少なくとも悪い店ではないということだけは分かります。
生ビールはヱビスを筆頭に黒ラベルとクリーミートップが選べ、酒は地元の「わかさ」と美浜の早瀬浦、それに黒龍が何品か揃って申し分ありません。A4一枚にまとめられた日替わりの品書きも、地物の魚がいくつか並んでやはり過不足なし。酒はもっきりから升にこぼしてなみなみ一合、お造りは気前よく盛られてきました。心底感服するほどではないにしても、全てにおいて平均以上のよい店という点では、花見の時に訪ねた盛岡の「ハタゴ家」などが思い出されます。
三組の先客は皆若く、奥からは時折歓声が聞こえてきます。ミュージックビデオが流れる店内の雰囲気からしても、中年男が一人で呑むというより、気心知れた者同士で来るのが正しい使い方なのでしょう。やはり、一人酒には演歌の流れる「きらく亭」が合っているのかもしれません。
ところが、軽めで切り上げようかと考え出したところで、店主から山椒の葉を炊いた小皿が差し出されました。こうなると、もう一杯という流れになるのは必然というものでしょう。さりげない客あしらいが心地よく、このあたりはさすが教祖の薦める店といった感があります。次いで選んだ若狭ぐじは、それなりに値は張るものの、この魚の持ち味である鱗の食感を含めて食べ応えがあり、酒の肴としてはまことに上々です。
時間が経つにつれて先客は去り、残ったのは自分一人になりました。冬場に出回る「なれ鯖」が酒に合うとは店主の弁です。食材の充実ぶりに関していうなら、日本海側の旬はなんといっても冬であり、それは若狭においても例外ではないようです。そんな話にひとしきり花を咲かせて席を立ちます。
★酒菜屋どんど
0770-53-0140
小浜市白髭37 D-1ビル1F
1700PM-2400PM(日曜定休)
ヱビス・わかさ・早瀬浦・黒龍
突き出し(切り干し)
なめらお造り
若狭ぐじ
葉山椒(おごり)
小浜の駅から商店街をまっすぐ進み、やがてアーケードが途切れて海へと突き当たる手前に店はあります。雑居ビルの1階にある店構えと、暖簾からのぞき込んだ店内は現代的に見え、どうやら若い店主が造った店のようです。果たせるかな、左手にカウンター一本、右手に一枚板のテーブルが三つ、その奥に半個室の掘りごたつという造りは、見立て通りに現代的でした。
このような店だけに、昨日訪ねた「紋や」のような上等な居酒屋というわけでもなければ、もともと行こうとしていた「富田屋」のような正統派の大衆酒場というわけでもなく、少なくとも店内や品書きを眺めるだけで酒が呑めるほどの店ではありません。しかし、ショーケースか何かのようにガラス板をはめ込み、内側に砂利を散らしてルアーを並べたカウンターが独特で、厨房がきれいに磨かれ、調理器具が整然と下がったところなどは気持ちのよいものがあり、少なくとも悪い店ではないということだけは分かります。
生ビールはヱビスを筆頭に黒ラベルとクリーミートップが選べ、酒は地元の「わかさ」と美浜の早瀬浦、それに黒龍が何品か揃って申し分ありません。A4一枚にまとめられた日替わりの品書きも、地物の魚がいくつか並んでやはり過不足なし。酒はもっきりから升にこぼしてなみなみ一合、お造りは気前よく盛られてきました。心底感服するほどではないにしても、全てにおいて平均以上のよい店という点では、花見の時に訪ねた盛岡の「ハタゴ家」などが思い出されます。
三組の先客は皆若く、奥からは時折歓声が聞こえてきます。ミュージックビデオが流れる店内の雰囲気からしても、中年男が一人で呑むというより、気心知れた者同士で来るのが正しい使い方なのでしょう。やはり、一人酒には演歌の流れる「きらく亭」が合っているのかもしれません。
ところが、軽めで切り上げようかと考え出したところで、店主から山椒の葉を炊いた小皿が差し出されました。こうなると、もう一杯という流れになるのは必然というものでしょう。さりげない客あしらいが心地よく、このあたりはさすが教祖の薦める店といった感があります。次いで選んだ若狭ぐじは、それなりに値は張るものの、この魚の持ち味である鱗の食感を含めて食べ応えがあり、酒の肴としてはまことに上々です。
時間が経つにつれて先客は去り、残ったのは自分一人になりました。冬場に出回る「なれ鯖」が酒に合うとは店主の弁です。食材の充実ぶりに関していうなら、日本海側の旬はなんといっても冬であり、それは若狭においても例外ではないようです。そんな話にひとしきり花を咲かせて席を立ちます。
★酒菜屋どんど
0770-53-0140
小浜市白髭37 D-1ビル1F
1700PM-2400PM(日曜定休)
ヱビス・わかさ・早瀬浦・黒龍
突き出し(切り干し)
なめらお造り
若狭ぐじ
葉山椒(おごり)