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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 二月上午日 初午

2013年02月13日 | 日本古典文学-春

いなり山そのきさらきの初むまに乗てそ神は人をみちひく
(纂題和歌集~明治書院)

 二月はつむまいなりのやしろにまうつる人に
稲荷山尾上にたてるすきすきにゆきかふ人のたえぬけふ哉
(源順集~群書類従14)

いなり山しるしの杉をたつねきてあまねく人のかさすけふ哉
(永久百首~群書類従11)

おそく疾く宿を出でつゝ稲荷坂のぼれば下る都人かな 源兼昌
いなり山杉の青葉をかざしつゝ帰るはしるき今日の緒人 正三位知家卿
(夫木和歌抄~校註国歌大系21)

越えぬよりまづさき立ちぬ稲荷山しるしの杉に懸(か)くる心は
稲荷山のぼるのぼるも祈るかなしるしの杉のもとを頼みて
(六条斎院禖子内親王歌合~平安朝歌合大成2)

いなり山けふとて越る春の空花もこころにおもひそめてき
いなり山の花は。かの青かりしより思ひそめけん。紅葉を花に折たかへたるにや。二月の初午には。おしなへて杉をこそかさすなるに。花に思ひそめけむ心の色。わりなくおほえ侍る(略)
(嘉吉三年二月十日前摂政家歌合~続群書類従)

 さて、この女、願ありて、如月の初午(はつむま)に稲荷に詣りけり。供に、人多くもあらで、おとな二人・童二人ぞ、ありける。おとなはいろいろの袿(うちぎ)、二人は同じ色をなん、着たりける。君は綾のかい練りの単がさね、唐のうすものの桜色の細長着て、花染めの綾の細長をりてぞ、着たりける。髪はうるはしくて、たけに一尺ばかりあまりて、頭(かしら)つきいと清げにて、顔もあやしく世人には似ず、めでたくなんありける。男(を)の童三四人、さてはこの兄(せうと)とぞありける。ませにはあらねど、先立ちをくれて来ける。(略)
(篁物語~岩波「日本古典文学大系77」)

きさらぎの三日はつむまといへど甲午最申日つねよりも世こぞりて。いなりまうでにのゝしりしかば。 (略)
(大鏡~国文学研究資料館HPより)

羨ましげなるもの。(略)
 稲荷に、念ひ起こして詣でたるに、中の御社のほどの、わりなう苦しきを念じ登るに、いささか苦しげもなく、後れて来と見る者どもの、ただいきに先に立ちて詣づる、いとめでたし。
 二月午の日の、暁に急ぎしかど、坂の半らばかりあゆみしかば、巳の時ばかりになりにけり。やうやう暑くさへなりて、まことにわびしくて、「など、かからでよき日もあらむものを、何しに詣でつらむ」とまで、涙も落ちて、休み困ずるに、四十余ばかりなる女の、壼装束などにはあらで、ただひきはこへたるが、
 「まろは、七度詣でしはべるぞ。三度は詣でぬ。いま四度は、事にもあらず。まだ未に、下向しぬべし」
と、みちに会ひたる人にうちいひて、下りいきしこそ、ただなるところには目にもとまるまじきに、「これが身に、ただ今ならばや」と、おぼえしか。
(枕草子~新潮日本古典集成)

コメント (1)
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